喫茶店 しろくま
2024.11.28 修正しました。
「美味しそうに食べてくれるね~」
気づけば、イケオジは向かいのソファーに座り、春香の食べっぷりを微笑んで見ていた。
「はぁぁぁ・・美味しかったです!!温まりました!」
「そうかい?こちらこそありがとう。美味しく食べてくれて。久しぶりだからね。人間のお客さんは」
「そうなんですか?こんなに美味しいのに!もったいない・・ですよ?え?」
味噌汁の美味しさを真剣に伝えている途中で気が付いた。
人間のお客さん・・???
「そんなに目を開いたら、目玉落ちちゃうかもよ?ははは」
戸惑いと疑問に頭が追い付かない春香は、イケオジを見るしか対処方法がなかったのだ。
「・・・・」
「あれ、知らなかったの?」
声が出ず、コクコクと激しく首を縦に振るしかなかった。
「・・・お客さん、どうやってここに来たの?」
春香は戸惑いつつ、今までの道のりを説明した。
「そうかそうか。ロープーウェイから来たのか」
ソファーの背中を預けてるのに気品が溢れているイケオジに目が離せなかった。足を組み、膝に両手を組んで話すイケオジは、スタイルが良く、かっこいいしか言語化できなかった。
「いや、まあ、たしかに、驚きましたが、とりあえず歩こうと思ったらここが見えて、今ですね。」
「運が良かった。ここに辿り着かなかったら大変だったと思うよ」
何が大変だったかは、なんだか聞くことができず、恐怖さえ感じてしまった。
「え・・まじですか。」
「うん」
ニコリと噓偽りのない笑顔でイケオジは断言した。
味噌汁の美味しさの余韻はあっという間に消えてしまった春香だった。
ポカンと口を開けたままの春香の脳内は忙しかった。
何が起きているのか全く分からず、人間のお客が久しぶり、でもイケオジは人間、いや、まさか人外?!?しかも冬なのか春なのか、よくわからないし、殺されてないし、毒を入れられてるわけじゃないし、生かされてるだけか?!生殺与奪の権利は、すでにイケオジに握られているのか!?!??
その頃のイケオジはというと・・・
たくさん考えてるな~この子おもしろいな~。良い子が入ってきて良かった。このまま居てくれたりしたらおもしろいんだけどなあ~と
ニコニコと笑ったまま、二人だけの店内の時間は過ぎていった。
5分後・・・・
「はっ!」
やっと意識が現実に戻ってきた春香は、目の前のイケオジに視線を向けた。
「あ、終わった?大丈夫、取って食べたりしないよ。」
「いや、あの、すみません・・・・ありがとうございます?」
焦った春香は、謎に謝り、御礼をしていた。
ソファーに座り直し、手を膝の上に乗せて、イケオジと改めて向き合った。
「あの、ここって何のお店なんですか?」
表情を崩さないまま、イケオジは春香に伝えた。
「ここは喫茶店 しろくま。ランチもディナーもやってるよ。」
「・・・それは喫茶店なんでしょうか?」
春香が控えめに質問をすると、斜め上を見て数秒後、閃いたように春香を見た。
「喫茶店の方がかっこいいでしょ?響きが。」
ウインクをしながら、言い放った。
「・・・そう、です、ね。ははは。」
こういう展開好きなんです。