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甘い企み弐

「俺を女装させたからにはお前にもそれなりに頑張ってもらおっか」


「......はい。その、色々とすみません」



 仁湖様の秘策って和葉様のことだったんだ......。

 今日の朝、屋敷を訪れた和葉様は清さんによって可愛くなっていた。

 和葉様はまだ声変わりしていないから、見た目を変えればいけるとか言っていたけど、よく本人が許可だしたよね。



「お前が謝る必要はない。俺がついていくと決めただけだから。そういえばよく許しをもらったな。あんな知識じゃ誘われても清さんあたりが断りそうだが」


「その逆ですよ。相手が中宮様だったので、仁湖様も清様のノリノリで参加者の名前と家系と趣味と好みを叩き込まれました」



 いやー、ほんとに大変だった。ぶっ通しの古典勉強。理系民にはきつかった。



「待て。佳奈子様がいらっしゃるのか?」


「?はい。そうですけど。仁湖様から聞いていないのですか?」


「あったかもしれないが、一番最初に書かれていた女装という言葉で全ての意識がそちらに向かった。まあ、俺のことは置いといて、さっきから気になっていたんだが、何を持って来ているんだ?」



 和葉様がわたしが持ってきた手荷物に話題を向けた。

 手荷物にしてはそれなりに大きいから気になったのかな?中身は大したもの入っていないけど。



「強力粉と砂糖と酵母菌ですね。混ぜる容器とかは現地に届くようにしておきました」


「......何を作るつもりなんだ?」


「そんなに警戒しなくても普通の食べ物ですよ?パンを作るだけなんで」



 最近見つけた酵母ちゃんを使ってパンが食べたい。それだけである。せっかくならジャムを作ってくればよかった。



「『パン』を作る?......お前、今日、何するのか知っているのか?」


「流石に知ってますよ。今日は料理するのでしょう?わたしがパンを作ることは二人の了承を取っていますから」



 学校とバイトと勉強に追われて何一つ自由な時間がなかったかつてのわたしは一度も参加したことないけど、バイト先の店長がよく誘われたから、と言って調理道具を持ってどこかに行っていた。

 だから、

 誘い=料理

 だと思っていたんだけど......。

 和葉様が頭を抱え込んでいるから、なにか違うっぽいね。

 どこか違うのか分からないけど。



「......根本的に変える必要があるな、これは。いいか。まず、これから行くのは自分がどれだけ教養があるのか見せる場で決して『パン』とかいう料理を作る場ではない」


「......はーい」



 せっかく準備したのに。ちょっと残念。



「......ただ、許可を取ったなら仕方がない。もう佳奈子様も知っていることだし、今回だけだ」


「え⁉良いんですか⁉」


「今日だけだぞ。今日だけだからな」


「分かっていますよ」



 パンの許可が下りた!やったね!

 わたしは和葉様にうるさいと言われるまでるんるんで鼻歌を歌っていた。




 ◇◇◇




 しばらく馬車に揺られているとゆっくりと止まった。



「ここが後宮......」



 小さな窓の外には見たことのない世界が広がっていた。

行事って楽しいですけど、準備するのが大変なんです。その過程も楽しいけど、大変なところの方が大きいきいんですよね。

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