再びの緑狼
村が見えてくる。
龍二は、安堵せず、全力で駆け抜ける。
セティには、10体を超える緑狼が見えていた。
龍二が止まったら食われる。
そう思うと、死の恐怖が身近に感じられた。
と、龍二の右横の茂みから、緑狼が飛び出してきた。
セティの迷いは一瞬。
でも、判断は正しかった。
龍二への身体強化をいったんきり、残りの魔力の8割の全開ライトを放つ。
右横から飛び出してきた緑狼をはじめ、後ろを追ってきていた緑狼たちも、ライトの光を直接見ていたので、倒れるように、バランスを崩した。
龍二も突然の光に、バランスを崩す。
セティは、前に投げ出された。
その拍子に杖もどこかに飛んでいってしまう。
龍二は、思う。
これじゃ、いつかの一郎さんみたいだな。
そう思うと、ライトの光で、見えないまま、まだ回復しない目でも叫ぶことは決まっていた。
「セティ!逃げろ!!」
セティは、起き上がると、自分に光の身体強化をかけ、龍二のところに戻り、龍二を背負う。
「カッコつけてる暇があったら、あがけって、おじいちゃんにおばあちゃんが言ってました。」
門まで、あと、50m。
緑狼たちは、起き上がり始めた。
門まで、あと、45m。
緑狼の一匹が、龍二に噛みつく。
自分に身体強化をかける。
龍二の目はまだ見えない。
しかし、門の方向は、わかる。
門まで、あと、40m。
他の緑狼たちが、龍二たちに向かう。龍二は、再びセティを抱えて走り出す。
ふくらはぎに食い込んでいた緑狼の牙がずるりと抜ける。
門まで、あと、30m。
龍二たちの元へ、再び緑狼がやってくるのが感じられる。
門まで、あと25m。
セティが、龍二に光の身体強化をかけ直してくれた。
緑狼たちの噛みつきは一瞬の加速で、避ける。
門まで、あと20m。
龍二の両足に噛みつく緑狼2体。
セティの息を飲む声が聞こえた。
それでも前進する龍二。
歯を食いしばり、見えない目で、まっすぐ進む。
それでも、限界はすぐに訪れた。
龍二の目の前にさらに2体の緑狼が道を塞ぐ。
龍二は、それでもあきらめない。
何か。
何かないか。
『意識的にやったらうまくできたかも⋯。』
身体強化が強くなったときのことだ。
なんとなく、こんな感じと聞いたらできたこと。
今まで出来なかったけど、できるかもしれないこと。
イメージ。
噛みつかれた足全部。
俺が、使える属性で、使えなかった魔法。
火と無属性の合成属性で、爆発属性魔法:自爆。
全魔力つぎ込めばなんとか届くだろう。
いや、届かせろ。
吹き飛ぶ、俺とセティ。
二人は、地面に投げ出される。
龍二は見えない目で叫ぶ。
「セティを助けてくれ!誰か、セティを!」
夢中で叫んでいるうちに龍二の意識は消えていった。




