機械的生物……………………………13mg
魔獣ファージはいつの間にか旧高速道路上の追い越し車線、走行車線にまたがって立っていた。
その姿は頭部分が結晶のようになっていて、コアが透けて見える。
胴体部分はネジのようになっており、そこから細い足が六本生えている。
胴や足の細さに対して頭部分の過剰な大きさが妙なアンバランスを見せている。
そして、生物でありながら機械っぽさを醸し出している様子を認識した途端、
自らの脳が関わってはいけない異常なものであると警告してくる。
その場にいる全員が冷たい恐怖を感じた。
…
私達は南北に延びる高速道路の北側と南側の2つに別れ、魔獣の出現条件を探ろうとした。
その瞬間にファージが出現した。
おそらくここにいる全員が走ったのが条件に当てはまってしまったのだろう。
「やられたっ!」
魔獣が出現したのを確認した瞬間、桃香があることに気づいて声を上げた。
続いて絆も気づいて声に出す。
「分断された!」
ファージがいる位置は南北に別れた私達を分断する位置だった。
これならばまだファージを挟み打ちにできるからまだ良かったのではないか、
と私は思ったのだが、問題はそこではないようだ。
「近距離が得意な人は皆あっちにいる。
あと、メンバーもバラバラでいつもの連携ができない」
桃香は的確に状況を見極め、それを周りに伝えた。
確かに。
いつもは前衛の海桜と蒼は反対側にいて、桃香の指示が届かない。
そして、いつもやる連携、絆が魔獣を拘束し、玲奈が麻痺させるという連携ができなくなっている。
ちなみに現在の立ち位置は、
魔獣の北側→紡希、桃香、絆、梨乃。
南側→玲奈、海桜、蒼。
と、南側に主な戦力が偏っている。
「でも、あちらには玲奈がいますわ。
彼女なら少しくらい戦闘の指揮を取ることもできるのではないかしら。」
勝ち筋を見据えた梨乃の一声に私はちょっとした安堵感を覚えた。
それほど悪い状況じゃない、と。
「なるほど。そう考えるなら、悪くはないね。
あっちのことはあっちに任せて、こっちのことはこっちでやろう」
桃香の言う通りだ。
やれることをやろう……
…
〈魔獣の南側、玲奈視点〉
桃香たちがいる北側にはあまり戦力はない。戦力があるこちら側で魔獣を切り崩さなくては。
と、思って、私が指揮を取り、蒼たちに攻撃をしてもらったが、刃がまるで通らない。
透き通って見える中のコアを破壊すればこちらの勝ちなのだが、結晶のような部分に阻まれて壊せそうもない。
そもそも結晶は固く傷ひとつつかない。
どうすればいいんだと思われたが、魔獣ファージはまったく動かない。
そういう置物かと思うほど動かない。
なら、好都合だ。
有効打になりうるものすべて試してみよう。
まずは足だ。脚の関節を狙う。
脚に限らず関節は可動しやすいよう柔らかい。
そのため、普通であれば関節が弱点になるだろう。
「脚の関節、斬ってください」
「「了解」」
海桜と蒼の二人はファージの足元へ駆け接近していく。
振り上げた武器を振り下ろそうとしたとき、先程まったく動かなかったファージが動き始めた。
その攻撃を避けようとしたのだ。
その行為に私は、
──やっぱり関節が弱点だったのか
と思った。弱点をカバーする動きに見えた。
二人の斬撃は空を切るのだが、それだけではない。
バランスを保つためだけにあるような細い足が蒼を蹴り飛ばした。
蒼は数メートル後方に吹き飛ぶ。
地面を何度か転がったあと、ベタリと倒れた。
起き上がろうとしても、衝撃が強かったのか起き上がれないようで、ただ地面を這いつくばっている。
一方、海桜は細い脚に踏まれ、悲鳴をあげた。海桜も動け無いようで、地面に伏している。
ファージは海桜の上まで移動し、胴体部分からは針のようなものが光っている。
──まずい。海桜が死ぬ。魔獣に注射を打たなければ。
そう思い、駆け寄り、魔獣に注射針を刺そうとするが刺さらない。
どうやっても刺さらない。
あぐねていると、強い衝撃が横腹を走る。
か、と思うと地面が近づくのが見え、ぶつかる。
もう私も動けない。
蒼も、海桜も、私も、行動不能。
南側、全滅。
もはや私には海桜に針が刺されようとするのをまざまざと見ていることしかできなかった。




