光の視点
★光の視点(巫女式神の視点になる)
? "私"は全くの他人でね。彼女と同様に民に尽くしたり、文化が発展していくのに喜びを感じた。間抜けなほど未来と人を信頼していたんだ。
鬼は人の形をした白い人魂(?)で太虚を彷徨い、力を失い横臥していた。
-輪廻から離れた暗い場所で、私は全知全能の神から放り出され、生命から忘れられていた。
……。
-終の世界で、忘れられると言う苦しみを味わっていたのだ。
鬼の不確かな体から煙のように巫女式神が生まれる。形を生していない巫女式神はゆらゆらと空間にとどまった。
ほんとうはみらいをしんじたい。たにんをしんじたい、ふたたびあのかみにあえたら。
まぬけでばかな、わたしよ。
未来が途絶えたあたしよ。未来を信じよう。他人を信じよう。会えるさー絶対に。
巫女式神は今の少女姿になり、鬼に手を差し伸べる。
鬼の輪郭が確かになり子供の形になる。瞼をあけ、巫女式神を見つける。手を取り、体を起こした。
「"巫女式神"は鬼神の希望から生まれた存在だった。」
-お前は私の途絶えた可能性だ。
太虚にヒビが入り、鬼は現世に生まれ落ちる。
「最初は"鬼神"と同じだった。何もかも、コピーみてえに思考回路も。あたしの主の延長でしかなかった」
「でも変わったんだ。」
鬼に作り出された巫女式神は、必然的に童子式神と出会う。
「虚ろな目をした童子式神に度肝を抜かれたよ。意思はなく、ただ命令のままに行動している。いわば思考停止状態だった。 観察しながら、何を童子式神から学習できるかを考えた。」
「式神たちは皆擦り切れ、自我を失い主の命令のまま動いていた。」
「この世界でいう式神とは、人間に操られた哀れで摩訶不思議な存在さ。それに自我があるのかないのかは本人すら分からない。」過去のシーン。
「式神には自我はない-本当だった。」
「私はどうすればよい?あの式神の観察を続ける意義があるというのか?どうする?」
巫女式神は庭の生垣から飛び出し、辺りを見回す。溜息をつき、去ろうとした際。
「誰すか?」
「…ん?」
童子式神が虚ろな顔持ちで立っていた。
「わたしは、あんたと同じ式神だ。よろしく。」
巫女式神は童子式神に自分は"式神"だと名乗る。見た事のない式神だと童子式神は言う。
「あっしは…童子式神っス。」
(※願いを諦めていた童子式神に自我をめざめさることなる。)
「童子式神…?名前があるのかい?」
「え、あ…自分でつけました。だって、童子の姿をしているでしょう。」
鬟をゆびさして言う。
「……!」巫女式神の目に光がやどる。二人の間に希望の灯火が宿った。
その灯火が夜空に散りばめられ、瞬き揺れる。あまたの星が輝く空間で星星を眺め、巫女式神を一層輝く星を見つけ、触れようとする。煌めきがやがて人の形になった。
「童子式神……!」
童子式神はいつもの調子で佇んでいる。
「-町中を探してもいなかった。気配も、何もなくなってしまったみたいに。消えてしまったんだ。」
「どこに行っちゃったんだよ?」
彼は答えずに見つめ返してくる。虚ろな目をした童子式神は疲労しきっていた。
「童子さん」
「初めて顔を合した時あんたは人の言葉を発した。式神に、あんたは人語で話しかけるのかい?」
「おかしな奴だねぇ、まったく。そういうとあんたは拗ねてみせるだろう?」
「真似事が好きだねぇ。魔の癖にね。」
童子式神は何も言わない。またジッとこちらを見つめ、何かを言おうとしている。
「…結局願いを叶えられませんでした。」
その言葉に巫女式神は、自分に話しかけられていないのを悟る。
「あたしは巫女式神、だろ?」
再び見やると童子式神は髪を解いた状態でさらに疲労している様に見えた。わずかに笑い、彼は言う。
「いいえ。あっしは…これまで貰ってばかりで何もくれてやれなかった。」
「…おい!」
童子式神はフワッと光のモヤになって消える。たくさんあった星々がパッと消失し、巫女式神は何も無い闇の中で立ち尽くす。※トーンは塗らない。
「なんだよ…意地悪だなっ!あんたは…この星は!」
無に向かって叫ぶと、ゴゴゴと無が蠢いた。揺れに巫女式神は驚く。頭上から星屑が降ってきて、空から振り落とされる。
叩きつけられ、地面に転がり、寝転がっていると--黄昏ていた巫女式神を冷静が見つける。希望が揺らいだ、絶望しかけた巫女式神はじっと空を見上げている。
冷静は表情を変えず隣に来る。覗き込み、二人は見つめ合う。
「お前が"星"に近づけるわけない。触れることもな。」
ふん。 悪態をつく。
「意地悪か?地球は?」
「意地悪だ。あたしにまやかしを見せつけて振り落とすぐらいには。」
鼻に皺を寄せ、巫女式神は吐き捨てた。
「からかわれただけだ。この星は、お前みたいな奴の反応を見て楽しむ。」
「最低だな。」
「地球に居るということは、そんなもの。物好きどもの巣窟だ。」
巫女式神は起き上がり、土埃を払う。
「で、過去に囚われるか?童子式神ってやつのまやかしに話しかけ続けるつもりか?」
「………。どうだろうねえ。」
冷静は顔色を変えず、視線をそらし月を眺める。
「それでもいい。誰も、お前を停める者はいないのだからな。」
「うん…。」二人のシルエット。犬人間になった冷静が問うた。
「お前の目標はどうなる?神格を得たいんだろう?」
「あたしは…。それは…あたしの主が叶えたがっている願いだ。」
「そうか。」
「生きていい証明なんだ。あたしが生まれた理由なんだよ、天の犬。」
冷静は静かに笑う。「神格をえるのか」
「いや、どうせこの世に生まれたんならさ。自分のやりたいことやってもいいよな?味方は自分しかいないのに。」
冷静は何も言わない。「天の犬?」
「どうする?"巫女式神"?」
冷静に問われ、巫女式神は意表を突かれる。しばし黙り、そしてニヤリといつもの様に笑った。
「諦めないよ、あたしは前に進む。」
犬人間形態の冷静は顎に手を当てると、目を細めた。
「そうか。なおも前に進めるのか。」
「ああ。毒を食らわば皿まで、だ。突き進める所まで、突き進むさ。」
巫女式神は起き上がると土埃を払った。
「それでこそ"巫女式神"か?面白いな。」
「人を面白がるなよ。」当たりを把握しながらもムッとする。河原にいる事に気がついた巫女式神は、自らの乱れた髪をなでつけた。
川面に星空が映り込み、周囲は虫の音につつまれている。
キラリ、と空に流れ星が走った。
「火球?流れ星?」
「天の狐か、天をかける犬かもしれんぞ。」
「あれがあんたなのか?」
「昔の人々はそう言っていたがね。俺が空を駆けたら、災いが訪れると怯えていたぜ。まあ、時空を走るなんざ今はしなくなったが。」
「あたしもやってみたい!」
目を輝かせて巫女式神は言った。
「あんたも無明をさ迷いたいのか?変わり者だな。ほら、あんたの末路が降ってくるぞ。」
流星群が地面に落ち、弾ける。巫女式神はそれを見て冷静へ訴えかける。
「時空の歪みが広がり続けている。」
「歪み?ゆらぎじゃなくて?」
「それこそがゆらぎを生み出している原因だ。見ろ。」指をさして冷静が言う。
空に亀裂が走っており、そこから流星が漏れいでている。
「そろそろお前の存在を間借りするのも終いになりそうだ。」
流星を手にして、握りつぶす。弾けた光は巫女式神を照らした。
「帰るのかい?」
「ああ。この星も俺を煙たがってる。」
「?」理解不能な目つきの巫女式神。
「地球はおっかない奴でねえ。……この星に見つかったら帰らなきゃ行けないからなぁ、まだその時じゃなねえんだ。」
「おまいさんって何でこの星に来たんだ?地球侵略?」
「この世界を存続させるためだ。」
「えっ」
「この時空は崩壊し、大虚に横たえる残骸になるはずだった。だが何かが変わり、本来とは違う道を歩み始めた。それが何なのかは想像におまかせするがな。」
冷静は腕を組み、月を眺める。
「大虚って例の別天地かい?」
「ああ、根源の世界だ。」
巫女式神は地面を眺める。小さいフキダシで下にあるわけじゃねえよ、と冷静が笑う。ムスッとする巫女式神。
「鬼神は眠り続け、巫女も輪廻を回る。そんな世界もある。俺は約束されたのだよ。」
「約束?」ふいに童子式神との約束のシーンが蘇る。
「"この私が望むとおりハッピーエンドにして欲しい"、とかそんな甘ったれた約束だ。」
「えっ。その人は誰なんだ?」
「教えても何の足しにもならん。このイカれた時空に望みを託した奴もいるのさ。」
「ふうん」ムツれる巫女式神に冷静はニヤリとする。
「さ、進むのだろ。すべきことをしろ。」
「待ってくれよ、最後にこれだけ教えてよっ」
手を合わせてお願いする。
「あんたの目的もそうだけど、越久夜町は-」
「特異な分岐をしたこの時空を、創造神の宝物にする。そして贈呈する。歪な輝きを持つ、この光を。そのために幾多の分岐を誤った者たちの光が、時間になり、続かせなければならねえ。」
光に照らされ、冷静は陰影を深めた。
「……。そうか、越久夜町は続くんだな。よかった。」
巫女式神は歪な笑みを浮かべる。
「あんたがどう思おうが、この星は続いてくぜ。」
「うん」
釈然としない顔で頷く。
「さ、休み時間は終わりだ。」
「……ありがとう、少しだけ頭が冷やせた気がする。」
「ああ。」二人は消えかけた流星の転がる河原に立ち尽くした。




