吹っ切れる
龍二が、回復するまでの話。
リリエットは、あまり焦っていなかった。
もうなるようにしかならないだろうと開き直っていたのだ。
龍二の無茶を見て、なんとなくそんな後先とか考えていない生き方もいいのかなと思った。
一郎も余計なことは言わなかった。
リリエットは若い。
聞けば16才で龍二と同い年らしい。
そんな若者の青春の一幕に邪魔をするのは忍びないと思っていた。
カインとアイシーは、そんな二人を好ましく思った。
受ける依頼は、大したものではない。
ゴブリン駆除、グリーンボール駆除、薬草採取。
一郎のレベルに合わせてパーティ無理なく別れて依頼を楽しんだ。
カインと一郎の関係は、対等で、遠慮がない。
「一郎!違うって、よけんのは当たり前なんだ。避けた後の周りの警戒が大事なんだよ。」
「わかってますけど、かなり難しいですよ。」
「できるようになるまでやりゃいいだろう!」
カインは、ゴブリン呼びの笛魔道具を使う。
ゴブリンがすぐに一郎たちに気づき、襲いかかってくる。
「ちょ、カイン。その笛だめだって!」
「だめなのは、慣れない一郎だ!ほーれ、早く倒さないと怪我するかもだぜ!」
「はあ、やってやりますよ。」
そんなやりとりが3日続いた。
続いて、アイシーと一郎は、一郎が一歩引いてアイシーが近づいてと、なんとも不思議な攻防が繰り広げられていた。
「一郎!魔撃教えてあげるよ!」
「魔撃って強そうですね。」
「魔撃は、第一階梯で、魔弾の第三階梯分くらいの威力よ。単純に3倍強いわ!」
「魔撃より強いのもあるんですか?」
「私は、雷専門だけど、魔槍や、魔閃なんかも一応使えるよ。魔槍は、魔弾の5倍くらい強くて、魔閃は、10倍強いよ。貫通力とか!攻撃範囲とかコスパとか色々あるんだけどね!」
話ながら勢いが乗ってきたのか、どんどん近づいてくるアイシーに一郎は、少し後ずさる。
「⋯まあ、こういうのは実践あるのみだから頑張ってやってみよう!ていうわけで!」
アイシーは、ゴブリン呼びの笛魔道具を使う。
「それ、流行ってんですか!?」
「魔撃覚えるまで、頑張ろう!!」
3日経つ。
魔撃は、覚えられなかった。
「才能はバツっと。」
「アイシーさん、さすがにひどいです⋯。」
リリエットと一郎は、まあ、特に問題はなかった。
一郎には、やはり、リリエットが少し無理しているようにも見えたが、まあ、それもいいのかもしれないと思っていた。
「一郎!これ嫌いなんでしょ?」
リリエットがいたずらそうに持っているのは、ゴブリン呼びの笛魔道具。
それを吹こうとしているのを、一郎は星属性の身体強化で、反射的に止めた。
リリエットは、思いのほか動きの良かった一郎に、また、少し精神的に崩れていたこともあり、対応が遅れ、木の根に足をとられ、一郎と一緒にバランスを崩した。
一郎が気付いたときには、リリエットを押し倒すような形になっていて、たまたま、その瞬間を狙ったように戻ってきたカインとアイシーに茶化された。
「一郎!早くどけえ!」
一郎は、結構な威力で、照れ隠しのキックをくらい木にぶつかる。
まあ、そんな日もあった。




