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magical dose -魔法少女は破滅の道を歩む-  作者: 伊草


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鳴り響く遠吠え………………………9mg

 暗闇に3つの首が浮かんでいる。

 気を狂わせた犬の首だ。

 それが一つの身体に二又に繋がる。

 この魔獣の名はケルベロス。

 三つ首を生やした化物だ。

 それぞれの首が頭のネジが何本も外れたように唸り、または吠える。


 これに対峙するは私達魔法少女。

 それぞれの武器、

 私は充電器を、

 海桜はハサミを、

 梨乃は弓を、

 玲奈は注射器を、

 蒼はカッターナイフを、

 絆は赤い糸を、

 桃香はリモコンを、

 構えて臨戦態勢をとる。


 まず先に飛び出したのは蒼。

 脚の長さ程あるカッターナイフを引きずりながらケルベロスとの距離を詰めていく。


 蒼に続くは海桜。

 蒼の少し後方から刺突する構えで突き進んでいく。


 蒼の斬撃と海桜の刺突はケルベロスに襲いかかる。

 しかし、二人の初撃は惜しくも硬い爪や歯で弾かれる。


 その後方──二人を前衛とするなら、中衛の位置から玲奈が注射器を抱え中身の物質を打ち込むタイミングを測っていて、絆も赤い糸を赤いロープに変えて時機を見計らっている。


 そして、後衛には私、梨乃、桃香3人で固まって居る。

 そのうち梨乃は弓で前衛の二人の援護射撃をしているが、私と桃香の二人は戦闘を眺めているだけだ。


 いや、ただ眺めているだけなのは私だけかもしれない。

 桃香は魔獣の動きを見切り、的確な指示を飛ばしている。

 桃香の武器はリモコン。

 相手も味方も自分も全ての時間を停止させている間、周りを見渡すことができる能力があるらしい。

 それによって、自分だけ止めた瞬間の状況を読み取ることができ、的確に指示をすることができるようだ。

 桃香は戦闘における司令官的立ち位置なのだという。


 そうなると、私だけがこの戦場で何もしていない。

 私は何の役にも立っていない。

 何もできない。

 海桜はいきなりで前線を張れるほど、適応しているのに。

 私は何もできない。


 何かしたいのに何もできない

 とジレンマを抱えていると、桃香は指示を出す傍ら教えてくれた。


 魔法少女にはポジションに適正がある。

 蒼や海桜のように前衛が得意なタイプもいれば、梨乃みたいに後衛が得意なタイプもいる。

 他にもいろんなポジションに適正をもった魔法少女がいる。


「紡希はサポートが得意なタイプじゃないかな。

 今はまだだけど、覚醒するときが来たら、きっと自分ができることを見つけられるよ。

 私も覚醒前はなにかできるような力はなかったからね」


 覚醒することに目指せば、皆の役に立てるんだね。

 でも、覚醒ってなんだろう。


 その疑問に桃香が答える。

「覚醒ってね、武器が影響を及ぼす範囲を広げること。

 ようは武器が強くなるんだ。

 最初から戦えるような武器の人はなかなか覚醒しないけど、使いにくい武器だったり、使い物にならない武器の人は覚醒しやすいんだ。

 それと、覚醒するタイミングは分からないってことだけ。」


 なるほど。

 私の武器、充電器が強くなるってことか。

 どうやったら覚醒するのかわからないけど、頑張ってみよう。


 桃香と話していると、梨乃が弓を射るのをやめて近づいてきた。


「少し…魔力を使いすぎましたわ」


 魔力って?


「魔力というのは魔法少女として活動するためのエネルギーというようなものですの。

 主に魔法少女姿の維持や、武器の生成に魔力が消費されますわね。

 わたくしの場合、矢を飛ばすのでその分魔力消費が激しいんですの。

 魔力を消耗しきると失神することもありますし、大量に消費すれば、その分疲れを感じますのよ。

 でも安心なさって。

 時間が立つと回復しますわ。」


 魔法少女姿は魔力を使って。

 それで、魔力が回復するにはやすめばいいのか。



 …



 この時、ケルベロスに詰めの一手を差そうとしていた。


 ケルベロスの体勢を前衛の二人が切り崩す。

 それを絆は見逃さなかった。

 絆の赤いロープはケルベロスの左足を捉え自由を奪った。

 拘束された左足に玲奈が注射器を打ち込んだ。

 中身は玲奈の魔力が込められた麻痺薬だ。

 ケルベロスの全身に巡り、動きが鈍る。

 動きが鈍れば、動きを捉えるのは容易い。


 海桜は魔獣の右首を両刃で一点に挟み込み、引き裂く。

 魔獣の頭部は血飛沫を飛ばして遙か後方に飛ばされた。


 一方、蒼のカッターナイフは魔獣の左首を素早くぶった斬る。

 あまりの速度に、断面は斬られたことに気づかないように血の一滴さえ落ちず、

 頭は重力に逆らわずにすとんとその場に落下する。


 残る首はあと一つだ。


 最後の首を落としに海桜と蒼が駆け、飛び上が……


「一時停止!!」


 桃香の叫びとともに時間は停止する。



 …


 ─桃香視点─


 桃香が時間を止めた理由。

 それは魔獣から妙な違和感を感じたからだ。

 なんともいいしれぬ違和感。

 言語化はできない些細な違和感。

 しかし、放っておくと惨事を引き起こす。

 そんな予感が頭から離れない。


 この違和感を拭いきれない以上、それを確かめないといけない。

 よし、時間を止めてみよう。


「一時停止!!」


 止まった時間の中、桃香の視覚と思考だけが機能する。


 違和感の原因は、左右の元々頭が生えていた場所にあった。


「左右の首が再生し始めている!?」


 違和感の正体はそれだ。


 時間を再生すると、

 隣に居る梨乃にすぐさま伝える。


「左右の首があった場所!射抜いて!」


 梨乃は何の返事もしない。

 急を要することであるのがわかっているから。

 そして、桃香を心の底から信頼しているからだ。


 日頃の弓術の訓練によって洗練された弓を引く所作。

 そこから放たれる一矢は右を射抜く。

 さらにもう一発、左を射抜く。


 魔獣の生えかけた首に矢がめり込み、血飛沫を上げ、

 そこから首が伸びてくるようなことはなくなった。


 二本の矢は首の再生を阻害することに成功したのだ。


 その隙に、最後に残された首はハサミとカッターナイフによって切り落とされた。



 …



 これによって星☆☆☆の魔獣、ケルベロスは討伐された。

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