じじいと叔父さん~その2~
「マリアと結婚が出来ないのであれば、或いは昔から言っていたが君やシスに王位を譲ろうと思っていたんだよ」
ジョンは言う
まあ嘘ではあるまい
「現金な物でね、こうして愛する人と一緒になれると、何れ生まれてくる我が子を思うと、どうしても…」
ジョンはそう言うと顔を大きく反らして後ろを向く
これ、絶対に生まれてくる我が子可愛さに悶絶しとるのぅ
こいつはそういう奴じゃ
「叔父上がそれで宜しいのでしたら私は喜んで王位継承権を返上させて頂きます」
悶えているジョンを無視してワシは言う
正直ワシには興味の無い話じゃからのぅ
「何か含みのある言い方をするね?」
ワシの答えにジョンは悶えるのをやめて切り替えて質問をしてくる
頭の回る男じゃのう
「王宮派の中にも継承権を持つ者が居た方が王太子が危険に晒される可能性が僅かでも減りますので」
六歳児設定にしては攻め過ぎた気もするがまあええじゃろう
ジョンは暫く黙って考え事をしていた様じゃが重い口をようやっと開いた
「まだまだ子供なのに本当にカタナはしっかりしていて、叔父さん驚いちゃったよ」
そう言ってジョンは少し疲れた感のある笑顔を見せる
「勿論私は王位に付く気は有りませんので甥か姪が出来て大きくなったら喜んで王位を返上させて頂きます」
二つ心の無い本心じゃ
王になんぞになったらドラゴンが斬れなくなるからのぅ
「僕はその言葉をどうやって信じたらいい?」
そう言うジョンの顔から笑顔が消える
相当悩んでおるのじゃろうなぁ
ワシはそんなジョンの両手に手をやり小さな手で優しく包み込んで言う
「私を信じる必要はありません、母神様を信じたら宜しいかと思います」
これでは悪い宗教の勧誘の様じゃ
「母神様を?」
ワシの口から出てきた意外な名前にジョンは考え無しにワシに聞き返す
「二年前、四歳の義の時に母神様から神託を受けました」
黙っておれとはワルドには言われとらんから正直に話す事にした
加護奪われとるしアレに配慮は要らんじゃろう
「十年後…つまり八年後ですね、新たな魔王が出現し、それと同時に異世界から勇者が来るから共に戦えと」
それを聞いたジョンはそれまでの疲れた顔から目を見開き驚愕の顔になる
「なので私は王になる為の学問を学んでいる時間が無いのです」
そこまで言い終えるとジョンは再び、そして先程までより長い沈黙の果てに口を開く
「その事は僕以外誰かに?」
魔王の出現ともなると国家機密レベルなのかのぅ
「いえ、父上にも母上にも言ってはおりません」
あまり大っぴらにはしない方が良さそうじゃな
「勇者がどこに降臨するか解るかい?」
おや、魔王ではなく勇者の方が気掛かりなのかのぅ
「いえ、勇者も魔王も詳細は特には…申し訳ありません」
ワシはジョンに頭を下げる
「カタナが謝る必要はない、この件は他言無用で頼むよ」
そう言うと何時もの優しい顔に戻りワシの頭を撫でる
こういうのは嫌いじゃ無い
「新しい神託を受けたら何よりも優先して伝えて欲しい、特に勇者に関しては僕も最優先で話を聴きたいからね」
魔王よりも勇者というのは気になるが六歳児設定ではあまり無用な詮索をしても無駄じゃろうから様子を見るしか無さそうじゃな
「解りました」
ワシがそう言うとこの話は終わった
そしてワシはその日、王位継承順位が三位になり名前もカタナ・ソードとなった




