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じじいの父出世する

シスの入学祝いから二年が経った

基本的に一度学園に入ると最低四年は家に帰る事は難しいのじゃが、今日は久し振りに家族がそろうた

と言うのも王宮での各種手続きが終わり、今日はパーパスが辺境伯となる式典を行うからじゃ

どうにも子供のワシの耳にも入ってくるくらい王宮内で紛糾したそうじゃ

まあ、幾ら英雄じゃ言うても平民の剣士が辺境伯では追い越される連中も腹が立つのじゃろう

幸いににしてこの国が武を重んじる騎士の国であり領地が嘆きの森の目の前という立地じゃった事もあり騒動は大きくはならんかった様じゃが

で、こう言う式典の類いが大の苦手なパーパスはと言うと、着なれぬが衣装には決して負けていない礼服のビシッと決まった姿で

「今魔王が復活したら全部有耶無耶に出来るのでは無いだろうか…」

ブツブツと現実逃避をしておる

残念じゃが魔王はあと八年は出て来ぬぞい

気持ちは解らんでもないが諦めも肝心じゃぞ、父パーパスよ

「かーたーなーっ」

遠方からシスの声が聞こえたかと思った瞬間シスに物凄い速さで抱きつかれた

(このワシが反応出来んじゃと…)

シス相手に油断したのはまああるのじゃが、その動きたるや疾風の如しじゃ

何かの加護か魔法の類いなのじゃろうか?

「姉さま、苦しいです…」

手加減無く抱き締めて頭を撫で回すシスにワシは抗議の声をあげる

二年ぶりの再会とはいえ相変わらず弟を溺愛しておるのぅ

で、ママンサはというと大勢の男達に囲まれておる

まだまだ若くて美しいからのぅ

パーパスから万が一にも奪えたら王弟とかいう逆玉じゃからのぅ

「お嬢さん、あちらで一緒にお茶でも如何ですか?」

ママンサに声を掛ける男が居る

パーパスじゃ

見かねて助けにでも来たか嫉妬でもしたか

どうにも政略結婚なのじゃが二人の夫婦仲は良好じゃからのぅ

ママンサはパーパスの手を取ると機嫌良さそうに主賓席の方へと向かう

「ねぇ、今からでも式典やめない?出世するのは我慢するから…諦めるから…」

先程の優男ぶりは何処へやら泣きながら情けない声で懇願するパーパスをママンサは頭を撫でて慰めておる

決して低くない継承権のママンサを政争に巻き込まぬ為に王宮から遠ざけるのと勇者パーティの中でも王宮とは縁の無い平民のパーパスを自国につなぎ止めて置く為の打算による政略結婚じゃとジョンは身も蓋もない事を言うておったが、ママンサによると兄と共に時々城に戻ってくるパーパスに一目惚れしておったらしい

パーパス、あれで高身長で顔も整っておるからのぅ

じゃが兄妹ともに子供に聞かせる話じゃ無いぞい

そうこうしている内にパーパスの出世の式典が始まった

と言うてもワシは貴賓席で座っとるだけじゃがのぅ

緊張してガチガチかと思うとったがパーパスのヤツ中々に絵になっておる

若い娘達からも相当な矢印が飛んどるのがじじいのワシからでも見て取れる

パーパス狙いもママンサ狙いも勝ち目無さそうじゃがのぅ

「子爵パーパスを本日只今を以てパーパス辺境伯とする、受け取ってくれるかい?」

ジョンは厳格な式典とは思えない穏やかな笑顔を浮かべて跪く友に向かって声を掛ける

流石のワシもいい加減気付いた

あの顔の時のジョンは確実にロクでもない時じゃ

おそらくは状況を誰よりも楽しんでおる

「出来ればお返ししたいんだがねぇ」

パーパスはひきつった笑顔でジョンに返す

こういう場で減らず口が叩ける胆力は流石じゃのぅ

「ダメ」

ジョンが今日一番の笑顔を見せて即答する

その笑顔を観た若い娘の何人かが倒れた

ジョンはパーパスに輪を掛けた美男子で独身じゃからのぅ

狙っとるもんも少なくは無かろうて

「英雄パーパスには私が継ぐ筈であった我が父の領地を与え、ランスの姓を授ける!」

ジョンは高らかに宣言をすると王宮の広間は喚声とどよめきで大騒ぎになった

ランスは王位継承権を持たない貴族の中でも最高位の姓じゃ

下手なダガーよりも格は上になる

「異論は無いな?」

ジヨンが先程までとは違う鋭い眼光で周囲を見渡す

するとまた何人かの娘達が倒れた

「意義あり、聞いてないんだけど…」

パーパスが恐る恐る手を上げて無駄な抵抗を試みる

「パーパス、いつまでも姓を持たない平民という訳にも行かないんだから諦めてよ」

ジヨンが呆れた、それでいて楽しそうな顔で言う

それを聞いて観念したのかパーパスはその場にうなだれるのじゃった

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