授爵
次の日、ラスティル家からの使いが来る。
今回は、みんなで行くようだ。
「銀位貴族の家にお邪魔する時が来るとはな。」
さすがのカインも緊張しているようだ。
リリエットも、やはり緊張している様子。
アイシーが、なんとなく気遣っているのがわかる。
リリエットの家は、小さい西洋風の城だった。
水堀もあって、外壁もあって、しっかりしていた。
5人はそれぞればらばらに部屋に案内され、客人扱いになった。
リリエットは、再び父の執務室にいた。
「3年で5億と言ったが、あの話は無しだ。」
「⋯へ?」
「王族に色々献上したらしいな。」
「ああ、あれは仲間が勝手に。」
「王命で、リリエット・ラスティルを鉄位貴族に拝命するとのことだ。」
「私が、独立貴族に?」
「ああ。⋯なんだ。うれしくないのか?」
「不服と言えば、不服です。私の功績ではありませんので。」
「まあ、そんなものだ。人生なんて。何にせよこれで、自由に近づけるといいな。」
「⋯はい。」
二人の間に緊張が走る。
「お父様。鉄位貴族について、教えてください。」
「ああ。基本は、お前の知っている通りだ。詳しくは、この任命章で確認できる。」
「⋯ありがとうございます。」
「最後に、心に刻んでおきなさい。絶対、死ぬな。」
「⋯わかりました。」
執務室を出ていくリリエット。
「私は、お前には、こっち側は合わんと思っていたんだがな。貴族の嫁なら、割と自由でもあるからと。」
リリエットは任命章を確認する。
「納税に兵役。⋯こういうことか。確かに今のままじゃ、死んじゃうかもね。」
その足で、リリエットは自宅の書庫に向かう。
詳しく、鉄位と銀位貴族のことを調べるために。
ラスティル家の次期当主アルフィンは、当然、リリエットを取り巻く環境の変化は、把握している。
調べようと思えば、自領内の情報などすぐに集まるのだ。
集まった情報の中で、一郎と龍二の存在は、異質であった。
低レベルでリリエットと出会う前の情報は皆無でありながら、リリエットを鉄位貴族へとした立役者。
他国の間者かとも疑ったが、こんな怪しい奴らを使う国はないだろう。
アルフィンは、見極めるために少しだけ話をしようと思う。
最悪な自分が死ぬことになっても、もし、自分に何かあれば、二人が疑われるのは、当たり前のこと。
「あ、そうなんですか。教えていただきありがとうございます。」
アルフィンから見た一郎は普通の物腰柔らかな男だった。
殺気にも反応しない。
少々拍子抜けだ。
「ではな。」
「ええ、失礼します。」
アルフィンは、自室に戻るころには、すでに一郎のことなど頭の片隅に追いやられてしまっていた。




