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そんじょそこらの使わしめ (原案)  作者: 犬冠 雲映子
越久夜町シリーズ
30/47

アナタはだあれ?

★アナタはだあれ?(巫女と寡黙)


ネーハは再び墳墓へ訪れる。

-悪神の本体なぞ見つけられるのか?私は、そんな嗅覚は持ちえていないのに。

風が吹く荒れ野に埋もれる墳墓へ歩み寄ると、人影があり、ビクリと足を止めた。※コマ割り。

「こんにちわ。あなたはだあれ?」

「…人間ではないな?」

「そうみたい。あなたはこのお墓になんの用?」

「探し物をしているんだ。」警戒しながらもネーハは答え、一歩後退る。

「このお墓には、わたしの物は何も残されてないみたいなの。」

巫女はなんてない事のようにネーハへ言う。風に吹かれ、髪がなびく。

ネーハはただならぬ気配を感じとり身を固くした。

「だから探しても見つからないと思うよ。」

「貴様は……」

「ムラで神々の憑坐をしていた者。今は皐月って名前をもらったんだあ。」

「……まさか、神話の?!」

「うん、神話だなんて変なの。」

驚くネーハに可笑しそうに笑う巫女。それを見て、ネーハは

「何故蘇ったのだ?何が望みだ?!」

「なんで?なんでだろうね?あなたは知ってる?」

「有屋さまに言わなければ-!」

慌てて荒れ野を後にしたネーハに巫女はキョトンとする。「アリヤ?誰それ?」

「行っちゃったなあ。友達になれると思ったのに。」

残念そうにする巫女に影から山伏式神が肩をすくめる。

-護法童子に知られたら先は短いわね。でも、どうなるのかしら?あのバケモノじみたヤツが出てきたら……あー!早く投げ出して逃げたいわ!

「しきがみさんはあの子知ってる?」

「ええ。ここら辺をうろちょろしてる小バエよ。」

「へー。」興味なさげに相槌をうつと、

「わたしもちょっと見に行きたい場所があるの。」

「えっ?」

目を丸くする演出。


場面は変わり、二人は夜の住宅地を歩く。星守家の正門の前で立ち止まると、作を登り始めた。

「よいしょっと」

「これ、人間の家じゃない。あなた、ここを知っているの?」

山伏式神が慌てて巫女についていく。星守邸に入って行くと、小さな祠を見つけた。

「………。」巫女の目付きが代わり、そっと祠に近づいていく。

朽ち果てた祠の扉を開けるとボロボロになった頭蓋骨があった。山伏式神はびっくりして目を丸くするが、巫女は「わたしだ……」

「え?あなた?」

「わたしは-」

「お主ら、何をしに来た。」

忽然と現れた寡黙が巫女と対峙する。

「……!童子?!」山伏式神が振り返り警戒する。

「吾輩は童子式神とやらではない。」

巫女の気配と異なるのを、寡黙は恐れる。

この違和感はなんだ?

巫女が邪悪に笑う。

「あー、あなた倭文神だあ。なつかしいね!まだいたんだ!」

「……おぬし、何者じゃ。巫女をしていた者、ではないな?」

「わたしは、わたし。何者とか関係ないよお?あなたは誰?倭文神?それともただの-」

「吾輩の前から消えろ!」激昂する寡黙に巫女は天津甕星めいた笑いをうかべる。

「その自信のなさは変わらないねえ?倭文神さん?」

「黙れ!-神威ある偉大な星!」叫んでからハッとする。

-違和感。懐かしみを覚える-アレは神威ある偉大な星。

「どうしたの?」

いきなり巫女の前にしめ縄が連なる。山伏式神は「きゃああ!」と悲鳴をあげ、逃げていった。

「へー?また拒絶するんだ?…ま、いいや。あなたの力には敵わないし、帰ろうっと。」

巫女はニタニタ笑いながら踵を返した。

「……」絶望顔をした寡黙を残し、巫女はいなくなたっていった。


-なんだか変だ。

童子式神はザワザワとした気持ちを抑え、テリトリーの奥から庭へ向かう。

-嫌な予感がする。

「……あ」

童子式神は寡黙が庭で佇んでいるのを見つけ、歩み寄る。

「寡黙?」

怪訝な顔で覗き込む童子式神。

「うそじゃ…今まで吾輩が見て、触れ、消してきたものは」

「神威ある偉大な星では…ないのか?」

童子式神は天津甕星ではないと、寡黙は絶望する。

「吾輩は……今まで……何千年と……何をしてきたのじゃ……」

「吾輩は…何のために何千年とこの地に縛りつけれたのだ?」

「し、しっかりするッス!」

「触るな!」手を振り払われ、唖然とする。寡黙は今まで見たことの無い表情でこちらを見てきた。

「-吾輩に気安く触るなっ!」

「……な、なんスか。どうちしまったんです?」

「そちが--!」良いかかけて、口をかみ締める。

-吾輩が見てきたものは"何者"なんだ?

「何もない。何もなかったのじゃ、これまで吾輩が過ごした年月(としつき)は!無駄だったのじゃ!」

「落ち着いてくだせえ!」

「吾輩は…吾輩は、無駄な存在だった!」

「ならば、自らの手で落とし前をつけなければ!」病んだ目つきが見開かれ、穢れが溜まっていく。裾や鈴が徐々にが黒くなり始め、爪や牙が鋭利になっていった。

-なんだあれは?寡黙、おめえも-式神じゃないのか?!

「私が消すまで!」二重線のフキダシ。

「!」

殺気に当てられ、慌ててうさぎ形態になり染みが出来た布をよける。縛り上げらそうになり、童子式神は冷や汗を垂らす。

「ちょこまかとっ!」四方から布が迫り、童子式神は吊るされた。「ハアハア…な、なんで」

うさぎ形態のまま、恐怖に戦く。

「………。」

寡黙は風に吹かれながら、手を動かそうとする。封じ込まれた童子式神は慌てて

「寡黙!待ってッス!」

「私は寡黙ではないと言っておろうが!」

「あ、あっしは童子式神、それ以外は今の所ないんス。よく分からねえが、おめえが執着している者ではないんス……」

「……!」

「落ち着けッス。おめえらしくねえ!」

「私らしく?何を言う!お前は私の何を知っている!」

「知らねえ!あっしは寡黙しか、寡黙という側面しか知らねえ!寡黙が何者とか、何者でならないとかは-おかしな話しじゃねえすか!おめえは自身が信じているおめえてしょう!」

「………。そちは」

巫女の無邪気な笑みが思い浮かばされる。

『私は女神のはしため。倭文神。あの者を封じ込めるだけの存在。』

『あなたは、あなた自身が信じるあなたなの。そんなこと言わないで』

「……そうか、そなたは」

ダラリと脱力したかと思えば束縛をとき、寡黙は項垂れる。「吾輩は、そなたを苦しめてきた。」

「あ、まあ……」地面に着地すると、童子式神は駆け寄る。

その様子を見ていた寡黙はクシャリと顔を歪めた。

「…。」ふらりと暗闇に消える。

「寡黙-!」呼び止めようとして、無碍に終わるのを悟り止める。

「…はあ……こ、怖かった……」深呼吸して、足が笑いその場に経たり混んだ。


「あの巫女が蘇った?まさか本当に?」

有屋鳥子が走らせていたペンを止めた。前髪をかきあげると、ネーハの方を見る。

「はい。墳墓で、神世で巫女をしていた女性と思わしき者と出会いました。しかし、あれが有屋さまのいう巫女だとするとあまりにも……」

「なぜ気づかなかったのかしら?はあ…とろいし約立たずなのね、私って…」眉をひそめ、歯を食いしばる。

「わたくしも気づきませんでしたし…気になさらないでください。あの」

「お気遣いは大丈夫よ。女神に、知らせるのは…やめておいた方がいいわね。」

「どうしてです?巫女を慕っていたはずでは?」

ネーハは身振り手振りで慌てる。

「我々が思うよりも女神の精神状態は衰弱している。もし巫女のことを知らせたら、均衡を失いケガレにまみれてしまうかもしれない。そうなったら越久夜町はお終いになってしまう。」

「……はい。」

「あの娘が蘇ったとしたら、悪神の力も完全に目覚めるかもしれないわね…。」

「悪神の象徴はどこに眠っているのでしょう。」

有屋鳥子はペンをいじり、デスクに置く。

「墳墓か、巫女の遺体よ。私が見た時には象徴は粉々に砕け、巫女の肉体にくい込んでいた……」

「…町の神々に伝えましょう。」

「嫌だけれども、しょうがないわね。」

ため息を着くやスマホを取り出す。「できるのなら私一人で何とかしたい。先輩の右腕でいたいもの…」

「有屋さま…。」

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