じじいと異世界人
ジュウゾウ
何とも聞き慣れた名前じゃな
日本人じゃろうか?
ワシは教えられた場所へ行く
そこには革工房ジュウゾウという看板が掲げられていた
「すみません」
ワシは行き慣れぬ店に入り声を掛ける
革工房の看板を掲げるだけあって革製の鎧から鞄から小物まで様々のアイテムが置いてある
そう言えばあまり防具というのは考えた事が無かったのぅ
「いらっしゃい」
店の商品を眺めていると店主だろうか、体格の良男子が声を掛けてくる
黒髪に深い茶色い瞳
間違いなく日本人じやな
転移者という事じゃろうか?
「はい、こちらで獣の革を買い取ってくださると敷きまして、これなんですが…」
ワシはそう言うとカバンの中からサンプルを取り出す
イノシシとシカの毛皮じゃ
「これは獣しゃなく魔獣の毛皮か、どこで手に入れた?」
明らかに冒険者の類いとは異なる子供が魔獣の毛皮を持ち込んだ事で男が露骨にあやしそうにこちらを見てくる
まあ、普通はそうするしゃろうな
「私の村で狩った物です」
よく解らん転移者に不必要な定法を与えても益は少なかろう、ワシは事実だけを伝える
「狩ると言ってもそんなに弱いモンスターじゃないだろ…まあいい、幾ら欲しいんだ?」
男が毛皮を見ながら言う
一つこの男は勘違いをしておる
「相場が分かりません、お任せします」
そう、値踏みしているのはワシの方じゃ
こんなもん相場なんぞ当に確認済みじゃ
「結構あるのか?」
男がぶっきらぼうに質問する
値段より先にそれを聞くのはいい
じじいポイント5点じゃ
「村の周囲に沢山居ますので食料として捕る分だけでも相当余ります、今は月に五頭から十頭程度でしょうか」
今後もっと増えるのじゃがのぅ
「見ての通りの小さな店だ、これだけの物だから高く買い取ってやりたいが金がない、悪いが紹介してやるから他を当たってくれ」
男は申し訳無さそうに言う
こういう誠実な奴は嫌いじゃない、合格じゃな
「ではこうしましょう、お代はお金が貯まるまではそちらで加工した皮製品と物々交換という事でどうでしょうか?」
店内の商品はどれも一級品、生産能力が無い村にとってもメリットが大きい話ではある
「そんなんで良いのか、こんな上等なモンをそれで扱わせてくれるのか?」
男は毛皮のサンプルを見つめながら言う
「2メートルで銀貨50枚相当でどうでしょうか」
おそらくは世に出せばメーターに付き金貨一枚が相場じゃろうか?
「まて、これが市場に出たら金貨四…いや、五枚でも飛ぶ様に売れる代物だぞ、ちゃんと対価は払わせて欲しい」
他所から流れてきた商人は嘘つきが多いが土地付き商人は誠実
これはソーディアスの商人達に対する有名な評価らしいが、どうやらかなりの当たりを引いたらしいのぅ
「店主さんの人柄が気に入りましたのでその価格でお願いします、ただ少しだけ条件があります」
ワシが示した条件
馬具と防具はワシの紹介の無い者には売らない
基本は食肉用なので必要な物がそろえられるとは限らない
他の商人に横流ししない
という事と、その代わり革や毛皮は独占的に卸すという物じゃ
「そんなんで良ければ…」
男にとってもそれ程デメリットのある縛りでは無かろうからのぅ
了承へ獲られるじゃろうとは思った
ブランドを落とさぬ為にはある程度の縛りが有った法がいいからのぅ
仕方無いのぅ
「名乗るのが遅れた、俺の名はジュウゾウ、イシカワ・ジュウゾウ、あんたの名は?」
男はそう言うとワシに手を差し出す
ワシはその手を握り帰して言う
「ソーディアス王位継承順位三位、ランス領領主パーパス・ランスの長男、カタナ・ソードと言います、以後お見知りおきを」
ワシはそう言うと意地の悪い笑みを浮かべた




