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magical dose -魔法少女は破滅の道を歩む-  作者: 伊草


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それぞれの戦い………………………24mg

〈玲奈・蒼・梨乃班〉

─玲奈視点─

「さて、どう倒しましょうか」

と、ベヒモスを前にして梨乃がつぶやく。


「斬りかかるってのはだめなんだよな」と言いつつも、蒼は今にも斬りかかりたい様子だ。


「だめですわね。」


「今思いついたこと、試してみてもいいですか」


二人を眺めていると、、覚醒した紡希の武器からあることをふと思いついた。


紡希は自分から他人へと魔力を譲渡できる。

そのとき、プラグを自分に端子を他人に刺していることから逆に刺せば、他人から魔力をもらうことができるかもしれない。

(もっとも試してもらったことはないので本当にできるかわからないが)

これは魔力の移動という点において私が注射器を使って魔力をこめた麻痺薬を魔獣に打ち込むこととよく似ている。

もし、仮定した紡希の魔力を受け取る能力があるならば、私が魔力で動いている魔獣から魔力を奪い取ることだってできるはずだ。

これをいうなれば、採血、いや採魔だ。


そして、魔獣は体を動かすエネルギーである魔力がなくなれば死ぬ。

ならば、魔獣の体内から全魔力を吸い取ればたぶん倒せる。


一つ気がかりなのが、採魔するには時間がかかりそうだという点だ。


しかし、これは蒼と梨乃に援護してくれれば、大丈夫か。


この作戦は梨乃には詳しく説明するとして、蒼にはやってほしいことだけ伝えよう。


「梨乃。」

「何でしょうか」

梨乃に、先程の考えを詳しく説明した。


「なるほど、良いですわね。

それで行きましょう。」


「蒼は斬らずに前に張っててください」


「わかったぞ」


こうして、作戦を開始した。



「注意を引き付けますのでその間になさってください。」



「わかりました。ではいきますよ」


蒼が先頭に道を切り開き、その後ろに玲奈が付いている。

ベヒモス間近まで迫ると、玲奈は飛び出し、注射針を差し込む。

そしてここから、採魔タイムだ。

蒼の時間稼ぎがキーになる。


ピストンを引けば注射器には次第に魔力が溜まっていく。

魔力は液体化させた時、人の目には虹色に見える。

そのため、玲奈には虹色の液体が溜まってくるのがみえる。


「残り半分です!」


ここまでベヒモスの動きがなかったわけがない。暴れて注射針を抜こうと試みる。

それに振り落とされないよう必死にしがみつく。


「残り4分の3!」


あと、少し……!


このまま全部吸いきって……!



……


………


…………


ベヒモスはその動きを止めて、頭からだんだんと粒子となりそれぞれ宙へと飛び散った。


勝った……


勝った!


「やったな!玲奈!」


「大手柄ですわ!」


手のひらを頭の高で叩き合った音を響かせて、3人で勝利の喜びを分かちあった。


玲奈・蒼・梨乃班──ベヒモスの分裂体討伐完了





〈桃香・絆班〉

─絆視点─


二人で魔獣を追っているとき、昔に戻った気がした。

昔と言っても、たった数ヶ月前の事だけど、遠い昔のように感じる。


「なんだか懐かしいね」


「そうだね。

二人で戦ってたときのこと思い出すよ。」


夏の冷たい夜の空気がまだ寒さが残る春のことを連想させる。


そういえば、桃香と会ったのって、入学式の少し前だったなぁ。

たしかあの時って……





時は紡希が魔法少女になる前まで遡る。





雪も溶け始め、梅も咲き始めた冬が過ぎ、春にも満たない季節。


絆は魔法神社へ登る階段を登っていた。

この時、絆は小学6年生。

春から通うことになる沖春中学校に進学するに先立って見学しに来ていた。


──ここが沖春中……


眼の前の景色に息を呑んだ。


水が澄んで、魚が泳ぐのが見えるほどの清流──速水川が手前に流れ、その奥には白亜の校舎がそびえ立つ。


通っていた小学校とはその美しさがかけ離れていた。

小学校は壁や天井にはひびが、雨天には雨漏りがあるほどのボロ校舎であり、

当然、美しくなんてなく、皆が廃墟だと揶揄していた。


そんな小学校に通っていたからこそ、

沖春中のその様相には驚いた。

そして、来たる学校生活に胸を躍らせた。


時間を忘れて眺めていると、

楽しそうに喋り合っている声が聞こえてくる。


橋の向こう、学校がある方側から女子中学生の集団が歩いてきていた。


──楽しそう。私もあんなふうになれるかな。


春から始まる新生活に感情が高鳴って止まらない。

この高ぶる感情を冷ましたくない。

このまま家に帰ろう。


川の水が上から下へ流れ落ちるように、自然とそう思った。





速水川沿いに延びる土手にはほんのり暖かいそよ風が吹いている。

絆は自転車に乗りながら、それを感じていた。

そよ風は中学校生活への不安を心の中から掻き出して、自転車が進む反対方向へ風に乗せて流していく。


不安という氷を取り除いて、期待感のような高ぶる気持ちは永遠に冷めないようになった、となんとなく思う。


それに、鼻から肺に入ってくる空気もどこか優しくとても心地よい。


だが、ある場所に入ってから少し空気感が違った。


一瞬だけ、

たった一瞬だけ

のことだった。


突風が吹いた。


何かに気づいてほしいみたいに。


私は自転車を止めた。


辺りを見渡す。


止めた場所にはなにもない。


いや、あそこが気になる。


川の反対側。その向こう。


朱色のもの。

道路を跨ぐようにして立っているもの。


つまり、鳥居。


それを認識した時、思い出した。


女子中学生の集団が話していたことを思い出した。


魔法少女の噂。

魔法神社の噂。


──魔法神社に行かなくちゃ


噂を思い出した途端、そう思った。

なぜかは知らないけど。





神社へ続く石段を一段一段と踏みしめる。


緑の天井からこぼれた光が石段を照らしている。


石段は日焼けしていたり、

風化していたり、

古いもののように見える。


しかし、大切に扱われているようにも見えた。


その証拠に落ち葉が一つもない。


上を見上げる。

頂上はもうすぐだ。


頂上にたどり着いた時、

神社の建物と少女の姿が見えた。


少女と目があった。


「あ」「あ」

「あの…」「あの…」

「いや、先どうぞ」「いや、先どうぞ」


言葉がシンクロする。


ふっ


少女が吹き出した。


あはははは


それにつられて私も声に出して笑う。

少女も笑っている。




──これが絆と桃香の出会いだった





「あー、そんな感じだったね。懐かしいな」


思い返していたらいつの間にか口に出てたみたいだ。


「あはは……、口に出してないつもりだったんだけどなぁ……」


「ふふふ、絆っておっちょこちょいなとこあるよね。」


「もう! そんなことないよう!」



………

……



ここで呑気な会話をしていた私達は肝心なことに気づいていなかった。

それさえ注意していれば、あんなことにはならなかったのに。

それだけが悔やまれる……

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