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第三話 すれ違い

『案の定登校時間を遅らせたらタイミングぴったりで一緒に色々話せました!』


 夕ご飯を食べた後、パソコンを開いて見てみれば昨日の方から成功のメッセージが届いていた。

 

 (よし、まずは第一段階クリア。もう少ししたらハードル上げてくか)


 柚野は暑すぎずぬるすぎないちょうど良い温度のお茶を口に含んでからメッセージを返した。


『良いですね。ではその調子で何回か登校時間を遅らせて話してください』

『わかりました。後一つ聞きたいのですが、話すコツみたいなものってありますか? 意識してしまって会話が不自然になってしまう時があるのですが......』

『なるほど。でしたら目の前にある物事を話題に触れてみてはどうでしょうか? 将来のことなんかについてもボソって呟いて言ってみたら相手が拾ってくれるかもしれません。あとは共感です。相手の話はしっかり聞いて共感してあげましょう』

『わかりました! 明日やってみます!』


 (焦らず攻める。これが大事。まずは友達からだな)


 このバイトは本当に楽しい。

 成長過程を間近で見られるし依頼主が関係値0から付き合うまでの過程を見れるのが醍醐味だ。


 思わず柚野は、にやけてしまっていた。

 この依頼主が頑張るのなら柚野はそれを支える。


 このペースで少しずつ距離を縮めてもらおう。

 

 ただ、恋のライバルがいるとなれば少し戦略を変える必要がある。

 柚野はメッセージを打ち、聞いてみることにした。


『相手の方が誰かの女子と仲が良い、などはありますか?』

『えーっと、分からないです......ですがクラスにいる時は女子とあまり話していないと思います』

『ありがとうございます。では引き続き頑張ってください』


 (うん、まあ大丈夫かな。ゆっくりとやっていこう)


 柚野は一息つき、パソコンを閉じた。


「そういや月城も今日来るの遅くて俺が昨日送ったメッセージ通りのことを俺が月城に言ってたな......ん、待てよ?」


 月城と柚野の距離感は0だ。そして住み世界も違う。

 ただ、もしかしたら良い経験になるかもしれないとも柚野は考えた。


 (この依頼主と相手の関係値は0。それは俺と月城も一緒。だから俺が月城と友達になるために試行錯誤しながらやったらこの依頼主にもっと的確なアドバイスができるかも......?)

 

 柚野はそう思い立ち、月城と友達になることに決めた。

 今までのバイトの経験を現実に出す時である。

 

 (よし、そうと決まれば俺は相手の登校時間に合わせないとな。そのためにも早く寝ないと)


 時刻は21時過ぎ。柚野は部屋の電気を消して眠りに落ちた。


 ***


「あれ......いつもこれくらいの時間じゃなかったっけ?」


 少し早く学校に着き教室に入ったものの、柚野以外の生徒は月城どころか誰もいない状態だった。

 早く来すぎたのだろうか。野球部のかけ声だけがグラウンドから聞こえてくる。

 

 しかし、もし2番目に月城が来たなら教室で2人きりになるということなのでそれはそれで話すことができる。


 そう思い、自分の席に座ってスマホをいじって待つことにしたのだが、どうやら早寝早起きした甲斐はなかったようだ。


「おはようございまーす」


 謎の発音と共にある人物が教室に入ってきた。

 髪はボッサボサなのだが無駄に容姿が整っている、そしておちょけで天然。


 2番目に来たのは春下である。


「あ、柚野じゃん、おはよ、1番乗りかと思ったのに今日は早いんだな~」

「......まあな。昨日は流石に早く寝た」

「って、柚野が先に来てマドンナ様はまだ来てないのな」

「やっぱりいつもこれくらいの時間に登校してくるのか?」

「おう、マドンナ様が1番で俺が2番目」


 (今日が少し特別遅いだけなのか? でも昨日もだったしな)


 色々考え込んでいると、春下が何やら何かを察した顔でニヤニヤしてこちらを見ていた。


「ん、どうした?」

「なるほど、そういうことか、柚野がまさかマドンナ様のこと好きだったとは」

「......どうしてそうなった」

「あれだろ? マドンナ様と同じ登校時間に登校して廊下で会って話す口実を作る的な」

「いや、普通に早起きしただけだ」

「ちぇっ、まあそうか。お前がマドンナ様のことを好きだとは思えない」


 (ま、半分は合ってるんですけどね......妙に鋭い所あるんだよな)


 柚野が月城のことを好きだと勘違いされると、色々とからかわれる可能性があるため否定しなければならない。


「そういえば春下は月城と教室で2人きりのことがあるんだろ? そういう時どうなんだ?」

「どうなんだって言われても......普通に俺にとっては気まずい。話せねえし、話しかけれねえし、当たり前なんだけど話しかけられねえし」

「ヘタレ」

「うるさい......でもマドンナ様って彼氏いるらしいぜ」

「ん? そうなのか? でも月城と特別仲が良い異性あんまり見たことないぞ」

「他校の生徒らしい。何でも超絶イケメンなんだとか」

「......なるほど。まあそりゃそうか」


 そもそもあれだけ美人で賢いし運動もできるのに彼氏の1人いないと言われた方がおかしいくらいだ。

 しかし、計画に支障はない。友達、もしくはそれに近しい関係になるだけだ。


 ***


「すいません、遅れました!」


 朝のホームルームの時間。担任が出席をとっていると月城がやってきた。

 休みなのかと思っていたのだがどうやら単なる遅刻らしい。


 一瞬月城と目が合ったが月城はすぐに担任の方に目を向けた。


 (にしても珍しいな、月城が遅刻なんて)


「珍しいな。月城が遅刻するなんて。何かあったのか?」


 先生だけではなく他のクラスメイトも同じように思っていた。


「いえ、単なる寝坊です」

「そうか、次からは気をつけろよ」

「はい、すいません......」


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