狼と少女
「ありがとう。龍二君。」
「どういたしまして。っていうかあれって。」
「モンスターだろうね。あんまり、この森に長くいたくないな。」
「あれくらいだったら、なんとかできるよ。」
「あれくらいのより強いのだと怪我するだろ?」
「まあ、確かに。」
「せめて、高い場所から周りの確認ができれば⋯。」
「俺が、木に登って見てこようか?」
「大丈夫かい?」
「多分、大丈夫。」
「森が終わってる方を見つけてくれ。」
「了解。」
しばし、木を登る龍二を不安そうに見る一郎。
降りてくる龍二。
「向こうの方向に、村があるよ。」
「どれくらい歩きそう?」
「結構。」
「頑張るか⋯。」
二人は、歩く。
ひたすら、そして、夕方になるころ一郎は気づく。
「寝床どうしよう。」
「寝てる場合じゃないと思う。」
「まあ、確かに。」
「ともかく、村を目指そう。」
龍二は、しっかりとした足取りで、進む。
一郎もそれになんとかついていく。
途中で、コンビニのおにぎりを分けて、進んでいく。
次の日の昼ころには、村が見えるところまで来ていた。
そんなところで、一郎と龍二は、お互いに背を預け、狼の群れに囲まれていた。
「おっさん、絶対あきらめんなよ!」
「わかってますよ!」
一郎は、ともかく手足を振って威嚇する。
龍二は、蹴り飛ばしたりもしているが、致命傷は与えられていない。
狼たちは、先に手強い龍二を倒すことに決めたようだ。
3匹が一気に飛びかかる。
龍二を突き飛ばす一郎。
「龍二君!」
群がられ、かじられる一郎。
一郎は、最後の力を振り絞り、叫ぶ。
「龍二!逃げろ!!」
龍二は、門に向かって走る。
追ってくる狼は2匹。
龍二の横を一陣の風が横切る。
「ラッキー!緑狼の群れ。」
女の子の声。
後ろを振り返ると、痺れて倒れている2匹の狼。
龍二を追っていた二匹だろう。
一郎は、最後まで諦めず、なんとか暴れていた。
そこへ、急な体のしびれが襲う。
体が自由に動かない。
「おじさん!ナイス囮!」
一郎がなんとか目を向けると、おしゃれな軽装備の女の子が、ナイフで、狼たちを刺しているところだった。
「一郎さん⋯。」
龍二が戻って来る。
女の子が、龍二に話かける。
「ポーション売ってあげようか?」
「頼む!今は手持ちがないけど、なんとか返すから!」
「はい。これ。使い方はわかる?」
「わからん。」
「飲ませるか患部にかけて。いっぱい噛まれてるから飲ませた方がいいよ。」
一郎は、だんだんしびれのおさまってきた手でポーションを開け、飲み干す。
痛みがじんわり引いてきた。
龍二は、安心して、座り込む。
一郎もなんとか立ち上がる。
「色々言いたいことあるだろうけど、まず村の方に行こう。」
女の子は、村を指さした。
一郎と龍二は、頷き自分の足で歩き始めた。
狼の死骸はすでに、無くなっていた。