上辺だけの幸福………………………20mg
「海桜、私クラスの人と仲良くなりたいの。
どうすればいいかな?」
ラインを通して自分の気持ちを海桜にぶつけてみる。
こういうとき、海桜は的を得た回答をしてくれるものだ。
「勇気を持って話しかける。以上。」
海桜から帰ってきたのはこれだけだった。
でも、私に足りないものを的確に言い当てている、と感じる。
私には勇気がなくて話しかけることすらできなかった。
だから、最近手に入れた勇気で持って、話しかけてみる。
まずはそれが第一歩だ。
海桜に「ありがとう」と返しておく。
勇気を持って話しかけるにしても、話が合わないとだめだ。
教室で私がわかりそうな話題を話している人は…………………いる。
対角にいる3人。
彼女らがフェルトやら、裁断やら、手芸に関する単語を話していた。
私は手芸が趣味だ。
ひょっとすると話が合うかもしれない。
よし、話しかけるのはその3人にしよう!
…
対角にいる3人に近づいて
「あの! 私も会話に入っていいですか?」
思い切って言ってみる。
3人は一瞬きょとんとした顔を見せたが、すぐにニコっと笑って
「いいよ」と言った。
趣味は何と聞かれて、手芸ですと答えたら、3人とも見るからにテンションが上がっていた。
なんでも、この学校には以外にもその3人ぐらいしか手芸が好きな人がいなかったかららしい。
最近作ったものは?
この生地どう?
そのカバンにつけてるストラップ、自分で作ったの?
と、久しぶりに同類を見つけた3人は矢継ぎ早に質問する。
それに、
ちょっとした小物入れを……
そのパステルカラーっていうのかな。それがいいね……
雑誌で紹介してあるのを真似して…
というふうに私は次々と答えていく。
逆に私から3人にも質問をする。
3人は手芸が共通の趣味で、中学に上がってから仲良くなったそうで、
休日とかによく集まって編み物などをしているらしい。
そして、最近は3人で分担して一つの服を作る衣装作りにハマっているということだ。
「羽衣さんもどうかしら。
いっしょになにか作りませんか?」
「それいいね。羽衣さんが加わればもっといいのが作れそう。」
「一人で作るのも楽しいけれど、皆で作ればもっと楽しいよ」
3人からの押しの強さに圧倒されそうになるけれど、
この誘いは魅力的だ。
一人じゃ時間がかかって凝ったものを作れないかもしれないけれど……
4人いれば文殊の知恵。
新しい発想を組み込んだものとか凝ったものを作れそう!
「是非! 喜んで!」
私は誘いにそう答えた。
「では、どんなものを作るか決めましょう」
「はいは〜い! フリルの着いたお姫様みたいなのがいいでーす!」
「それもいいね!」
「それじゃ紡希さんはなにかある?」
「えっとね。私は──」
私が答えようとしたとき、教室の扉が開いて先生が入ってきた。
「はい、おまえらー! 授業始めるぞー!」
と、同時に休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
もう休み時間は終わりだ。
いつもは長いように感じるが、今日はやけに短く感じる。
まだ、話していたかったなー。
自分の席に帰ろうとする視線の端で、さっきまでいっしょに話していたうちの一人を捉える。
「紡希さん、また後でね」
手を振ってそう言われた。
私は少しだけ手を振って
「うん」と笑顔で返した。
…
私達の魔法少女チーム『ピース』のみんなでする作戦会議に向かう道中、
海桜に今日のことを話してみた。
「今日ね。海桜のお陰でうまく行ったんだ」
「良かったじゃん。頑張ったんだね。」
それでね──、と今日あったことを順に話す。
その間、海桜は嬉しそうに相槌を打ってくれる。
そうこうしているうち、会議室についたみたいだ。
…
会議で話されたことは驚くべきことだった。
残る四魔の内の一体──ベヒモスを討伐しに行った魔法少女チームが軒並み壊滅した。
情報収集が得意な魔法少女の話によると、
なんでも善戦はしたらしいが、最後の最後でやられたというらしい。
実はこの情報も又聞きしたものであり、情報収集の魔法少女も死んでいた。
よって、どのようにやられたのかは分からなかった。
そして、更に討伐に行った魔法少女チームは3チームほど行ったらしいが、そのすべてが武闘派で、彼女らが壊滅した以上、わたしたちが残る最後の武闘派チームなのだ。
四魔を倒せる可能性があるのは私達以外にもういない。
もう二度とこないであろうと思っていた死闘にもう一度足を踏み入れなければいけなくなったのだ。
しかし、私達は四魔の一角ファージを倒した実績がある。
今度も倒せるという自信が私達を包み込んでいる。
絶望はしない。今度も皆で帰れるのだから。




