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白湯とニート

ほのぼのニート譚をぜひ可愛がってください^^

2024.11.28 修正しました。

「ふわぁ~・・・もう朝か。」


もう少しで太陽が出てくる朝方、布団から覗く顔はひんやりと冷たい。

レースカーテン越しの空は、ぼんやりと明るさを纏っていた。


「さむ。」

ピッと電源を入れて、いそいそと洗面台の前で目を閉じながら暗闇の中で歯磨きをする。

んーっと両手を天高く上げて伸びをすると全身に血液が巡っていった。


どすんとデスクの椅子に座り、あくびをしながら昨日の続きを始めた。

「どーれ、素材集め再開しますか。」

足元のヒーターからくる温風ともこもこのカーディガンで暖をとり、画面から目を離さず過ごしていた。


ーーーーー


仕事を辞めて1か月。

頭の片隅に再就職の文字は残しつつ、ぼんやり過ごしていた冬の始まり。

私、櫻井春香さくらい はるかは、外の世界を見ようと思い立った。


「よっしゃー!旅だ!宿は取ってないけど、まあ、なんとかなるか!」

3泊分の下着と最低限の服とコート。集めていた試供品のスキンケアを全部持って、自宅の鍵を閉めた。


ーーーーー


ガタンゴトン・・・

海辺に行きたかったはずなのに、目の前の山肌を颯爽と上るロープーウェイに惹かれて、片道切符を購入した。

「片道30分か~結構上るんだなぁ。まだお昼すぎだし、帰れるっしょ。」

手切りの改札に興奮気味に目を輝かせて、貸し切り状態のロープーウェイに乗り込んだ。


「うわぁ~・・・貸し切りじゃん!やっぱり特等席はここだよねぇ!」

迷わず一番前に座り、邪魔なものが一切ない開けた視界で徐々に白くなる山々を見つめていた。

動物たちの気配もないし、冬眠を始めているんだろうな~。雪化粧をし始めている木々の形が違い、それをみてそれぞれ性格があるのかな~などとのほほんとしていた。


「・・っよっと」


発車して10分程度したところでガクッとロープーウェイが傾き、びくっとして目の前のガラスに映る自分と春香は目が合った。

「うわ・・口開いてるじゃん、顔やば・・まてまて!!!誰か乗ってる?!貸し切りだと思ってたのに、一人で話してたよね?!恥ずかしい・・」


顔を引き締めて、外の景色にまた目を移した。


おや、こっち振り向くと思ってたのに、景色に夢中か。

いつも振り返って目が合うんだがな。と感心するように着物姿の長身男性は、寒さを感じさせない佇まいでロープーウェイの最後部に座り、春香を見ていた。


「わー!もう少しで着くー!」

終着駅が見えてくると、背後に人の気配を感じた春香は

背筋が凍り始め、全身に力が入っていた。

やっぱり誰かいるよね、貸し切りだったはずなのに。おかしい・・・いや、気づかなかっただけ?いいや!そんなことない!一人だったはず!!!あ、でも滑り込んだのかな。にしても、発車してから結構経ってたよね?!?え、殺されたりする??助からないよ!!!と

ぐるんぐるんと考えが巡り、気づけば終着駅に到着してしまった。


ガチャ ーーー


ロープーウェイの扉が開き、冷え込んだ空気が春香の足元に纏わりついた。

いざというときは、ひと思いにやってもらおう!無抵抗だ!と腹を括って席を立った。


「どうぞ」


柔らかい声色が耳に届き、はっとした春香は顔を上げた。


「おや、驚かせてしまいましたか?足元滑りますよ。気を付けてください。」

「あ、ありがとうございます!すみません!!!」

春香は慌てて御礼をしてロープーウェイから逃げ出すように足を進めた。


恐怖を拭いきれず、切符を握ったまま改札を出てしまった。

「あっ!切符!」

振り返ると駅員さんは手を振って、そのままでいいよ、とジェスチャーをしてくれているようだった。

ぺこっとお辞儀をして、切符はなくさないようスマホカバー裏に入れ、出口まで進んでいった。


出口から一歩出た途端、ぶわっと風が吹き荒れた。

「うわ、さむっ!!!」

目を閉じ自分を抱きしめて寒さを耐えたが、真冬の風が結んでいない春香の髪の毛一本一本を梳くように通りすぎた。

マフラーの結び目は解け、風が止みそうになった最後、ほんのり春風のような温かい風が頬をかすったように感じた。


「花の香り?」

ゆっくり目を開けると、雪解けの中で花々が咲き誇る庭が目の前にあった。



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