現実逃避か、特攻心中か、…………14mg
〈魔獣の北側、紡希視点〉
魔獣の北側にいる私達は作戦を立てた。
内容としては、
まず、この作戦で重要なのは南側(海桜達)の攻撃に合わせるということだ。
同時に前後から攻撃すれば、魔獣にかなりの有利を取れる。
次に梨乃の援護射撃の元で、絆が縄で魔獣の脚を絡め取って体勢を崩す。
最後に北側の前衛二人にとどめを刺してもらう、といった感じた。
この作戦は作戦とは言うものの緊急措置的なもので、あまりに頼りないかもしれないが、とりあえずこの作戦で行くことになった。
ところで私はというと、役割を与えられず、後方の梨乃と一緒にいるよう言われた。
たぶん戦闘能力が無さ過ぎるからだ。
戦闘能力がないから、なんの役にも立てない。
ただそこに突っ立ってる木偶人形と変わりない。
誰の何の役に立てないことをわかっていても、現実に直面すると辛い。
何もできないことが歯がゆい。
そんな私の意思とは関係なしに、作戦は実行される。
海桜と蒼が動き始めた。
これに呼応して、梨乃も矢を放つ。
その脇から絆が飛び出す。
弓から発射された矢は魔獣の頭部に着弾する。
が、弾かれる。
更に飛んでくる矢もすべて弾かれる。
「嘘っ」と思わず声が漏れてしまった絆はもう魔獣の直ぐ側まで来ている。
そこからはあっという間だった。
まず、絆がふっとばされ、桃香がその救助に向かう。
桃香は時間を止めることができるため、敵の予備動作をよく観察することができ、攻撃を避け続けるという目算で、その行動に移したのだろう。
ファージへと向かった桃香が近くまで接近した時、その動きを止めて、固まった。
そして、避けることなく、脚でふっとばされた。
このとき、私には分からなかったが、もうすでに南側は全滅していたのだ。
その惨状をみて、桃香は硬直したのだろう。
しかし、それを知る由もない私と梨乃は戸惑った。
そして、作戦失敗を悟った。
「紡希だけでも逃げてくださいまし。
わたくしが何とかいたしますから……」
梨乃は南側の全滅を悟っていたのだろう。
北側までも全滅して、みんな死ぬ何てことを防ぐために、
紡希を生かそうとしているのだ。
しかし、自分は他の皆が助かる可能性がわずかでもあるなら、その可能性に掛けようとしている。
つまり、死のうとしているのだ。
そう感じたのは梨乃の優しい笑顔に隠された険しい表情を垣間見たからだ。
私は戸惑った。
このまま梨乃の好意に甘えて自分だけ逃げて助かるか、
梨乃と一緒に戦い、犬死にするか。
私の、答えは……




