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大事なことに限って言葉だけでは伝わらない。


「MMMニュースの時間です。本日、解説のゲストに、ヤギのペーターさんにお越しいただいております。ペーターさん、本日はよろしくお願いいたします。」


「メェー。」


「…さて、本日未明、日本でクローズドβテストが開始となりましたVRMMO Boundless Realm『バウンドレス・レルム』ですが、既に世界中で大きな話題となっています。通常のVRゲームと違い、このゲームがこれほど注目を浴びることになった件について、ペーターさんはどのようにお考えなのでしょうか。」


「メェー。」


「…なるほど、このゲームの特徴は軍事利用されていた、超高性能AIを転用し、NPCこそが世界を作り、また動かしている『もうひとつの世界』であること。また、その仮想リアリティーこそがゲームを好む層に刺さったのではないか。そうお考えだと仰るのですね。」


「メェー!!」


 ヤギは手元(足元?)にあるカンペの紙を食べはじめた。


「ふむふむ……まだまだ始まったばかりだから、魅力については語り切れないと。ペーターさんはβテストに少しだけ参加されていたと伺っておりますが、サービス開始を控え、実際に触れてみた生の感想をお聞かせいただけますか?」


(もしゃもしゃもしゃ……もしゃもしゃ…ゴックン。)


「ゴフ…メェーーー。」


「……なるほど、ペーターさんは、ヤギのアバターでログインしたが、周囲からヤギとしてしか見られないことが不満であったと。そう仰るのですね。」


 ヤギは近くにあった機材や照明などに頭突きを始めた!


 照明は三脚から激しく倒れてしまい、ADが慌てて立て直す。


「メェー!……zzz」


 ひとしきり暴れたヤギは、セットの中央で丸くなった。


「何かや誰かにぶつからなければやりきれないほど、素晴らしい期待感を抱いているとのことですね。しかし、ペーターさん。その一方で、VR技術特有の危険性についても懸念の声が上がっています。長時間のプレイによる健康への影響や、現実世界との区別がつかなくなるといった報告も出ています。特に、現実と区別がつかないほどの高度な思考を持つNPCに対して、どう接するべきなのかが話題になっています。ペーターさんは、テスターとして、この点についてどのようにお考えでしょうか?」


「…zzz」


「うーん……左様でございますか。プレイ時間をしっかりと管理し、現実世界の友人との時間も大切にするように心がける。また、定期的にVR機器を外し、外の空気を吸ったり、軽い運動をすることも重要だということですね。」


 気持ち良い睡眠の最中にも関わらず、横でペラペラペラペラ喋るアナウンサーに嫌気がさしたのか、ヤギは迷惑そうに顔を上げ、難色を示した。


「…………メェエエエエ!!」


「ペーターさんが仰る通りです。VR技術はまだまだ発展途上の技術です。今後、更にリアルな体験が可能になる一方で、健康への影響や倫理的な問題など、新たな課題も出てくると思います。ゲーム会社だけでなく、プレイヤー自身も、VR技術のリスクや問題に対し、真摯に向き合う必要が出てくることでしょう。」


 ひとしきり口の中をモゴモゴさせたヤギは、とうとう断末魔のような、いななきを響かせた。


「メエエエ!!メエエエエ!…ア、ア……アァアアアーーー!!」


「ん…?ペーターさん?どうしたんですか?ペーターさん!」


「ワアアアアア!!ア、ア、ワアアアーー!!」


「ペ、ペーターさーん!」


「ヴァアアアアアアァーーー!!!」


「ペーターさん!!……っく。どうやらここまでのようです。ペーターさん、本日は貴重なお話とご意見をありがとうございました。視聴者の皆さんも、VR技術の利点とリスクを理解し、安全に楽しんでください。本日の放送は、坂田がお送り―」


「ヴァアアー!!」


 ヤギは舌でアナウンサーの坂田の顔をひたすらに、なめまわした。


「やめ!やめて!ペーターさん!く、くさい!なんかくさいです!」


「ベエエエエエ!!」


 **しばらくお待ちください**


 この文言を最後に、放送は終了した。



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