甘い企み伍
黄色の悲鳴が聞こえて急いで戻ってくると、
「あら、お帰りなさい」
どこか上の空の佳奈子様が迎えてくれた。
「あの、何があったのでしょうか?」
「やっぱりあなたですね⁉わたくしの扇を盗んだのは⁉」
「わたくしではないと言っているでしょう、桂子様。そのように高い声を響かせないで下さる?あなたの声尾は耳に響くので」
「なんですって......!」
やりとりを見た感じで大体分かった。
「桂子様の扇がなくなったのですか」
「ええ。どうやら、桂子様が席を外している時にね。それで薬子様が疑われているのだけど......」
「もしや、莉子様ですか?わたくしの大切な扇を盗んだのは」
「え⁉わたし、そんなこと......」
今度は莉子様まで疑われ始めた。桂子様に詰め寄られてもう泣きそうだよ。
「(これ、解決できたりするか?) 」
「(今の話を聞いただけで何も分かりませんよ。せめて全員から話しを聞かないといけません) 」
「(分かった)」
小声の会話が終了し、和葉様は佳奈子様に何かこそこそ話している。一体何が分かったんだろう?
「ねえ、百合。あなたって謎を解くのが得意なのよね?」
え?まさか......
「誰がやったのか見つけてくれないかしら?」
やっぱりそう来たか。
最近、ようやくこの世界になじんできた。そして、相手は中宮でわたしはただの客人で侍女。
わたしには断る術がなかった。
「かしこまりました。では全員からお話を伺いましょう」
短いですが、切りがいいので今日はこの辺で止めます。
次回は事情聴取で7月13日頃に更新します。