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浮城壱

「すごい弾力ね......」


「百合、ここにあるものは知っていて?」




 月日が流れるのは早いというけど、本当にその通りだと思う。いつのまにか、あと一月で一年が終わろうとしていた。

 清さんが持って仁湖様が触れているのは



「天然ゴムですね」



 地理の教科書とかで見たことはあるけど、目の前にあるのは初めてかな。



「『ゴム』?」


「そのような言い方があるのですね」



 そして、毎度の如く仁湖様と清さんのは通じなかった。

 まあ、それは置いといて



「天然ゴムはどのようにして手に入れたのですか?」



 天然ゴムはゴムの木の樹皮から採取される、ラテックス、っていう白い乳液を原料として作られる自然由来の高分子材料。

 そして、ゴムの木は熱帯雨林地域で大規模なプランテーションで育てられていたから、日本にはないはず。

 天然ゴムがあれば、いくつか作れるものがあるからちょっと融通して欲しいな。



「これらは交易品からよ。珍しい物がある、と兄上が届けてくれたの」



 仁湖様の兄上って中々にお目が高いね。そういえば、仁湖様の兄って何をしているんだろう?

 今更だけど、そんな疑問を持ち始めた時、



「おや、仁湖様もやはりお持ちのようですね」


「お久しぶりですね」



 部屋に入って来たのは和葉様と忠良様だった。



「いらっしゃい。今日も百合を借りに来たの?」


「......また、何かあったのです?」



 二人が来る=事件が起こっている

 という認識になっている二人は少し警戒していた。

 あながち間違いじゃない。だって、この二人が来る度、わたしは巻き込まれるんだから。



「まさか。今日は別の要件ですよ。百合殿、莉子様のことは知っていますかよね?」



 莉子様?......ああ、あの小動物みたいでかわいい美少女か。



「もちろん、知ってますよ」


「実は莉子様と佳奈子様から文を預かっているのですよ」



 隣から何かやらかしたのか?という圧力の籠った、斜め後ろからは心配そうな、斜め前からは興味津々の視線が降り注がれた。

 今回っていうより、いつもわたし、何もしていないんだけどな......。

 わたしは忠良様から渡された丁寧に折りたたまれた和紙の一つを開ける。

 お、これは、莉子様からか。



「今度......会を開く......参加、して、ほしい?」


 字と字が繋がっているせいで読みづらい。なんとなく、英語の長文で鍛えたフィーリングで読むと、わたしを会に誘って、場所が水鞠殿?



「百合、内容、理解できた?」


「清さん、絶対にこいつは理解していないですよ」


「失礼な!理解できましたよ」



 ......たぶん。



「なら、ここで言ってみろ」


「場所は水鞠殿にて、莉子様主催の会が開かれるそうです。参加者は主催する莉子様と松雪さん。招待されたのは佳奈子様とその侍女に和葉様ですね」


「俺もなのか......」


「あらあら。今回も可愛くしますからね」



 仁湖様と清さんの目が輝いている。頑張って、和葉様。



「百合、もう一方は何が書いてあったのですか?」



 清さんに促されてもう一つの佳奈子様からきた文を開くと、



「参加するように、と書いてありますね」



 さぼろっかな、と思っていた気持ちが一瞬にして霧散するぐらいの威力はあった。

 婉曲的な言葉で直接的じゃないのに、やっぱり中宮様。後ろにある力は絶大。



「では、今から準備しましょうか。前回と同じような模様は避けたいですし......。和葉様、百合、気になる模様はありまして?」


「衣装は部屋に入れているから、好きな物を選んでいいわよ」


「和葉様の変装は楽しみですね」




 大人組はもう楽しそうだけど、またわたし、着せ替え人形になるのか......。

 遠い目をして、現実ではなく、数日後に迫る会に思いを寄せた。


 しかし、会が開かれることはなかった。

新しい話です。

前回よりもたぶん長くなります。


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