最後のお手紙
拝啓、お元気ですか?
こちらは、いよいよ春を迎えようとしている季節です。
そちらは、どうですか?
春ですか?夏ですか?冬ですか?…それとも、秋ですか?
私は、春は好きです。
桜が綺麗で…ここから眺める景色が散りゆく花びらを一枚一枚見せてくれるんです。
時には、その桜が御話をしてくれます。
`` ちゃんは、元気だね。元気は良い事だよ、だからもっと元気になって体をよくして皆に笑顔を見せてあげなよ。きっと皆喜ぶよ``
桜は、そんな事を言います。
…でも、わかってるんです。
きっと、治らない…なんてね。
---彼女から来た手紙は、たくさんあった。
彼女はいつも笑顔で学校では人気者でいつも男女の輪の中心にいて…。
そんな彼女に憧れて…傍で見ていた時、彼女は僕に話をかけてくれて…。
それが、支えになったりして…僕は、彼女に恋をした。
…しばらくして…クラスは急に物静かになって…笑顔を亡くした…。
彼女がいなくなったから…。
「なあ、最近 ちゃん来ないよな?何か知ってるか?」
「いいや?何にも聞いてねぇけど…あ、お前は ちゃんと仲良かったよな?何か知ってるんじゃ…」
僕は黙っていた…。
窓辺で一人空を見上げて…。
それ以外からの音はすべて遮断されて…何も聞こえなくなって…。
{---ああ、 くん?あのね… が今交通事後にあってね…明日から学校は休むからって伝えてて、お願いね?}
と、向こうの母からの電話がかかってそれを即急に伝えると電話は切られた。
公衆電話だったらしい…。
病院で入院生活を送る彼女は、それからというもの、文通が日課となっていたらしい。
それは、…それはしばらくはよかった…。
でも、回を増すごとに、字が段々変になっていくのがわかった。
最後に届いた手紙だけは…もう、彼女の字ではなく…彼女以外が代わりに書いた物だった…。
{…。 くん…?あなた… の事…好き?}
そう、彼女は…死んだのだ。
次の日、僕のポストに届いたのは、向こうの母からの手紙であった。
``今日、 のお葬式に来てくださらないかしら…、あの子もきっと、喜んでくれるから…。``
僕は…その葬式で、久しぶりの彼女の顔を見る。
久の顔は、痩せていて…辛かったのだという彼女の言葉もわかったような気もしてくる。
彼女の痛みの代償にはならないが…文通相手になってあげていた事が、きっと彼女にとっても幸せなのだと思った…だから、僕は彼女の棺に最後のお手紙を捧げた。
「最後まで、笑顔をありがとう…。」
彼女は、フッと笑顔になったような気がした…。
僕は、そんな彼女を見ると頬から止まない涙がいっそう流れてゆくのを拭く事もせずにただ雨のように落としていた。