マザーコア……………………………63mg
緑の管は上へ上へと続いている。
玲奈はそれを辿って階段を登り進める。
階段と言えど、四角柱の内側にへばりつくようなもので、要は螺旋階段の四角バージョンである。
踊り場に上がって次の踊り場を目指すことを繰り返す。
手摺のすぐ外は登り始めの地点までストンと落ちて、しばらく上って見下ろす度底が深くなっていく。それで大体の高さを感じ取れる。
この時点で二階か三階に相当する場所まで上がってきているはずだが、二階や三階の裏方の廊下に繋がる所はない。
すると、この螺旋階段は二階や三階に接続するためではなく、別の意図を持って作られたということになるのだが、そこに少しでも疑問を持てるような思考は玲奈には残っておらず、黙々と一段一段上に歩を進めるのみだった。
ある地点からついに底すら見えなくなった。
手摺から下を見下ろしても自分が現在いる場所の高度はすでに分からず、玲奈にはただ上に上がっているという感覚のみがある。
登り始めた時の記憶が遠い過去のようなものとなって、だんだん薄れ始める。
もしかすると登り始めたあの記憶は嘘なのではないか。
もしそうだとしたら、この階段の終着点すらもないのではないか。
長く登り続けて、おかしくなる感覚は過去にも未来にも階段を上る今のみが永遠に続くように感じさせて、始まりと終わりを亡き者にする。
しかし、この世の全ては無限ではなく有限。上を目指す玲奈の目に天井が見えた。
さらに上がると、天井は間近まで迫って、階段は終着点にたどり着く。
玲奈の目の前に見えたのは1枚の扉。
奥には部屋があると思われる。
緑の管は、階段の途中から合流した別の管と合わさり太くなっており、扉を貫通している。
扉の開閉を管が邪魔しているため、普通にノブを捻って開けることはまず不可能で、部屋に入るには少々強引な方法を取らないといけない。
玲奈は少し気が引けたが、緑の管を引き千切ることにした。
そのために何か便利なものはないかと周囲を捜索。すると、手ごろな鉄パイプを発見した。錆びて赤く変色しているが、問題ないとする。
両手で鉄パイプを握って緑の管を叩きつける。植物の茎のような見た目をしていたその管は数回たたいたところで千切れる。中からは何かよくわからない液体が出ていて、窓から差し込む月光の反射具合で、赤や青、黄、その他様々な色に見える。
毒々しい──。
あまりにも色鮮やかな液体に玲奈は危険を感じる。
コポコポと流れ出る謎の液体。それは足場から零れ、暗闇に垂れ落ちていく。
液体には触れないようにして、再度ドアノブに手をかける。
しかし、それでも開かない。
ごめんなさい──。
玲奈は頭の中で独り言をつぶやく。
もうどうなったっていいという思考の元、扉へ向かって体当たりする。すると、扉は蝶番と切り離され部屋の中に倒れ込む。扉の接合部は風化してもろくなっていたようだ。
思わぬ形で倒れ込んだため、腕をぶつけた。
痛みを感じる。しかし、部屋の中に見たものの強烈な見た目に痛みを忘れてしまった。
こじ開けて現れた部屋の内部には奇怪な物があった。
パイプの配線がむき出しの部屋の最奥に、赤い血肉が集められて丸くなった団子状の塊が存在している。それはまさに肉塊と呼ぶべきもの。今まで追ってきたものも含めて、複数の緑の管がこんがらがって絡み合った末、一つにまとまって肉塊に繋がれている。
肉塊は、溜まった液体の中で一瞬のみ響かせて濁った音を、一定間隔で鳴らす。そして、音にシンクロするように収縮と膨張を繰り返し、まるで心臓のように管へ何かを送り込んでいる。
それを視界にとらえた途端、玲奈は寒気を感じた。
生物の一器官に似たものが独立して動いている。その姿には嫌悪感を抱かせる。生物的だが、生物ではない。そういう差異が違和感を生んで嫌悪感に変容している。
寒気の後に感じたのは、臭い。これまでとめどなく感じていた臭いが相対した瞬間からさらに強くなった。それはゾンビからしていた腐臭をさらに凝縮したような強烈なもので、絶望で思考力を失っていたはずの玲奈の脳を強く刺激する。
脳に電気が走ったように感じられる強烈な刺激臭。これまでボーっとしていた玲奈の頭が目覚めた。
そして、察する。目の前のものにおそらくゾンビのコアがあろうことを。そこから、各ゾンビへ魔力が供給されているであろうことを。
これが、元凶──。
決して気分の良いものではない刺激ではあったが、おかげで玲奈は自分がやるべき事を見つけ出した。
それは現状では玲奈にしかできない事。
それは蒼の後ろでなく、蒼の隣にいるためにやらなければいけない事。
「私が! 私がやってやるんです!」
跳ねた気持ちで、体中が温まるを越して、熱くなるような感覚を覚える。
目線は下ではない。前方に向いて、標的に向けて。玲奈は己の武器、注射器を手にする。それも針でコアを破壊できないかという考え合ってのこと。
自身の考えに従い、ゾンビのコアがあると思われる肉塊内にその針を刺す。ぶよぶよとした表皮に突き刺さる瞬間から肉の反発を感じ、ニュクニュクと刺さっていく感覚がしている。その気持ち悪い感覚に耐えながら刺しこんでみるもコアの固い手ごたえはない。代わりに突き刺した穴から虹色の液体が垂れてくる。
刺すことを数度繰り返した。何度繰り返そうが、結果は変わらずコアに届くことはない。円状の穴が数か所残るだけで、それも再生力を前にして消えていく。
駄目──。
注射器では不可能だということを悟る。なんど刺したってコアの位置すらわからないのだから、破壊することなどさらに無理な事。
周囲を見て、他に使えそうなものを探す。
もしかしてこれでなら──。
折れた鉄パイプでコアの破壊を試みる。先端に液体状の魔力が付着したそれは先ほど管を破壊する時に使ったもの。それを肉塊目掛けて振るう。
「えいっ!」
肉塊は衝撃で凹むが、弾性を持って跳ね返す。しかし、肉塊に傷が付いた。折れて鋭くなっていた先端が表皮を引き裂いたらしい。液体状の魔力が流れ出る。
ただし、コアには全く届きそうもない。
これだけでは──。
やり方が正しくないと考え、別の方法を試す。が、コアに届くことすらない。
気持ちは高ぶっているが、目標を打ち破る手段がない。珍しくも行動的になった玲奈はその感情をどこへ打ち込めばいいかわからなくなる。
何か、ないでしょうか?
コアを打ち壊すよい自力策は──。
手にしている注射器は壊すのには向かない上、鉄パイプでは歯が立たない。自身の持つもの、周辺を探るが、肉塊の奥にあるであろうコアまで突破できるものはない。
目の前までたどり着いたのに、ここを打破する力は自分にはないのか。その気持ちで玲奈の心の中はいっぱいになる。精神的な主柱が自身になくて、仲間──特に蒼に建てた支柱のみで支えている自身の状況が嫌になる。
”蒼のように強くなんてなれない″
肉塊は自身の傷口を修復している。
この目の前のものが、全ゾンビの活動エネルギーを供給していることはわかっている。
この中にコアが存在していて壊せばすべて片が付くことはわかっている。
なのに、それができない。
あと一歩のところで最後にたどり着けない。むず痒い感情、と焦り。
ゾンビから逃げていた間も、身を隠していた間も、階段を上っている間も、停滞している今も、皆は戦っているはず。そういう想像がさらなる焦燥を生む。
私がここでやらなくてはいけないのに──。
やれることはやった──という感覚はない。まだ自分には何かできるのではないかというとっかかりで心がささくれている。自分の思考が完全に発揮されたという感覚もない。いつもならばこういう場面で何か解決策を提示できるのに、何故かできない。
蒼がいないからか。やはり自分は蒼に依存しないとだめなのか。考えが冷静ではない。考えても意味のないことばかり考えている。それを玲奈自身は認識している。が、マイナス方向の思考の波は留まるところを知らず、次第に大きく高さを増す。
私は、どうすればいいんでしょうか──。
停滞する玲奈に機能し続ける肉塊。そこへまたしても混乱の渦へ誘う事象が起きる。
「!?」
地の唸りをあげて響く音。それが僅かに。
玲奈はそれを知覚する──、鉄板の床に伝わった微振動をも。
倒れている鉄扉は鉄板床とでかち合う甲高い音を連続させている。
電気を与えられていない蛍光灯も天井からつり下がった先で揺れている。
何が起きたかは明らかではない。が、”何か”が起きたことは明らか。
玲奈は惑う。
それを理解するには情報が足りなさすぎる。
だが、この状況において何かが起きるとなればそれはゾンビに関連することであるに違いないという前提があった上で、誰かの身に何かが差し迫っていることを玲奈は考える。それは自身に向かうものか、他の仲間に向かうものか……この段階でははっきりとはわからない。
ただし、状況を鑑みる限り、最もゾンビの中枢に近いのは玲奈自身である。ゾンビはコアを破壊されれば終わりなのだから、コアを守る何らかの防御的措置を取るはず。ということは、
もう時間が……ありません──。
コアを壊さなければ終わらない。コアを壊さなければ止まらない。
振動が大きくなるにつれて、音の発生源が明瞭になり始める。
これまではぼんやり遠くというだけだったが、扉がもがれた部屋の出入り口の先にある階段──その下から反響してくるのが玲奈の耳に届いている。もうすでに”何か”はそこまで来ている。
時間が本当にないんです、早くしないと……、早くしないと──。
”何か”がさらに近づいてくる気配を感じている。
従って”何か”の音もさらに明瞭に。その正体は大勢の雑踏。大勢とは、ゾンビの集団。
玲奈は狭い個室の中で大勢のゾンビをやり過ごしたことを思い出す。
あのゾンビの集団が階段を上ってきているのでしょう──。
この部屋には扉はもうない。壊してしまった。
先ほどのように扉を閉めてやり過ごすことはもう不可能。かといって逃げ出すことも能わない。唯一の逃げ道である階段にはもうゾンビが押し寄せている故に。
玲奈は選択肢を一つだけしか考えだすことができない。コアを打ち砕く、ただそれしか。
早く、ほんとに早く、やらなくては、ここでやらなくては──。
されど、手段がない。手立てがない。方法がない。どうしようもない。そんなことを考えてもしょうがない。
玲奈は地の底へ押し込められて蓋をされるような気分を味わって、後方、出入口の奥にある階段を苦虫を嚙み潰したような表情で見る。
でも、この状況じゃ何も…、何もできない──。
次第に頭に痛みを感じ始める。答えが出ないまま迫るタイムリミットに圧迫されたせいか。
多様だった思考も実現可能性で弾かれ、次第に細くつたなく消え失せる。そこに残るのは『コアを破壊する』という理想と、『自分がコアを破壊しなければいけない』という義務と、理想と義務が実現不可能であるという事実に心を蝕む現実だけ。
もうどうすれば。でもやらないと──。
心拍は胸を殴り続けて、体中へその鈍い痛みを駆け巡らせる。行動もとれず、思考も途絶えて、ただ痛みだけを受け入れて、それだけに染め上げられていく。
音は迫る。玲奈がどうしようと、何を考えようとも。
鈍重な痛みとは焦り。それが全体に染みてからは濃くなり始める。口の水分を奪っても、さらに濃く。濃縮されていけばやがて、空っぽになった思考上に出来物となって表れ、思考のリソースを侵食していく。
大勢の踏音が螺旋階段のかなり上層に到達したことを知らせるように、足場の揺れが大波を航海する船内のようになった時、思考に育った出来物ははち切れんばかりに膨れ上がる。
何を焦っているのですか、私──。
玲奈は突然そう思った。ここまで自分のことを顧みる余裕なんてなかった。それなのに、突然そう思った。
客観的に自己を見ること。
それが思考を圧迫する出来物に針を刺した。
思考が爆発した──玲奈にはそのような感覚だった。
「ああああああああああ!!!!!!」
玲奈は勢いのままに叫ぶ。
蒼が魔獣に立ち向かうときを真似ての行為だった。
途端に肉塊に向かって走り出した体。
肉塊の先にあるであろうコアを破壊する手立てが無いのにもかかわらず、そこへ向かう。
玲奈の武器、注射器を手元に出す。そして、虚空に向かってピストンを引く。普通であれば空気が入るだけであるが、器内に夜の暗さでもわずかな光を反射して輝くネオンイエローの液体が溜まっていく。
注射器を肉塊に差し込んで、溜めた液体を注入する。表皮の裏に隠された管に液体が流れ込む。
ひとまず──、そして──。
玲奈は放っていた鉄パイプを拾いあげる。
ゾンビに魔力を供給している管を叩き切るために。
魔力の供給さえ断ってしまえば、すべてのゾンビは無力化できるはず──。
鉄パイプ片手にして、階段の方をちらりと見やる。まだ視界の中に認められない。
ゾンビがもうすぐそこまでに近づいていることはわかっているが、どの辺りなのかははっきりとしない。ゾンビの到着が自身のタイムリミットなのだから、正確に把握しておくことが必要。その考えから階段の方に寄る。
その間にもゾンビが近づく音が聞こえる。やはり、音が乱反射して正確な位置はつかめない。
手摺から下を覗き見る。階段を上るゾンビの集団が視界に入った。
早すぎる……、もうすぐそこじゃないですか──。
玲奈に猶予はわずかしかない。
退路もない。袋小路に追い詰められている状況。
自身が助かる余地はもうない。そのことをわかっている玲奈は死ぬまでにできることをやることを決意している。
肉塊に繋がる太い管を鉄パイプで叩く。
ゾンビ接近までに切れるかは不明。だが、仲間のために、ゾンビの魔力供給路を断ち切るために。叩き続ける。
植物の茎のように弾力のある管に少しづつ傷が付いて、液体状の魔力が滲み出てきている。
さらに叩けば傷口が広がり、足元まで魔力が流れ出ている。
あと少し──。
わざわざ階段まで見に行かずとも、肌が痺れているように伝わってくる雑踏と気配でゾンビと自身の距離が分かってしまう。
異様なプレッシャーで鉄パイプを握っている感覚がない。振り上げて叩きつける動作で手に来る衝撃なんてものも感じなくなった。もはや体をどうやって動かしているのか、そもそも体は動いているのかすらもわからなくなった。
いつまで叩きつけられれば、いいのか。鉄パイプごときでこの管を切断できるのか。蒼は今何をしているのか。昨日の晩御飯は何を作ったか。明日の学校の宿題はなんだったか。最近見たテレビで一番面白かった番組は何だったか。そういえば、今日のあの番組は録画していたか。
何でもない日常の思考までも溢れてきて、現状が正しく認識されず流されていきそうに感じる。それでも今を正しく見つめようとする思考は少ないながらも脳内にあって、現実にギリギリのところでしがみ付けている。
室内にゾンビが侵入してきたという気配があった。その瞬間、思考の洪水の中で諦念の思考が目立った。
握りしめていた鉄パイプが手から滑り落ちる。それが地面に落ちた時どんな音が鳴っていたのかはわからない。
自分自身の義務を果たせなかったが、ここで自分の役割はもう終わりなのだと悟った。
これで、十分時間を稼ぐことができるでしょう──。
戦っている仲間のことを想った。
梨乃、絆、紡希、海桜、そして、蒼。全員の顔が思い浮かぶ。
でも、私はここで終わりです──。
「皆さん、どうかご無事で」
…
しかし、その時は来なかった。
ゾンビが室内に入ってから数秒も掛からなかったはずだ。
数秒も掛からない内に終わっていたはずだった。
それなのに、その時が来なかった。
おそるおそる背後を振り返り見る。
……ゾンビは動きをとめていた。
よく見ると、痙攣している。
それで思い出す。そういえば、肉塊に麻痺薬を打ち込んでいたと。
肉塊は心臓のように末端まで魔力を送り届ける。だから、肉塊に送り込んだ麻痺薬は当然枝分かれした管の先々にいるゾンビに送り込む。
一瞬反応に困った。
ここで最期の時を迎えること。
それは絶対のもので避けられないものだと思っていた。
しかし、現実にはまだ猶予があった。別の方法を採ることができる猶予が。
選べるのならば、まだ終わりたくはありません──。
生きたい。折角、私自身のことがわかってきたのですから──。
逃げることを選んだ。
だが、どこへ逃げるというのか。
階段を駆け下りてもいいが、麻痺は万能じゃない。拘束時間もそれほどない。
途中で必ず背後を襲われるだろう。
階段から飛び降りるのも、駄目。この高さから一階まで飛び降りることは不可能。
どうしましょう──。
ここから逃げ出す方法は、何か……、何かないんでしょうか──。
周囲を見渡す。
焦っているためか、めぼしいものは見当たらない。
ゾンビが痺れて動けないのもせいぜい数十秒が限度。
早くしなくては、そう思うが方法が見つからない。
せっかく生きるために与えられた時間は無情にも減っていく。
とにかく動かなければ──。
と思った矢先、一体のゾンビが麻痺から解き放たれた。
そんな……、早すぎます……──。
麻痺の効果は個体差がある。そうはいえど、その幅はそんなに広くはない。連鎖的にゾンビが次々に動き出す。そのため、入口にいるため階段方面からの逃亡は不可能になった。
脅威から少しでも逃れるため、部屋の奥の方に追い込まれる。
空間内すべてに目をやる。
天井のパイプが複雑に組み合い入り組んでいる。
壁面にもパイプや電気コードが複雑に絡み合う。
逃げ込むことができそうな場所はない。
追い詰めてくるゾンビに対して今回は対面する状態。
じりじりと迫るその様子を音、臭い、振動に加えて今回は目でも知覚する。
視覚は五感の中でも多い情報量をもつ。その情報量が全て恐怖を与えるものとなって目に飛び込んでくる。
視覚以外の感覚からくる恐怖を耐えることができたとしても、そこに視覚が入り込んでしまっては許容量がオーバーしてしまう。
逃げ場のない空間に追い込まれ、目の前に大勢のゾンビが迫ってくる状況に耐えられなかった。
腰が抜けてその場にへたり込んでしまう。
言葉にならない声を漏らす。涙はなぜか出かかって出ない。
立てはしないが、何とか手で臀部を引きづりながら後退する。
それでも詰めてくるゾンビ。
なんとか後ろに下がる。
スピードは明らかにゾンビの前進の方が早い。
それでも、何とか。何とか。
突然、──片手の指先が地面に触れなくなった。
訳が分からなかった。
でも確かに手は地面に着いている。
そこで、体を支えている。
ゾンビに固定されていた視線をその方へ向ける。
それはなんだかわからない。
ただ床に金属で作られた長方形の格子がはまっていた。
格子の奥は光の見えない闇だ。
ここから逃れられる──。
瞬間的にそう思った。
幸い格子はすぐに外れ、穴はギリギリ入れそうな程。
その中へ身を投げ込む。
完全に穴へ落ちてしまう前に内側から格子をはめ込んだ。
格子が元の場所に戻った瞬間、格子の隙間ににゾンビの手が差し込まれる。
しかし、それに掴まらない。
落ちていく。
というよりは滑り落ちていく感覚か。
まだ月光で見えていた最上階のあの部屋から届く光は見えなくなった。




