村の中へ
村にはすんなり入れた。
一郎と龍二は、村に入るなり、木の外壁によりかかり眠ってしまった。
夜になり龍二は、目を覚ます。
村は、淡いランプの灯りで、照らされ、お祭りのような印象にさせてくれた。
一郎はくーくー眠っている。
起きた龍二の気配に気づき、門番がやってくる。
「お前らどこから来たんだ?」
「あー、多分わかんないくらい遠いところ。」
「厄介事は勘弁してくれよ。」
門番は、龍二と寝ている一郎を困ったように見た。
門番は、二人の服装は、しっかりしたつくりだったので、どこかのお偉いさんの子息だろうと思ったのだった。
龍二は、学生服が汚れるのも気にせず、地面に座り込む。
一郎が起きるまで、動く気になれなかった。
寂しさもあった。
違う世界。
知らない村。
家で、待っている家族。
学校の友人。
自然と空を見上げる。
空には、見たことのない位置にある星や、ウサギのいない真っ白な月があった。
「うーん。」
一郎は伸びをする。
硬いところで寝たので、全身が痛い。
「起きた?」
「ああ、龍二君か?」
「寝ぼけてんの?」
「ちょっと。⋯ここは、村かい?」
「そうだよ。」
「生き延びたか⋯。」
「生き延びたな。」
「二人とも起きたなら、冒険者ギルドに行け。緑狼の報酬の件で、リリエットが、待ってる。」
「リリエット?」
「まあ、行けばわかんだろ?」
「わかりました。冒険者ギルドってどこですか?」
「通りをまっすぐ行った広場の一番でかい建物だ。」
「ありがとうございます。」
一郎と龍二は、疲れる体を押して、だるさに負けないように冒険者ギルドを目指す。
冒険者ギルドの看板の文字も読めない。
「龍二君。あの看板読める?」
「読めないわ。はあ。詰んだかも。」
冒険者ギルドに入ると、見知った女の子が、近づいてきた。
「う。ちょっと外、行って!あそこの井戸で、体洗ってきてよ。」
確かに一郎も龍二も臭くなっている。
ばしゃっと、頭から水を被る二人。
井戸水は冷たかった。
改めて⋯。
「私が、リリエットよ。」
「ああ、助けてくれてありがとうございます。」
「ありがとう。」
「じゃあ、報酬なんだけど、11体の緑狼の売却額の80%は、私、残り20%がそっちでいい?」
「それで、いいですよ。」
「いいの?」
「その代わり、お金の価値とか一食いくらとか冒険者ギルドのこととかそういこと教えてほしいんですが⋯。」
「⋯そういうことか。」
「そういうことです。」
リリエットは、二人をとりあえず、訳ありの異国の要人と考えて接することにする。
不思議な格好してるし。