嫌な予感………………………………29mg
真夜中の道路を歩く一人の男がいた。
男はかなり疲れていて、歩く様子はとぼとぼという表現がよく合っている。
男の仕事は深夜を超えて丸一日ということもざらにある。
この頃は丸一日の仕事が続いていたため、深夜に帰れるというのは男にとってまだ楽な方だった。
男は立ち止まり、時間を確認する。
腕に巻き付けた時計は深夜12時を指していた。
もうこんな時間か。
今日はもっと早く帰れるとおもったんだがな。
最近、事件が立て込んでてたからな……
何でこの市はそう事件が多いのか。
女子学生の失踪事件も頻発してるわ、
若者が市販薬でオーバードーズしてるわ、
これだから最近の若者はとも言いたくなる。
まぁ、俺も数年前は若者だったんだがな。
そんなことは一回置いといて、今日は早く帰ってすぐに休息をとろう。
睡眠不足じゃ、仕事に支障をきたすからな。
風呂は……今日くらい入ってなくてもいいだろう。
飯もあるもん適当に食べるか。
タッタッタッタ……
遠く離れた背後で足跡が聞こえた。
こんな時間にランニングか?と思い、仕事の癖がこびりついていることもあって、背後を振り向く。
すると、一人の少女は走って通り過ぎようとしているのが見えた。
こんな時間に何をしてるんだ、と思いつつ眺めていると、少女がこちらを向き目が合った。
目が合ったのは一瞬で少女はすぐに家の角に消えた。
──あれは何だったんだ。
一見すると、普通の若者なのだが、俺の目にはただの若者には見えなかった。いや、格好も奇抜ではないし、おかしくもない。普通とは違う点はその装いではなく、むしろ雰囲気にある。
鬼気迫るというか、死の淵に立っているというか……。
とりあえず、刑事として深夜に出歩くなと注意すべきだ。
少女が消えていった家の角へ小走りで向う。
「君、夜は出歩……」
角の奥にはもう少女はいなかった。
あれ? 見間違え…?
いや、なわけない……はずだよな。
疲れてんのかな。きっと疲れてるんだ。
寝不足のせいもあるな。
さっさと家帰って寝るか。
…
翌日、出勤してきた俺にガタイのいいおっさんは待ち受けていた。
「よう。坊主、何変な顔してんだ。変なものでも食ったか。」
話しかけてきたこのおっさんは俺の上司だ。少し酒臭いが肝心な時には頼りになる刑事だ。
「また朝からお酒飲んできたんですか」
「うるせえな。じじいの娯楽はこれぐらいしかないんだよ。まあそんなことは置いとけ。それでなんかあったのか」
俺は昨日の体験を話した。
「……ってことがあったんですよ」
「へぇ、それは疲れすぎてんな。と言いたいところだが、いまの平田市を見てると否定はできねえ。」
「というと?」
「刺激を求めすぎてるのか知らんが、最近の若者は深夜外に出ていろいろやってんだよ。変な恰好してるそいつも同じ類だろ。」
「そうですかね……」
「納得したなら、すぐ行くぞ」
「行くってどこへですか?」
「事件現場だ」
おっさんは当然だろといった表情でニィっと笑った。
…
事件現場は平田市内のとある学校だった。
女生徒二人による飛び降り自殺があったらしい。ここではあえて自殺といったが他殺の線もあるため、 俺たちが駆り出された。
遺体の状態は特に脚腰周りがとても凄惨なものであり、これを言葉で表現するのははばかられる。
そして、遺体は手をつないだ状態で倒れている。
おそらく二人の仲は大変良いものだったんだろう。
付近は血で染められているが、何かでこすったような跡が見受けられる。
「かわいそうに。即死じゃなかったんだろな……」
と、おっさんがつぶやいた。
その言葉の真意を尋ねるとおっさんが答えてくれた。
おっさんによると普通飛び降りをすると激突する瞬間気絶するらしい。しかし、今回の場合落ちた後も意識があり、苦しみに悶え暴れたのだろうとのことだ。
──非常に痛々しい。
「まあ、俺の勝手な想像だからな。ほんとは違うかもしれねえ。」
おっさんは言い終えた後、そう付け足した。
死因は自死ということでそれから2時間ほどで捜査は早々に切り上げた。
…
実はこのような女学生の自死が最近全国的に増加している。これは平田市においても同じなのだが、少しおかしい点がある。
そのおかしな点というのが、他の地域と比較して件数が明らかに多いということだ。数年前までは他地域と似たり寄ったりした件数だったんだが、この数年で急激に増加したようで、さらにそれと同地域同時期に青少年の深夜外出や医薬品の過剰摂取も同様に急激に増加してきている。自分の感だが、これには何者かの大きな思惑が隠れていると考えている。そう大犯罪のにおいがするのだ。
平田市の平和を守るため、蔓延る悪を全て滅する。それが刑事である俺の使命だ。




