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明日はあるのか  作者: 虎麻
3/3

新仕事

---入社から3か月後の6月2日


 暁は新しい課の仕事に就いた。


 今回行う業務は、デッドニングという作業である。

簡単に説明すると、車の鉄板内部に制振、吸音効果のある材料を貼っていき、車の振動や騒音を軽減させる業務だ。

ドアだけの施工の場合もあるが、今回はフルデッドニング。車体全体に施工していく。

簡単そうに見えて、素人の暁にはなかなか難しい作業だ。


 「納車日は4日後」と営業兼指導員の小川に言われる。

「了解です!」暁は4日もあれば終わるだろうと元気よく返事をする。


ザっと施工の流れを教えてもらった。


そして作業開始。


・・・・・・


「あれ、何すればいいんだ?」

暁は何もわからなかった。

小川は営業でお客様と話している。


仕方ない。自分で調べてやろう。

暁は自分のスマホで施工方法を調べた。


今の時代、大体のことは検索すれば出てくる。


 暁は調べながら作業を進めていった。


--3時間後


小川が暁の作業を見に来た。


「え、遅いよ?」小川は驚いた表情で言った。


暁も驚いた表情で「え、、」


小川のような経験者からしたらキホンの「キ」の字の段階にも満たないのだろう。


そこから、約30分間、小川が作業に加わった。

教えるというより、作業を進めてくれる感じだ。


30分が経過し、小川はお客様が来るからと去っていった。


暁は一人、何もわからない空間に取り残された。


何もしないのはいけないと思い、調べながらまた取り組む。


気付けば午後6時。定時の時間だ。


小川が暁の元へ歩いてきた。

「あと3日もあるし、今日は帰ろうか」

「はい」


暁からしたら、良いペースで進んでいると思っていたが、小川の表情を見る限り、そんなことはないのだろう。

暁は、人の表情、口調を細かく観察する傾向がある。

小川が営業をしている際も、暁は業務に行き詰まり、何度も小川に聞きに行っていた。

しかし、忙しさをアピールする小川に、軽く口頭で説明されるだけであった。

暁も、もっと細かく聞けば良かったのだろうが、小川は指導員という立場であるが、営業部の人間だ。迷惑をかけてはいけないと、暁は察する。


「明日からまた頑張ろう」


そう思い、暁は退社する。


タイムカードを切りに行く際、先輩方が声をかけてくる。

「どうだった!?」

「お、期待の若手!」

先輩方は笑ってくれていた。


「難しいけど頑張ってます!」

暁も笑顔で答える。


先輩はみんな良い人だ。


 最初だからできないのは当たり前。頑張ろう。

 

 暁は帰路につきながら自分を鼓舞していた。



先輩方の笑顔の声掛けの裏には、暁への心配が隠されていた事は、後になって知ることとなる。











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