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そんじょそこらの使わしめ (原案)  作者: 犬冠 雲映子
越久夜町シリーズ
24/47

汝は悪神なりや?

★汝は悪神なりや?


「ん、いたいた」

巫女式神は星守邸の庭にいる童子式神を見つける。

「よお」

ドン、と背中を叩く。

「ゔっ」

「毎度毎度元気にやってきますね 今日は何の用ですか?」

困った様子で童子式神は言った。

「改めてあたしの主に会いに行かないかい?」

「何か企んでいるんすか?」

ジリジリとあとづ去る童子式神。

「おお…めちゃめちゃけーかいされてる」

「あんたと主 昔からの心友なんだろ 積もる話もあるだろうと」

「しんゆうって…」

--実際あの鬼神のことも自分のことも まるっきり覚えてないっス…

でもアイツと話せば失った記憶を聞き出せるかもしれねえ

何かの拍子で思い出せたら

「いいでしょう 案内するっス」

「そうこなくっちゃ!お安い御用さ!」

-コイツ…何を考えてるか分からねえ。

月のシーン。場面が変わり、鳥居の前に二人はやってくる。シールドを通過する巫女式神に、童子式神は足を止める。

-緊張している?人ならざる者であるのに?

冷や汗がたらりと垂れた。

「祀られている神さまに一礼ぐらいしたらどうだい?」

巫女式神に茶化されムッとするもずいっと顔を近づけられる。

「いいかい?これだけは守ってくれ、親愛なる友よ。え?芝居がかったその口調をやめろ?」

「いいじゃないか。あたしは案内人だ。ああ、わかったよ。簡単に言うよ。一応あたしの主だ、それにここの鎮守の神でもある。言動には気をつけるんだね。」

「は、はい…。」呆れながらもうなずく。

「もし…気が障ったら、ペロリと食べられちまうだろうね。あんた程のよんわい魔なんてひと口さ。」

ニヤニヤとやらう巫女式神にどつき、童子式神は鳥居をくぐった。


童子式神は虚勢を張りながらも、社殿の前に立った。

「鬼神。居るのでしょう」

黒いモヤが社殿の戸から漂い、やがて人型になる。鬼が現れ、ニタニタと笑っていた。

「神前であるぞ。(うやうや)しく(こうべ)をたれるべきではないのかね?」

「式神が頭を下げるのは主さまのみです。人間に仕える種族ですから」

「可愛くないやつだ。」

宵闇の中、鬼が神社の欄干(?)に腰掛けている。ほのかに本殿の内側から灯りが漏れ、鬼の影はない。狛犬の消失した台座の上に巫女式神が座り、楽しげに見守る。

「へえ……、来るとは思わなかった。」嬉しそうな顔をする鬼。

「お互い利用できそうなので。」強気に出る童子式神。

「はあ」呆気にとられ、鬼は呆れたように「なんだいそりゃ…君のような貧弱な式神如きに利用価値があると思うかな?」

「………。」

なにかに気づき、ハッとする。

「おめえ、なにか変わりました?」

違和感。

「ああ、…色々とね。」※くらいトーン。

「そうですか。深入りはしませんが」

「君のそういう所、感心するよ。で、君を招き入れた理由をはなそうか。」

槍で貫かれた胸を握りしめながらも言う、鬼。

双方は鋭い眼光をぶつけ合う。お互いが虚勢を張っていることに気づいていない。

「はい。聞かせてもらいます。」

胸に手をあたてたまま、静かに瞼を閉じると一息置く。そして決意したように

「君はかの星神なのか?神威ある偉大な--」

「えっ…待ってください。そうじゃないんですか??」

お互いきょとん、としたような顔になる。童子式神は気を取り直して、口を開く。

「…。あっしは何者だったんすか?星の神だとして、何をしていたのですか?」

「何をしてって分霊だったのさ。」

「分霊、その他には?」

「やはり君は全て忘れてしまったというのか?私との会話も、なにもかも?」

少し焦燥する鬼に、童子式神は気づかない。

「ええ…自分が分霊だったことしか、覚えてないんです。名前も、気持ちも-我に返った時にはまっさらになっていたんです。」

「そうかい。」陰鬱とした気色になる鬼。

「教えてやれるのは…ショックを受けるかもしれないが、村では悪神として名だたる荒御魂だった。人々へ畏怖をもたらす、天から落ちてきた眩い光を放つ神。名は…神威ある偉大な星。あれは人間が考えた当て字のようなものだ。意味は無いが、端的に現せているだろう?」

-神威ある偉大な星。

過去に鬼が呼ぼうとしたコマを貼り付ける。

「悪神…あっしはそんな存在だったのですね。」

「まさか、それは君を良くないと思っていた奴らから見た姿だ。眩いばかりの輝き、畏怖を抱くお姿。何事にも屈することのない意思。己に従い貫く正義。太陽にも負けぬ明星のように、他の神々とは異なっていた。…私はその輝く神を崇拝していたのだ。民に言葉を伝え、どんなに素晴らしいか…」

熱弁していた鬼は童子式神が引いているのを目の当たりにし、ふっと冷静になる。

「彼の神はもういないのだね。」

「…あっしは、式神。童子式神…それ以下でもそれ以上でも…」

「私の知っている君はムラを支配する一柱さ。今のひ弱な式じゃない。そして私は君を盲信していた、民もね。」

「そんな…そんなに」密かに歓喜し、化けの皮が剥がれかける童子式神に鬼は頬杖をつき語りだす。

「フフ。だがね、ムラの一支流の人々はおもしろくなかったろう。とくにあの娘は。そのくらい君はムラのルールに干渉していたんだ。」

ああ…そうか。あっしは町のルールに干渉したかったのか

ずっと…幾千年から今日まで。

「奢るな。」冷徹に制する鬼に思考をさえぎられる。

「眩いばかりの輝き、畏怖を抱くお姿。何事にも屈することのない意思。己に従い貫く正義。太陽にも負けぬ明星…しかしお前には、それは残っていない。ーー残るは醜悪な野心のみ。」

「…。」

ギリッと鋭い牙を噛み締める童子式神に鬼は続ける。

「君はあの時の"君"じゃない。」

見下し、断言する。

「君から神威ある偉大な星の気配を感じられない。似てはいるが何かが違う。そもそも神ではない。」

驚愕する童子式神。

「残念だ。幻滅したよ。……おい、もう良い。話は終わった。」巫女式神に命令を下す。

「何を勝手に」

「幻滅したのはあっしのほうだ。おめぇにわかるものか、この苦しみも恥辱も!」

「ああ、すまない。私には分からない。君の気持ちなど理解したくもない。」

女神の槍が刺さった場所に手を当て、鬼は顔を顰めた。

「忌まわしい……」

「な、なあ……」巫女式神がわざと笑みを浮かべ、童子式神に近寄る。反応がなく苦虫を噛み潰したように顔をくしゃっとしている。

変な間が生まれ、シンと静まり返る。

「………。」何も答えない童子式神。

「-分かりました。」

「えっ」巫女式神は両者を交互に見る。

「帰りますから!」

「ちょっ、どうしたんだよっ!」

涙をこらえた童子式神はぴょん、と境内を去っていった。

「童子さん…」

それを見送る巫女式神は眉を下げて、肩を落とす。


13 去った童子式神を見送る鬼。

「いいのかよ、あれで……」

「………。」鬼も答えずにギリッと歯を食いしばった。

-あそこまで変わってしまったのは…あの女神のせいか?いや…時間のせいなのか?くそ…私の道は閉じたというのに。

とがっかりする。肩を落とし、意気消沈したまま本殿の中へスッと身を消した。

台座に座っていた巫女式神は何故落ち込んでるのだろうと首を傾げるが、冷静に裾を引っ張られ、問うのを止めさせられる。

「今はそっとしておけ。」

「だって、あんな言い方あたしの主らしくない-」

「触らぬ神に祟りなし、さ。今はけしかけない方が身のためだぜ。」

「う、うん。わかったよ」

巫女式神は釈然としない様子で頷いた。


鬼は疲れ果てた様子で黒い雲に吸い込まれる。自らのテリトリーにやってくると、座り込み息を吐いた。

揺蕩う闇の中で鬼は目を伏せる。

-あれだけさ迷った太虚へ安堵を覚えるなんて、お笑い草だ。

「はあ」ため息を吐くと、焦りを隠そうとする。

-私に残された道は

「くそ!」膝を叩き、歯を食いしばる。

-やっと現世へやってこれたんだ。二度と--

神威ある偉大な星。※不穏な雰囲気。

童子式神のコマを貼り付ける。童子式神はそのコマから真顔になり、鬼を見つめた。

-かの神は"童子式神"なのか?

「ならばどうして?主が喜ぶ事柄だけを与えるつもりかい? いつからそんな奴に? 私が知っているあなたはそんな奴じゃなかったはずだ。 」

いつから人間に媚びを売る様な-いや、式神はそんなものか。

そんなモノなんだろうか?

でも君は違うだろう。数多の魂を食べ、力や感情を得た。

それだけ君には例外を起こせる力を持っているんだ。だけどそうしない。

甘んじている。

式神でいる事に甘んじているんだ。気づいていないだろう。

あんたは自分へも特に優しくしている。優しいのは遊惰するのと一緒だ。血腥い式に言っていただろう。 あっしの願いは叶わない。

君の中で何かが変われば可能性は開けるかもしれない。何者かに手が届くかもしれない。

-私は貴方が再び輝きを放つのを待っている。

………。 鬼は真顔になり、思考を止める。

馬鹿だなあ。

………。何が気に食わないのだろう。子供じみた癇癪が私を苛ましている。何か、あの式神からは異なる気配を感じる。あのお方ではない、なんだろう。

昔会ったことがあるような。あの甘々しい思考回路の-

巫女の笑顔が蘇る。

鬼は自嘲して項垂れる。「はは」

「あの女はあまり好きじゃなかった。」

巫女とかつて人間だった鬼が対面している場面が描かれる。巫女が民からもらった作物や木の実を抱え、その内のひとつの木の実を渡してくる。

今の姿の鬼がそれを受け取り、木の実を眺めた。そして握りつぶす。

-皆に愛想と慈愛を振りまいては自分へも特に優しくしている。何かが癪に触った。

きっとそれは同族嫌悪だ。

-あの式神とあの女に接点などないはずだ。

なのに、………。

鬼は顔をわずかにあげる。

私があのお方だと信じている者は…"真反対"の者だというのか?

-稚拙な。

いや、しかし…あのお方はどんな方だっただろう、どんな声をして、どんな………。

鬼は冷や汗を垂らす。

-覚えていない?この私が?………己の理想としていたあのお方しか…思い出せない、いや、忘れるはずがない!!

そうか…越久夜町に"悪神"の記録は残っていない。いや、"消された"のだ。

童子式神の姿が、神世の巫女へ変わっていた。


《初期設定:12 近場の領地を掃除中。巫女式神がちょっかいをだしてくる。改めてあたしの主である鬼に会いに行かないかと誘ってくる。鬼はあっけらかんとしている様子。鬼は童子式神が分霊の頃に崇めていて、何度か話もした仲だと言う。覚えていない童子式神に本当にあの分霊だったのか疑問に思うほど変わってしまったと、寂しげな顔をしたが、何者かになれることを祈る。》

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