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33話 深淵よりいずる闇の落胤


 切り札のひとつ、海のメダルを握りしめる。


(これが使えるのは一度きり……)


「シンプルに問おう…お前は、もっと強くなりたいか?」


「ふわ…ふわ!!」


 ケサランパサランはやる気に溢れており、目から血管が浮き出るほど血走らせていた。


「そうか…」


 普通に考えれば、今回獲得したポイントで強いキャラクターを新たに召喚し、メダルはそれに使うべきだろう。それが最適解


 攻略だけを考えれば。


(でも、いままで頑張って尽くしてきてくれたのを無視して、生まれながらにして強いキャラクターにだけ、チャンスと報酬を与えるってどうなんだ。それはなんだか嫌なんだよな……そんなことをしたら、こいつの期待と努力を裏切ることになる)


 自分と重ねて見ている。と言われればそれまで。だが…


 弱いキャラクターは生まれながらにして弱く、どこまでいっても強いキャラクターを召喚するまでのお膳立てであり、その間に合わせにしかなり得ない。そんな当たり前がまかり通ってしまうのが、なんだか違和感だし、嫌だ。


 もしチャンスが等しく与えられるのなら、小さい体で自分よりも大きく強い、勝ち筋の不確かな相手に立ち向かったこいつにこそ相応しい。言葉だけのねぎらいで終わらせたくないというのもある。


 メダルの使いどころとしては、感情優先な時点でゲーマー素人丸出しだが


 これもまたひとつの『選択』と言えるのではないだろうか。


(ずっと『既定路線』に縛られた道なんて、楽しくないよな。……俺が『選択』しなきゃ)


 もっと言えば、知的好奇心を満たしたい感情が衝動的に湧き上がってくるのを止められない。


(生み出されたときから優劣が決まるなら、ゲームの世界だからこそ、それを覆してみたい)


 メダルを一点に見つめ、自分の気持ちを確かめていると、マグロのおっちゃんがちょっかいを入れてくる。


「マスターはんや、そないなキラキラ一個で悩むならいっそ、おっちゃんに使うっていう手もアリやで?」


 俺はマグロの言葉をさらっと流し、ケサランパサランと向き合った。


「決めた。ケセパサ、お前はもっと強くなるチャンスを受け取るべきだ!」


「ちょ、無視かいな!?ちょっとくらい反応してくれても――」


 ふわふわの白い体にメダルをそっと押し当てると、まるで魔法をかけられたように、体全体がまばゆい光に包まれた!


「ふ…ふわぁ~~!」


「う、まぶしい!?」


「お、おいい、無視はアカンやろ!?」


 みるみる内に、白い毛玉の体は大きくなっていき、不確かな形状が定まっていく。


 やがて、神々しかった輝きは黒く染まり、おどろおどろしい雰囲気があたりに漂う。


「な、なんや…この空気は…マスター、何したん」


 マグロのおっちゃんがおびえ始めた。


「い、いや……俺はメダル使ったこと以外、何もしていないぞ…?」


「んなアホな…それでこんな不気味なるんか…」


 この空気感は、なんだかハゲを召喚したときやイレーネのクラスチェンジを受けた時と近い気がする。


(俺の称号には関わるものが悪の属性になりやすいと書かれていたような、その影響だろうか?…まさかだよな?)


 黒いモヤが霧散すると、完全にケセランパセランの姿が消えた。だが、不穏な空気だけはその場に淀んでいる。


「ま、マスター…わし、ちょっと用事を思い出した。ということでここから逃げたいんやけども。というより白い毛玉はどこいったん…?」


 ゴゴゴゴ…


 呼び声に呼応するように地が揺れる。


「なんだ…?地面一帯が黒くなっている…?」


 地面に亀裂が生まれ、バミューダトライアングルを思わせる三角形の深淵が浮かび上がった。底知れぬ闇を抱えて次第に広がっていく…


 地中深くで何かが身じろぎしたかのような予兆的な揺れが起き、地面が脈をうつようにうねると、やがて冒涜的な球体が浮かび上がったのだ。


「これはアカン…」


 球体は直径数メートルはありそうなほど大きく、表面は無数の蠢く蛇で覆われていた。海に生息しているような危険色と猛毒を持つような不気味なタイプもいれば、見たことのない種類の蛇も混在している。


 時折、球体の中央部からは大きな眼球が蛇の合間から見え隠れしている。眼球の水晶体の色は一定ではなく、規則正しく円を描き、動き続ける模様がいくつも浮かび上がっては消えている。あの目をずっと見ていると、なぜだか気が触れそうだ。


 眼球から時折落ちる雫は粘性が高く、地面に触れるとジュっと音を立てて煙をつくった。


 どう見ても化け物である。


 音もなく浮かび上がった眼球の悪魔は、しばらく虚空を見つめていたがやがて俺と目があう。


「お前は……ケセパサ、なのか?」


 マグロのおっちゃんが声を震わせ、ヒレで顔を隠した。


「アカンアカン…こいつは、メドゥーサ・ボールや…!!しかも、ユニーク種やで!」


__________________


ピコン!

__________________


SYSTEM: unknown error ...

SYSTEM: unknown error ...


SYSTEM: reboot


SYSTEM: 個体名 ケセランパセランの進化が完了…


【仲間】

[ステータス]

[ NAME: ケセランパサラン(命名可能)]

メダル:使用済み

[クラス: 深淵のメドゥーサ・ボール ]

[ LV: 2→8 ] < EXP: □□□□□□□□□□ 0/100 >


[ HP: 400 / 400 ] →300up!

[ MP: 550 / 550 ]→300up!

[ STR: 1→1 ]

[ DEF: 1→1 ]

[ AGI: 5→25 ]

[ INT: 20→30 ]

[ LUK: 20→20 ]


<スキル>

New :

【狂気の魔眼】

※相手を狂気状態に陥らせる。30秒に一度だけ使用でき、他の魔眼と併用できる。狂気に達した相手は、10秒間は自らを傷つけようとする。難しい場合は一番近い相手を襲う。もし解除までに誰も傷つかなかった場合、この状態異常は10秒間ずつ延長され続ける。


New :

【石化の魔眼】

※相手を石化させる。メドゥーサ・ボールは秒数制限なく使用できるが、MPは消費し続ける。石化は通常の方法では治療できない。ただし、スキルの途中で視線を障害物などで切られると石化の進行は止まる。他の魔眼と併用できる。


【麻痺の魔眼】

※相手を10秒ほど麻痺させる。30秒に一度だけ使用できるが、既に同様のスキルが使用されていた場合、30秒経過まではこの効果は対象外となる。


<クラス特性>

・相手を麻痺させること以外、特に脅威とはならない『はずだった』モンスター。蛇の毒に加え、魔眼と呼ばれる魔力がこもった瞳を攻撃手段にする。通常の生物とは異なるルーツを持ち、謎が多い。

 直接的な攻撃手段に乏しいが、攻撃のすべてに状態異常を持ち、対策するのが難しい技が多く、集団戦に強い。



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