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甘い企み壱

 季節は秋を通り過ぎて冬となったある日のこと、いつものように清さんと一緒にお勉強していると



「百合、あなたに文が届いてますよ」



 白い雪で化粧された枝を持った仁湖様が表れた。



「文って確か殿方から来る恋文、でしたっけ」


「惜しいです。それ以外にもあるのですよ。せっかくですし、開けてみたらどうです?」


「殿方からの文だったら燃料にしますね」



 そんなことを言いながら、山茶花に結ばれた手紙を取って読むと



「燃料にするか、ちょっと悩みますね......」


「何が書いてあったんですか?それと、燃やすのは最後の手段です」


「佳奈子、様?からのお誘いでした」



 佳奈子という名前の人はわたしの知識には存在しない。一体誰だろうね?

 でも、知らないのはわたしだけのようで、



「佳奈子様からですか⁉参加した方が良いですよ」


「百合のことを気になっているのでしょうか。佳奈子様が誘うなんて珍しいですね」



 二人は普通に会話を進ませていた。



「あの、佳奈子様ってどなたなんですか?」


「......教えたことをすっかり忘れたようですね。佳奈子様は今の中宮様ですよ。やっぱりもう少し知識をつけるために勉強時間を増やした方が......」


「いや、間に合っているので遠慮します!」



 これ以上古典の勉強はしたくないので。そんなことは置いといて、まさか、中宮様から誘いが来るなんて......。わたし、何かやらかした?



「百合、その文を少し読んでもいいでしょうか?」


「もちろんです、仁湖様」



 漢字が崩れているせいで読みづらかったから、読み間違いしているかもしれない。ここは仁湖様に呼んでもらって解釈があっているのか確認して欲しい。



「主催は莉子殿......参加者は......女御二人に佳奈子様......場所は後宮の一室......侍女一人同伴......。莉子殿というのは更衣の方でしょうか?人数は少ないですが、参加者は上級貴族出身の方が多くを占めてますね......。初めての誘いには少し難しそうですね。どうしますか、百合?行きますか?」



 ここで断ることもできるよね、きっと。でも、この間、身分の高い人の提案は命令に近い。仁湖様がいくら凄い方でも中宮様の誘いを断るのはきっと大変だよね。それなら、



「行きます」


「それなら準備しないといけませんね。ですが、仁湖様とわたくしは当日行くことはできないので、侍女はどうしましょう?」


「それならちょうどいい方がいますので、連絡を取っておきますね。清、百合に合いそうな衣をいくつか見繕っといて」


「かしこまりました。手荷物をこちらで手配いたしますね」


「ええ。お願い。後はそうね......」



 会話について行けない。いや、わたしだって中宮様みたいに凄く偉い人と合う時はおめかししていくのは理解できるし、何かお菓子を持って行くのも分かる。

 でも、ここまで張り切ったりしないよ。二人の雰囲気に押されかけていたけど、



「清さん、わたしも手伝います」



 何とか会話の中に入った。参加する本人なのに何もしないなんて申し訳ないし、されるより動いていたい。

 まだ慣れていないけど、着物を選ぶくらいはできる。



「では百合はまず、後宮の地図、そして参加者する方の名前と家系に関係者。あと好みや趣味を覚えて下さい」


「え?準備は」


「後です。まずは暗記して最低限の知識を得て下さい。分かりましたね?」


「は、はい......」



 清さんの気力に押されてつい頷いてしまったわたしの前には巻物がいくつか出てきた。

 え?これを暗記するんですか?

 つい数秒前のわたしを呪いたい......。

 過去の自分の行動に後悔しながら、字の解読から始まった。

中宮の名前さえ知らない百合が後宮に行きます。そのためにはまず勉強です。

久々に誘いが来たことで仁湖様と清さんのテンションはいつもより高め。



今週の投稿は今日だけになって次回が来週の日曜日(7月6日)になるかもしれません。

毎日更新している作家さんって凄いとしみじみ感じました。

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