じじいわがままを言う
スミスから剣を貰った晩、王宮で借りている一室に戻るとそこには頭を抱えている父パーパスの姿があった
ワシらが倒したゴブリンの群れ
特にパーパスが一人で蹴散らしたゴブリン共はどうやら近隣のゴブリンの集落の主力だった様じゃ
これからゴブリンの集落と一戦を交えようとしていたところにワシらが出くわして主力を全滅させ、情報を何か知っていそうな人間を捕まえてきた
ちょっとした戦争をするつもりがただの残党狩りになったのは国の負担の軽減としては如何ばかりかの物なのかは計り知れんのぅ
で、頭を抱えとる訳じゃ
「不味い、これ以上の出世とか本当に不味い…」
パーパスがぶつぶつと言っておる以前から示唆されていた
伯爵への格上げは確定として、王の友人で王位継承者で現国王の妹の旦那
まあ、面倒事は増えそうじゃのぅ
それにしても国を挙げての討伐の対象を一人で蹴散らすとは、この男どれだけ強いのやら
ずっとパーパスを眺めていたらパーパスもようやっとワシの事に気付いたらしく力無い反応を示す
そんなに出世が嫌なのかのぅ
パーパスについては調べるまでもなくその話はどこからでも入ってきた
国の英雄じゃからのぅ
辺境の片田舎に生まれた彼は幼なじみで村の護衛の騎士団長の息子のジョン・ダガーと共に村を旅立ち、後に辺境の魔王を討伐した所謂勇者パーティの主力アタッカーじゃったそうな
魔王討伐の功績で叔父のジョンが王となりジョンの妹のママンサを嫁に貰った事で名実共に義兄弟となってしもうたのじゃと色んな人が教えてくれたわい
耳になタコというヤツじゃな
田舎育ちで若い頃は冒険三昧だったので、公務とか儀式の類いが苦手なのは解らんでもないがのぅ
村の運営を見る限り学が無い訳ではなく有能なのじゃがのぅ
魔王かぁ、ワシも何れ斬ってみたい物じゃ
『戦神の加護を発動しますか?』
ダメじゃ、ノーじゃガイダンスさん
まだそれは洒落にならんぞい
確認してくれるのはありがたいのぅ
今魔王が現れても十年は野放しになってしまうわい
まあ、何れな
「大丈夫ですか、父上?」
一人青くなったり白くなったりと忙しいパーパスに声をかける
大丈ばないのじゃろうがパーパスは軽く手を振って見せる
父親ならシャキッとせんといかんのぅ
「それで父上、ご相談があるのですが…」
ワシは珍しく神妙な面もちでパーパスに話を切り出す
何時もと様子が違う
ワシに気付きパーパスは椅子に座ったまま身体をこちらに向け真剣な顔になる
「どうしたカタナ?」
パーパスは問う
先程までのヘタレた顔ではない
「申し訳ありません…さるお方から武器を頂きまして、父上から頂いた剣ではなくそちらを使いたいと存じます…」
ワシは申し訳なさそうに答える
練習用の物だろうと父が子の為に用意した武器を使わないというのは不義理である
やはりちゃんと筋は通さねばなるまい
「貰った?」
パーパスが訝しむ顔をした
貴族様でS級クラスの冒険者が本気で選んだ一振よりいい武器などそこらには無い
スミスもそう言っておったしその表情も頷ける
そこにセバスチャンが現れパーパスに耳打ちをする
「スミスって、あのスミス・ブラウニーか?」
パーパスが驚きの声を挙げる
やはり有名人なのじゃな
「懐かしいなぁ、俺も昔作刀を依頼して断られたんだよなぁ」
ヘラヘラと笑いながらパーパスは言う
これはちょっと以外じゃな
スミスなら喜んで作りそうなものじゃが
するとパーパスは壁に立て掛けた愛刀を鞘から抜き放った
「これはスミスの師匠の最後の剣でな、これを越える鍵盤今の自分では作れないと言われて絞まったよ」
成る程のぅ、そっちかい




