表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

甘い企み参

 馬車から降りた先にあったのは仁湖様の屋敷がいくつもある空間だった。



「......でっかいですね」


「景色は後でいつでも見られる。ほら、行くぞ」


「あ、待って下さいよ!」



 和葉様の足に合わせる10歳とぐらいの体のわたしには早歩きになる。


 はあ...はあ...はあ......


 精神的には元気だけど体が悲鳴を上げている。

 頑張っているけど、どんどん遅くなって和葉様の背中が遠くなっていく。



「あ......すまない」



 隣にわたしがいないことに気づいた和葉様が後ろを振り向いたことで、追いついていない現実を知られた。



「い、いえ......歩くの......遅く......て......」


「そこで待ってろ」


「え?何を、って」



 体が地面から離れたことで悟る。あ、これ、抱かれてね、わたし?



「お、降ろしてください!」



 見た目はともかく中身は高校生。多少は意識するんだよ。知ってます、和葉様⁉

 和葉様の腕の中でばたばた暴れても、悲しいかな。わたしの力はすぐに抑えられた。



「暴れるな。ほら、行くぞ。もう少しで着く」



 すれ違う度の生温かい子どもに対して穏やかに見るような目がいたたまれない。



「......降ろすという選択肢はないのですか?」



「降ろしたところでまた置いて行かれるだけだだ。そんなことより、軽すぎる」


「何がですか?」


「お前の重さだ。身長だけみれば10歳。いや、それより少し幼いくらいだが、体重が軽すぎる。ちゃんと食べているのか?」


「食べてますよ。次、いつ食べられるか分からないから、ご飯がある時に思いっきり食べないといけませんから」


「......そうか。ほら、着いたぞ」



 和葉様に下ろしてもらって、一つの部屋というより、御簾で区切られた空間に足を踏み入れると、



「い、いらっしゃいませ......!主宰の莉子(りこ)です。よ、よろしくお願いします」


「あなたが有名な百合様?思ったよりその、若いのですね」


「この年で既に帝の後ろ盾があるのですか......」


「初めまして、百合。話しは色々と伺っています。随分と活躍されたとか。あなたの武勇伝を楽しみしてるわね」



 おどおどしたわたしより少し年上の可愛い女の子につんと澄ました女性に大人の魅力が爆発している魔性の美女。

 そして、仁湖様と別人なのにどこか似ている優しそうな人。

 後ろには侍女が一人ずつ控えているけど、全員顔立ちが整っている。ここってモデルとかのオーディション会場?女装した和葉様を含めて全員美人過ぎる。

 貴族って美男美女が生まれるような遺伝子なのかな?

 すごく頭の悪いことを考えていると



「そ、それでは揃ったので、まず最初に自己紹介をしましょうか。先程も自己紹介した通り、更衣の莉子です。今日の催しを楽しんでいただけると嬉しいです」



 慣れない新人さんの自己紹介をみたいで、見ているだけで初々しい。



「中宮の佳奈子よ。このような会に参加するのは久しぶりだから、莉子殿、期待しているわ」


「あ、ありがとうございます!期待に応えられるように頑張りますね!では、薬子様と桂子様、よろしくお願いしますね」


「女御の薬子と申します。よろしくお願いしますね」


「同じく女御の桂子です。わたくしもこのような会にはあまり足を運んだことがないので不慣れですが、よろしくお願いしますね」


「わたくしの記憶が正しければ、桂子様は先日、帝とこのような会を開いていませんでしたっけ?もうお忘れになったのですか?随分とおめでたい頭をしていること」



 こ、怖!雰囲気がつんとしているせいで冷たく感じる。

 桂子様に礼儀正しく質問をしているけど、全く穏やかじゃない。



「薬子様は羨ましいんですか?そうですよね。あなた様のところに帝が来たのはいつだったかしらね?」



 うわ、思いっきり喧嘩を売ったよ、この人。

 後宮の仕組みとかは完全に友達の受け売りだけど、これは分かる。

 薬子様と桂子様で帝からの寵愛を競っているんだ。

 友達が女の争いって怖いんだよって言っていたけど本当だ。横で聞いているだけで身が縮む。



「お二人とも、百合の自己紹介がまだでしてよ?百合、自己紹介を」


「は、はい。百合です」


「(ほかに何もないのか?) 」



 小声で隣に控えている和葉様から指示が出るけど、自己紹介って名前だけ言って終わりじゃないの?



「後は、そうですね......。理系ですが、生物が好きです」


「「「「......?」」」」


「......⁉」



 目をぱちくりしている人が大半だけど、一人だけわたしのことを驚いたように見ているから、多分意味が通じた人だね。

 仲良くなれそうな気がする。



「そういえば、百合。あなたは何か面白い物を持って来たそうね」


「ここにいくつか荷物が届いていたのですけど、それらは百合様が頼んだ物だったのですね」


「」


「もしかして石鹸というものですか?」


「石鹸?なんですか?」


「あら?知らないのですか、桂子様?忠良様によると、とても良い香りがして物が綺麗になるそうですよ。今、そのような話が飛び交っているというのに、屋敷に籠っている薬子様の耳に届かないのは当然と言えますが」



 この人たちってなんでそんな風に言うのかな?

 てか、忠良様に石鹸のことを伝えた記憶ないんだけど、少し見ただけで分かるとかやっぱり忠良様って能力が高い人なんだ。

 最近、わたしに頼みに来ていることが多いし、和葉様に仕えている印象があったから、初対面の時に感じた仕事ができる感じは薄れていたけど、凄い人だったんだね。今、忠良様の株が上昇している。



「申し訳ございません。百合様。お二人はいつもこのような感じですので、はじめても大丈夫です」


「は、はあ......。では、お料理を始めましょうか」

新キャラが出てきました。

薬子と桂子の言い合いを書いている時、こちらとしては結構楽しいです。

次回はパンを作ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ