6話 限界
玲奈ちゃんと私は背中合わせで襲ってくるハーピィーたちを一匹ずつ撃破していくけど、マシンガンやサーベルの攻撃だけじゃ応戦に限界が来てしまう。空は黒い影で埋め尽くされてて、羽音が耳に響く。私のカイラスは汗で熱くて、モニターに映るハーピィーの数が減らない。
「キリがないじゃない!」
『救難信号を出しましょう!!』
玲奈ちゃんがそう提案してきた。彼女のカイラスも私と同じように緑の体液で汚れてて、少し動きが鈍ってる。確かに、このまま戦ってもジリ貧だ。だったら……
「いいわ! 救難信号を出しましょう!」
私はすぐに無線で巴さんに連絡を取ることにした。カイラスの操縦席でボタンを押すと、ピッて音がして通信が繋がる。
『どうした!? さくら』
「私と玲奈ちゃん! ハーピィーの群れに包囲されちゃってます!! 助けてください!」
私がそう言うと、巴さんは少し困ったような声で答えたのだ。
『そうか……残念なお知らせだが、救難信号を出しているのは君たちだけではない。夢華と凛花の二人が救難信号を出して、それぞれ菜月と琥珀が救出に向かっている最中で、ひかりも今しがた救難信号を出したばかりなんだ。君たちは二人いるから、もうしばらく耐えてくれ!! ……だが、ハーピィーにやられたら承知しないからな』
巴さんはそう言って通信を切った。私たちはハーピィーの群れに囲まれて、既に絶体絶命の状態だ。空を見上げると、どこまでも黒い羽が広がってて、逃げ道なんて見えない。そして、そんなときさらに最悪な事態が起こる。
「キシャァアア!」
一体のハーピィーが私に向かって突っ込んできた。鋭い爪がギラッと光って、目の前に迫ってくる。
「仕方ない! カイラスの出力を限界まであげて突っ切るよ! 玲奈ちゃん! 行ける!?」
『はい!!』
私と玲奈ちゃんはカイラスの出力を最大まで上げ、一気に飛び上がった。ブースターがゴォォって唸って、熱い風が顔に当たる。私たちはハーピィーの攻撃をかいくぐりながら、群れの中を突っ切っていく。モニターに映るハーピィーが次々横を通り過ぎて、心臓がバクバクしてる。でも、その途中で一体のハーピィーが私に向かって飛びかかってきたのだ。
「キシャァアア!!」
「きゃぁああ!」
私は避けきれずにハーピィーに捕まってしまった。爪がカイラスにガリッと食い込んで、モニターに赤い警告が点滅する。
『さくらさん! 今助けます!』
そう言って玲奈ちゃんも私に襲いかかってくるハーピィーに斬りかかろうとするけど、玲奈ちゃんのカイラスから黒い煙がモクモク出始めた。彼女のカイラスがガタガタ揺れる。
「え!? なんで……」
私はすぐにハーピィーの爪を叩き斬り、カイラスの状態を見るけど、やっぱり煙は出てるし、ブースターも出力が低下してる。どうやら玲奈ちゃんのカイラスが故障してしまったみたいだ。私のカイラスもさっきの衝撃で少しガタついてるけど、まだ動ける。
「玲奈ちゃん、聞こえる!?」
私が音声通信を玲奈ちゃんに繋げると、そこから悲惨な声が響き渡った。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あづい゛あ゛あ゛あ゛あ゛あづいよ゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛』
「玲奈ちゃん!? どうしたの!?」
私はすぐにハーピィーの群れを突っ切って、玲奈ちゃんのカイラスに近づこうとした。サーベルを握り直して、ブースターを噴かす。でも、そんなとき私の前に一体のハーピィーが現れたのだ。
「キシャァアア!」
そのハーピィーは私に向かって爪を振り下ろすけど、私はそれを紙一重で回避する。風圧でカイラスが揺れて、心臓がドキッとした。そして、そのまま一気に上昇して上空へ逃げると、そこには大量のハーピィーがいた。空が黒い影で埋め尽くされてて、どこを見ても敵だらけ。
「嘘……なんで……」
私が呟くと、巴さんからの通信が入った。
『ハーピィーは鳴き声で共鳴し、仲間を呼び寄せるみたいだ! とにかく倒せ!!』
「そんなことより玲奈ちゃんが!!」
『玲奈君がどうした?』
「玲奈ちゃんのカイラスが故障したの! 黒い煙が!!」
私がそう言うと、巴さんは少し考えてからこう言ったのだ。
『そうか……さくら君、玲奈君を置いて戦線を離脱しなさい。今の君にできる事は、ない』
巴さんはそう言うと通信を切ったのだ。
「そんな……玲奈ちゃんを見捨てろって言うの!!」
私は怒りに任せてハーピィーの群れに向かって飛んでいくけど、攻撃は避けられるわ、反撃を食らうわで状況は悪化していく。サーベルを振ってもハーピィーがひらりとかわして、爪や触手がカイラスに当たる。
「キシャァアア!」
そして、ついにハーピィーの爪が私のブースターを破壊した。バチバチって火花が散って、モニターに警告が点滅。
「きゃぁ!!」
私はそのまま真っ逆さまに落下しそうになるけど、壊されていないブースターでうまくバランスを取って体勢を立て直す。でも、今の私じゃ上手に移動できない。カイラスがふらふらして、地面が近づいてくる。
「だったら、カウンターよ」
私はここからまともに動けない。だけどまだサーベルは振れる。だったらこのままハーピィーの攻撃を躱して斬り付けるしかない。私はカイラスを安定させて、サーベルを構えた。
そして、ハーピィーが飛び込んできたところ、私はバランスをわざと崩し、ハーピィーの突進を躱す。サーベルが柔らかい腹部にズバッと通った。
「よし!」
そして私はそのサーベルでハーピィーの体を切り捨て、ハーピィーは地面にドサッと落下していった。緑の体液が飛び散って、私のカイラスにも少し付く。
カウンターでの斬り付けは上手くいった。サーベルの扱いだけは他の人よりうまい自信はあった。それでもマシンガンが扱えた方が戦いやすいのは間違いない。だけど、私はこのサーベルで戦う事を決めたのだ。訓練で何度も握ったこの武器なら、私にもできるって信じてる。
「玲奈ちゃん、今行くからね」
私は玲奈ちゃんの元に向かおうとしたけど、上手く飛べない。ブースターがガタガタして、黒い煙が少し出てる。救難信号を飛ばしても誰も来てくれない。そう思っていた時だった。
『さくら!!!』
『さくらさん!!!』
私の元に飛んできたのは、菜月と凛花の二人だった。彼女たちのカイラスが空を切り裂いて、私の横に降りてくる。
「菜月! 凛花ちゃん!」
私がそう言うと、二人は私の元にやってくる。菜月のカイラスは緑の体液で汚れてて、凛花ちゃんの目は鋭い。私はすぐに二人に事情を説明する。
「早く! 玲奈ちゃんを助けて!!」
私が叫び、その方向を指さす。黒い煙がモクモク上がってて、玲奈ちゃんの位置がわかる。二人は私の壊れたブースターを見てこくりと頷き、黒煙の方へ向かって行った。
でも、二人が現場に向かって救助する前に、黒煙からドカーンって轟音が鳴り響き、玲奈ちゃんのカイラスが爆発した。オレンジの炎が空に広がって、衝撃波が私のカイラスを揺らす。
「玲奈ちゃん!!」
私が叫ぶと、煙の中からハーピィーの死骸と共に、ボロボロになった玲奈ちゃんが着用していたカイラスの部品が崩れ落ちてきた。金属の破片が地面にガシャンって落ちて、緑と赤の液体が混ざってる。
「玲奈、ちゃん?」
私はその光景を理解するのに、とても時間がかかったような気がする。頭が真っ白になって、目の前がぼやける。玲奈ちゃんのカイラスが燃えてて、もう動かない。
『さくら! 離脱するよ!!』
菜月の声が通信で響くけど、私にはそれが遠くに聞こえた。涙が溢れてきて、サーベルを握る手が震える。ハーピィーの羽音がまた近づいてくるけど、私は動けない。
『さくらさん、しっかりしてください! まだ戦いは終わってません!』
凛花ちゃんの声が鋭く響く。彼女のカイラスが私の前でサーベルを構えて、ハーピィーを睨んでる。私は目を擦って、立ち上がろうとする。
「玲奈ちゃん……ごめん、私……」
私が呟くと、目の前に巨大なハーピィーが現れた。一回り大きくて、触手が何本も伸びてる。さっきのよりずっと強そうで、空気が重い。
「キシャァアア!!」
そのハーピィーが私たちに向かって突っ込んできた。菜月と凛花ちゃんが迎撃態勢を取るけど、私はまだ動けない。玲奈ちゃんの爆発が頭から離れなくて、体が固まる。
名前: 神山凛花
年齢: 17歳
外見: 小柄、金髪ツインテール
性格: 自信家、強気、リーダー気質、冷静な戦闘判断
目的: ハーピィーを倒し、自分の力を戦場で証明する