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magical dose -魔法少女は破滅の道を歩む-  作者: 伊草


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36/65

おかえり………………………………35mg

 鬼との戦闘から一夜明けた次の日の昼。

 絆以外のメンバーが会議室に集まった。今回の集会の目的は一つ。ある人物が来るのを待つことだ。


 しばらく待っていると会議室の扉が開かれ、その人物──絆が顔を表した。

 室内をちらちらと見まわすと、一拍置いて口を開く。


「…皆s、くひゃっ」


 蒼が絆の話も聞かずに絆の胸に飛び込んだ。しかし、胸に顔を埋めたままうんともすんとも言わず動かない。


「えぇと…蒼ちゃん…?」


 絆は蒼の突然の行動に戸惑いの声を上げると、蒼は目に涙をためてあふれんばかりの顔を見せた。


「絆ぁぁーー!! よかっだよぉ」


 同時にダムは決壊した。蒼の顔は涙やら鼻水やらでひどくぐちゃぐちゃになり、さらにそれをばら撒き、絆の服にまで被害が及んだ。

 しばらく蒼が泣き止むまで待つと、やっと絆の帰還報告ができるようになった。


「えっと、改めまして。皆さん、ご迷惑をおかけしました」


 ここには絆を迷惑だなど非難するものはいない。全員絆が戻って来てくれたのを嬉しく思っている。

 そして、玲奈が前に進み出る。


「迷惑だなんて。それよりももう大丈夫なんですか?」


「うん。もう大丈夫だよ。」


「それならよかったです。皆、絆が帰ってきてくれるのを待ってたのですから。」


 というと、振り返り見る。その目線にいる私達は首を縦に振って全員玲奈に同意する。


「みんな……ありがとう……」

 絆は目を潤ませて、顔を隠すように下を向いた。


 今度は梨乃が歩み出て、絆の頭を優しく撫でて、優しく声色で話しかけた。


「わたくしは絆が戻ってくることを信じてましたわ。

 よくぞ戻ってきてくれましたね。」


 梨乃の言葉を聞くと、絆の目から涙がこぼれた。それを袖で拭って湿らせる。


「絆まで、泣くなよ。こっちまでまた泣いちゃうじゃんかぁ」


 連鎖して蒼まで泣き出して、絆を抱きしめた。かと思えば、絆も袖がびしょ濡れになるほど泣き出した。


 そして、残った私や海桜、玲奈も二人の涙が枯れるまで絆を抱きしめ、全員つられて泣いてしまった。



 …



 それぞれの頬には涙が伝ってそれが乾いた跡が残っている。

 その流れていった涙には後悔の意味合いはなかった。

 後悔からは何も生まれない。過去に囚われすぎてはいけない。

 過去に戻れぬ今、この今を噛み締めよう、という意味であった。しかし、桃香は居なかったものとするということではない。桃香が繋いだバトンを託されて今できることをやろう。私以外もそのような気持ちだったんだと思う。


 そして、全員の感情が落ち着いた今、現状と今後のことについて話し合う。


「私達魔法少女が魔王復活を止めるために倒すべき相手はあと2体です。その2体とは、ゾンビ、メデューサ。いづれも星☆☆☆☆☆の魔獣である四魔です。この中で私達が次に倒す目標は……」


 進行役の玲奈の言葉を遮って、海桜が尋ねる。


「ちょっと待って。ベヒモスを忘れてない? まだ全部は倒せてないはずでしょ?」


「そのことですが、残るベヒモス分体ですが隣町に逃げ込んだ所、隣町の魔法少女によって討伐されたそうです。しかし…ながら、魔法少女側も相当な痛手を負ったとのことです。」


「そっか。損失は残念だけど、ベヒモスは倒せたんだ。」


 と言う海桜は本当に惜しいものを無くしたという顔をしていた。たぶん、桃香のこともその言葉の中に含まれていたんだと思う。


「それで次の敵はどの魔獣なんですの?」


 と、梨乃がさっきの話に戻して疑問をなげかける。

 玲奈はそれに答える。


「次の標的はメデューサです。」


「また手ごわそうな相手ですわね。」


 梨乃は先行きが不安だといわんばかりに眉をひそめる。

 が、私はそうは思わない。


「でも、今の私たちなら絶対倒せる。」


 すこしばかり能天気かもしてないけれど、うまくいくような気がしてたまらない。


「そうだよ。紡希の言うとおり。私たちならできる。」


 絆も私に賛成し、他のみんなもうなずいている。


「決行は来週土曜日とします。それまでに準備をお願いします。」


 言い終わると玲奈は空に手を置く。玲奈の意図に最初に気づいた梨乃がその手の上に自らの手を重ねる。梨乃に続いて察知した絆が梨乃の手の上に自分のを重ねる。そして、また一人また一人と重ねていき、最後に蒼が手を重ねたところで、玲奈は鬨の声を上げる。


「皆で、がんばりましょう!」


「おー!!」


 呼応すると同時に手を上に弾いた。この瞬間から次なる相手、メデューサを倒す覚悟をした。



 …



「ちょっと、絆。一つ聞いてもいい?」


 会議からの帰宅中、隣りにいた海桜がふと足を止めた。


「うん? 海桜、どうしたの?」


「絆をどうやってはげましたのかなって思って。ほら、今日の絆だいぶん元気になってたでしょ?」


 その海桜の疑問に私は少し考えた。

 海桜は私が何かをしたことによって絆が元気になったという前提で考えているが、私はなにかした覚えはない。しいて言えば、絆を山に連れて行ったくらいだ。

 それは何も良い案が浮かばなかったからで何も意図してないし、何かが好転しそうなことでもない。

 しかも、結果的にただ絆を魔獣のいる場所に連れて行ってしまった挙げ句、本来なら元気づけるべき相手に助けられるという失態をも晒してしまった。

 つまりは、絆が立ち直ったのは私のおかげというわけでは全然ないのだ。


「それは……私のおかげじゃない。

 絆は全部自分の力で乗り越えた。

 それに比べて私は、絆の足を引っ張ることばっかりで……

 絆たった一人だけでも、自分の力できっと立ち直れたよ」


 私がそう答えると、海桜は


「うーん、そんなことはないんじゃないかな。きっと絆は紡希がいたから立ち直れたんだ。

 自分じゃわからないと思うけど、紡希は自分が思う以上にすごいよ。私じゃかなわなくなってきたくらいにね。」


「そんなこと、ないよ。私なんか、いっつも助けてもらってるだけで、運がいいだけなんだから。」


「やっぱり紡希は紡希だね。

 紡希はもっと自分を正当評価してあげなよ。悪い所ばっかりじゃなくて良い所もちゃんとあるんだからね。

 …じゃあ、私の家こっちだから。またね。」


 というと、角を曲がっていった。


 ──自分をもっと正当に評価する、か。


 そんなことを言われたのは今日が初めてだ。

 自分を正当に評価するってなんだろう? 私の良いところってどこなんだろう?

 そんなことは全くわからないけど、考えてみよう。

 私の良いところを。

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