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30話 ケセパサの出番


 ゲーム内時間で1日が経過しようかという所、来襲者の二人組は飽きもせず、休憩を挟んでは今も歯車を回し続けていた。


 二人組の内、小柄な方は海通路内で足が地につかないためか、入り口まで戻って野営や見張りを行っており、ハンマー男の方は武具を脱ぎ捨てて、歯車を回し続ける係を担当しているようだ。


 俺たちはその間、マグロのおっちゃん、ケセパサと一緒にオーブ部屋にいる。そのまま出ていくこともできないので、やることがないのが悩みだ。


 来襲者の様子をオーブを通し、ぼんやりと眺めているとマグロのおっちゃんがイライラした様子で口をパクつかせる。


「あいつら、ほんまに懲りへんなぁ。どんだけ歯車回しよんねん。ワシでも解けへんかったギミックやのに、ええ加減諦めたらどうなんって。もう1日経過するで?なぁマスター、この水槽から出してくれへんか?もういっそのこと、ワシが勝負つけたる!」


 たしかに暇である。俺たちが想定していた以上に来襲者とはしつこい存在なのかもしれない。


 人の観察は好きなので、おっちゃんのトークを流しつつ1~2時間狭い部屋で過ごす程度なら全く苦にはならないが、これが長時間となるとさすがにつらい。


 ギミックに時間をかけてもらうこと自体は問題に感じていないが、ここまで粘られるのは予想外だった。あれは彼らの寿命をすべて使っても回しきれるものじゃないほど、解除に時間がかかる仕組みなのだが、こちらも何もできないというのは割とまずい。


 ちなみにイベント期間は1ヶ月である。


「今、お前を通路に放ったら漏れなく奴らの晩飯になるだろう。だがまぁ…お前の言いたいこともわかるよ。このギミック、侵入を防ぐって意味では優秀だが、敵を自陣にずっと留めてしまうっていうデメリットがあるからな…。かと言って、何もせずにずっとここで奴らが滞在するのも困るんだが……」


「せやろ?なんか手はないんか?」


「そうだなぁ…」


 マグロのおっちゃんたちと遊べる暇つぶし道具を1pで買ったため、残るポイントはほぼ0、そろそろ来襲者到着から24時間経過するため、ルール通りならポイントが増える頃合いだ。


 "ピロン!"


『24時間経過のため、成績に応じてポイントが支給されます!ご確認ください!』


「おや?これは…」


 通知音と共に、ダンジョンで使用できるポイントが増加しているのが確認できた。


「なんや!ポイントが入ったんか!?」


「そのようだ。」


 "支給額:100p"


「だが、なんだ…?救済措置にしては意外と多いな…?こんなもんか?……まぁいいか。さっそくダンジョンの拡張と対策をっと…あれ?」


 "ブブー"


 "来襲者がダンジョン内に存在します"


 エラーメッセージが出て、ダンジョンの拡張ができなかった。


「あ、忘れてた。そういえばルールに書いてあったな。たしか…『ダンジョンの構造は来襲者の非侵入時に限り変更可能』だったか…」


「マスター、どうすんねん!」


 ダンジョンの拡張を優先するため、ポイントの使用はできる限り控えたかったが、背に腹は代えられない。


「仕方ない。何匹か戦えるモンスターを呼び出して追い払おう。さすがにモンスターが居る状況で歯車を回し続けるほど奴らも図太くは無いだろう。いや、そうであってくれ…」


「ったく、頭が回るんだか回らんだかわからん成り行きやな!歯車さんはよー回っとるのに!がはは!」


「うるせぇよ。」


 マグロのおっちゃんに背を向け、召喚するモンスターを吟味していると、ケセパサが近づいてきた。


「ふわ…ふわ!」


「ケセパサ?どうした?」


 俺の視線を受けた白いもふもふは、オーブ部屋唯一の出口に体当たりをしてみせる。


 どうやら、戦いたいと言っているように見えた。


「もしかして奴らと一戦交える気か?」


「ふわ!」


 肯定を示すように一度だけ大きく縦に揺れ動くと、目をキリっとさせる。


「ふわわ!」


「お前はダメだ。単体戦闘に向いてない性能だし、倒されてロストしたら悲しいじゃないか!」


「……ふわぁ!!」


 ケセパサは否定の意を表すが如く、体にバリバリとエネルギーを蓄え始めた。戦わせないと俺を麻痺させるよ!とでも言いたいのだろうか。


「っく…わかった。わかったからビリビリはやめろ。」


「ふわわ!!」


「マスター、なんかそいつにだけ甘くない?ワシの気のせいか?」


「……気のせいだ。」


 白いふわふわは、喜びを示すように小刻みに震えている。


(だって、かわいいじゃないか!おっちゃんと違って!!)


 マグロのおっちゃんは白い目でこちらを見ている。


 俺もマグロのおっちゃんを嫌そうに見つめ返した。


「なんや、その目は?」


「別に……コホン。」


 しばらくマグロのおっちゃんから冷たい目線を浴びせられたが、気を取り直して…


「ケセパサ、戦いに出るのは許可してもいい。ただし、条件が二つある。お前を失わないために、俺と契約を行ってもらうこと。そして、必ず他のモンスターと連携して戦ってもらうこと。この二つを守ってくれるなら、戦闘に出してもいい。それでもいいか?」


「ふわぁ!」


 俺の言葉に即頷くと、ケセパサは白くふわついた体を俺にこすりつけてきた。


「よし、ケセパサ隊を作り、奴らを追い払おう!」



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