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magical dose -魔法少女は破滅の道を歩む-  作者: 伊草


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32/65

これからのこと………………………31mg

<紡希視点>


 あれから──桃香が死んでから、数日が経った。未だ事件の傷跡はまだ深く刻み込まれたままで、この会議室にいる全員の顔に暗く影が差しこんでいた。全員とはいうものの桃香はもちろんとして絆も含めて二人も欠けてしまっている。

 そう暗い顔をしているのはそれが理由だ。

 桃香は亡くなり、絆も事件以降自分の家に籠ったきり出てこなくなった。そのためにこんな空気になっている。


 そして、この落ち込んだ空気の中で行われている会議の目的は、戦闘指揮の桃香が死んだ今、今後はどうするのかについて、引き籠って出てこない絆についてであった。しかし、やはり仲間が死んだ後ということもあって議論は進まずにいた。


「桃香のことも、絆のことも……なんでこうなっちゃうんだよ」


 蒼がボソッとつぶやいた。


 本当にそうだ。いつも良い方に行くようにみえて結局は全部悪い方へ行ってしまう。

 いつもそうだ。あの時もそうだった。小さい頃のあの時だって…


「もう陰気臭いのはやめにしません?」


「玲奈…」


「こういう暗いのいやなんです。桃香が死んで、絆も籠ったきり出てこない。そんな暗い今だからこそもっと前を向きませんか。これからどうすればいいか、真剣に考えませんか。桃香のためにも、私たち全員のためにも。前に進むために。」


「玲奈の言う通りですわ。私たちが今できることを考えましょう。」


 梨乃のその言に皆が静かに縦に首を振った。


「それでは、桃香がやってた戦闘指揮なのですが……私が」


「いえ、それはわたくしがやりますわ。桃香は後衛で私の近くで戦っていらっしゃいました。しかし、玲奈はなにかと忙しい中衛ですことよ。後衛のわたくしがやるのは玲奈の負担を減らせる点でも、視点を広く見れるという点でもよろしいかと思いますわ。

 それはそうとして、玲奈は責任感が強いからもの状況を自分のせいにして、全部しょい込もうとしてらっしゃるようですが、私たちはチームですわよ。それだけは言っておきますわ。」


「全部しょい込んでいるつもりはないですが、確かに梨乃が適任のようですね。負担をかけますが、よろしくお願いします。」


「ええ、謹んで拝命いたしますわ。」


 玲奈はゴホンと咳払いをして次の議題に移した。


「次に絆のことです。絆は相当ひどい状態にあると思います。だから、大勢で押し掛けるのは絆の心理状態的にもためらわれます。

 そこで誰かひとりが代表して行ってほしいのです。

 で、その代表していってきてほしい人とは、紡希です。

 紡希、絆を連れ戻してくれないですか。」


 突然挙げられた自分の名前を聞いて驚いた。


「え! 私?」


「紡希が適任だと判断しました。私にはとてもできそうにはありませんが、紡希ならやってくれると。

 もちろん嫌ならほかの方法を考えます。断っていただいてもかまいません。」


「紡希、どうでしょうか?」


 玲奈が私なら絆を連れてこれると見込んで指名しているんだ。私に何ができるかわからないけど、やれることはやってみよう。


「私、やります。」


「紡希ならそう言ってくれると思っていました。絆のことお願いします。」


 と、玲奈は少し微笑んで言った。


 そうと決まれば、すぐにでも行こう。日が落ちる前に。



 …



<絆視点>


 ああ、私のせいだ。

 桃香が、桃香が、死んだ。

 あの時、私がもっとしっかりしていれば──


 桃香ごめんなさい。私のせいです。帰ってきてください。桃香、お願い。私のそばに帰ってきて…


 呼んでも呼んでも桃香は反応してくれない、返事してくれない。

 どれだけ悔やんで謝っても、桃香は逝ったまま帰ってこない。


 そっちに行って、直接謝るから。もうすぐ私もそっちに行くから。


 私はなぜか手元にあったロープを取り出し、天井に引っ掛けた。


 足元にあった机へ上り、輪の先を見据えた。

 その時、輪の先に見えたものは漆黒の暗闇。奥は何も見えない。楽し気な極楽とは正反対の闇。


 それを見た瞬間、感じてしまった。死への恐れと、死の先に桃香はいないということを。

 そう感じてしまったが最後、躊躇した。できなかった。


 何もできず机から降りた。目から出る物全部出して泣いた。


 涙腺を空にした後気づいた。私が死にたくないと思っていることに。そして、桃香の死で涙を流したのは自分が死んでしまうかもしれない状況に陥って抜け出せないことに気づいたからだということにも。


 出すものが無くなったはずの目からまた涙が流れた。


 ──自分ってなんでこんなに自己中なんだ。


 涙が再度無くなると、胃の中のものまで出そうになる。

 フラフラとした足取りでトイレに入り、胃の中のものを出す。喉が痛くなる、気持ちが悪い味までする。全てを出し切った後、出すものが無くて、でも、嗚咽のみが出た。


 どれだけトイレに籠っていただろうか、気づけばドアチャイムが鳴っていた。



 …



<紡希視点>

 私は201と書かれた表札の前に立っていた。


 ──えっと、絆の家はここかな


 絆宅に何度か訪れたという蒼が教えてくれた絆の家はちょっとぼろいアパートであった。絆は両親はおらず、ここで一人で暮らしているという。


 ドアの隣についているボタンを押して、

「絆? いる?」と尋ねかけた。


 ドアが開いたのはそれからしばらくのことであった。

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