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第五話 連絡先交換

「あら、おはよう、新庄くん」

「おはよう」


 柚野がいつも通りの時間に行くと月城はいつも通りの時間に来ていたようで座って読書をしていた。

 そして柚野が来ると本をパタンと閉じて柚野の方を向いた。


「前に新庄くん、ホラーゲームやってるって言ってたでしょ? それでね、私学校から帰った後、広告でそれっぽいホラーゲームがあるから気になってやってみたのよ......」


 月城はそう言うと少し顔を青くした。よっぽど怖かったようだ。


「なんていうかホラーゲームなんだ?」

「ゾンゾンハウス2よ。急にゾンビ出てくるから何度もコントローラーを投げたことか......」

「あー、あれは名作だよな。ドッキリ要素強めで面白いし、名前の割にホラー要素も強いからスリリングな体験ができて良いんだよな」


 (月城もゾンゾンハウス2始めたのか)


 柚野はあまり恋愛ゲーム以外やらない方なのだが、ゾンゾンハウス2は友達の勧められてクリアしていた。

 結局ゾンゾンハウスシリーズはそれ以来やっていないのだが、時間がある時にやりたいと思えるようなゲームだった。


「序盤のボス戦難しくないかしら? 私まだ勝てていないのだけど......」

「あそこはちょっとテクニックいるからな......あ、良かったら俺が教えてあげようか?」


 (おや? これは連絡先を交換できるチャンスでは?)


 ゾンゾンハウスは協力プレイが可能だ。だからそれを口実に連絡先が交換できるかもしれない。


「頼んでも良いかしら」

「もちろん。じゃあとりあえず連絡先を交換しよっか。その方が便利だし」

「......!? え、ええ......そうね」


 月城はバッグからスマホを取り出して画面を開き、柚野に見せた。

 

 (これでちょっとずつ近づいていけば友達にはなれるか。やっぱり隣の席って有利だな)


「さんきゅ、これからよろしく」

「あ、ええ......よろしく」


 完全に今の柚野は仕事モードである。

 どうしたら月城と友達になれるか思考を巡らせている。


 (ちょっと今日は依頼あんまりこなせないかもな)


「月城もゲームやるんだな。勉強しかしてないと正直思ってた」

「あなた私のことなんだと思ってるのよ、そこまで真面目じゃないわ」

「んー、休日は何してるんだ?」

「休日? 休日はそうね、朝起きてランニングに行って、帰ったら12時ぐらいまで勉強しているわ。それでご飯食べて休憩して......13時ぐらいからまた勉強してるわね。用事がある時は別だけれど、基本的には勉強してるわね」

「......やっぱり勉強熱心じゃねえか」

「た、たしかに言われてみれば......そ、そうね」


 どうやら勉強しているという自覚が少ないらしい。

 多分月城は勉強が趣味になっているのである。

 (好きなことを好きなだけやることは努力の範疇に入らないって誰かが言ってたしそういうことなのか......)


「けれど暇だからよ。そこまで根気を詰めてやっていないわ。そういう新庄くんは休日をどう過ごしてるの?」


 (あ、やべ、最近忙しいし、バイトしかしてね~。話題作りしておけば良かった......)


 バイトのことを月城には言えない。

 ゲームをやっていると言っても詳しく聞かれてしまっては答えることができない。


 柚野は思い返すふりをして特に何も聞かれないであろう返答を考えた。

 すると、一つの答えが出た。


「俺は......友達と電話したりしてるかな。ゲームもたまにやるけど飽き性だから最近は友達と話したりしてるな」

「ふーん、そうなのね」


 柚野の思惑通り、それ以上何も聞かれることはなく、しばらくして担任が来て朝のホームルームが始まった。


 ***


『たまたま同じゲームをやっていたということで相手の方と色々話せました。それに加えて今日連絡先を交換できました!』


 帰宅後。


 柚野が月城と連絡先を交換したはいいものの、何と送ろうか迷っているとパソコンにメッセージが飛んできた。

 それを読んで柚野は薄々感じていた違和感がさらに強くなることとなった。


 (......いや、あまりにも偶然が多すぎないか? ......いや、流石に気のせいか。とりあえず連絡先交換までいけたのか)


 あまりにも状況が一致しすぎている。しかしそれは考えすぎだろう。

 月城が『告白・恋愛代行』を知っている可能性は低い。


『それで相手の方に何と送ればいいのかわからなくて......』


 柚野はすぐに脳裏によぎった考えを振り払い、メッセージを考えることに集中することにした。

 (まあ、この辺はあるあるだよな......好きな子関係なく異性と連絡を取るのが苦手な学生多いし)


『連絡先交換できたんですね! 送るメッセージは無難によろしくで良いと思いますよ。もう少し付け加えたいなら同じゲームの話題をするのはどうでしょう? そのゲームを一緒にできたら良しですね』


 メールを送った直後、携帯の方に月城からメッセージが飛んできた。


『よろしく、新庄くん』


 (いやいや、こんな偶然ある!?)


「依頼主がマドンナ様......? まさか......な?」


 そんなのあり得るはずがないと、偶然だと思うことにした。

 だってそうしなければ月城の好きな相手は柚野ということになるのだから。

 月城が柚野のことを好きになる理由がない。


『早速だけれどゲームは何時からやる?』

『よろしく、俺は何時でも良い』

『じゃあ19時ぐらいでどうかしら』

『ん、わかった』


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