一話~零落した使わしめ
漫画用に書いた小説もどきのようなものです。
★童子式神と巫女式神の紹介
最初
『あっしは式神でございます』
『童子の姿をした式神、童子式神とでもお呼びくだせえ』童子式神の自己紹介。
「!」
「へへ、バレちった。」
背後から巫女式神が登場。
『こいつは…..何故かあっしに突っかかってくる。巫女姿の式神』
「なあ、知ってるかい。近くのほこらの神域が壊されたらしいんだ。話題になっててさ。」
巫女式神は近くの神域が壊されたことを告げる。それは主の仕業だと童子式神は知っている。
「へいへい。それはそれは。…。」
「なんだいそりゃ。」反応うす、と小さいセリフ「けっこー重大な事じゃないのかい。」
「…。」
──驚くものか。それもそのはず。あっしの主がやったのだから。
「何故そんなことするんだうろな。あんたには分かる?」
「いいえ…」
──毎回あっしのとこに来て、用もねぇのにこりねー奴。
いつからだっけ。さあ──
巫女式神は何故そんなことをするのか不思議がるが、童子式神ははぐらかし掃除を続けようとする。
「町の神使たちもお怒りになったってさ。」
町の神使たちが怒り出したのを聞き、ふと手を止めた。「…。」
巫女式神はにやにやしながら、
「なあ、ヒマしてるんだろ?町を散歩しないかい?犯人探しをするんだ。」
「はあ、何言って──」
どうしようかと決めかねていると、寡黙がテレパシーで
「おい。我々の領地になる"塚"が見つかったぞ。」と連絡してくる。
「情報を共有する…目的地へ向かえ」
「いいでしょう。」了解して、童子式神は巫女式神の提案に乗る。街を徘徊して目的地の塚があるのをみつける。巫女式神はなんだろう、と近づこうとしたものの、何かの唸りがして2匹は固まる。この世には自分たちの他に人ならざる者がいる。殺意を察知して引き返すも、獣がじっと草むらから覗いていた。
塚から離れた路地で、2匹はあれがなんだったのか分からないが、危険なものだと判断する。
「あれが犯人なのか?」と巫女式神はいう。
「いいや、あれは…。」犯人がいるわけがない、だって──。犯人は主なのだと言いかける童子式神に、巫女式神は遮る。
「まあ、今日はこれくらいにしとこう」、と巫女式神。
「なんだか出鼻くじかれちゃったなぁ、こえーかった!」
「そ、そうすね。あんなの、久びさでした。」(2人は別れを言いそれぞれの持ち場に帰った。)》
1 寡黙に塚の様子を伝える。寡黙いわく近場の神域が壊されたのに神使がいないのは違和感がある。魔にでもやられたのではないかと童子式神はいう。神使は穢れに弱い、弱体化しているのなら尚更。
神使と魔の違いの説明。神使はまたの名を神の使い、使わしめという。神の眷属のため、神に近しい力を行使できる。しかし神聖なる者である。穢れや邪悪なものにとても弱い。
我々は魔と呼ばれる存在だ。あっしら式神は人に使えるため霊力こそ弱いが、神使とは正反対で穢れなどに強い。
神使への対抗はそれだ。防御(神域)を破り、その場の気をプラスからマイナスにしてしまえばいい。神使や神をプラスにするとしたら、の話だが…。
確かにあの場には穢れにまみれた魔がいた。だが魔にしてはおかしな気配だった。まるで上位の…神使のような…。久しぶり…?あっしは…神使の気配を知ってる…?
「おい、そち、ぼうっとするでない。報告の最中であろう。」
「あ、ああ…すまねえ。」
まさか、んなことないっスね!と童子式神は苦笑する。
「はたしてそれは魔だったのかのう…。」
「へ?魔なんじゃ…。神使なわけ…。」
神使が魔に堕ちることなどありえようか。
「その可能性も視野に入れておけ」、と寡黙。
寡黙が去って行くのを目で追い、童子式神は緊張が解けため息を着く。寡黙は苦手ではないがどことなく「緊張」してしまう。何か忘れているコトがある。何か寡黙は含みがある。
童子式神はテリトリーの中で立ちすくむ。
★零落した使わしめ
あれから童子式神は塚に近づけずにいた。夜の一室で男性がベッドの上で焦りを滲ませ、前髪をクシャりとさせた。
「まだあの神域を掌握していないのか…?」
主の苛立ちが顕になり、童子式神は恭しく頭を下げた。
「塚で感じた邪悪な気が、いっそう強まっているような気がします。あれは何なんでしょう…」
「人間のオレが分かるわけないだろ。」
「は、はい。すいません」
──この人間は、あっしの主。彼の名前を知らないが…主であるためには魂とエネルギーさえあればいいのだから、あっしは気にしていない。それに
主は──すぐ変わる。
童子式神の双眸に人ならざる者らしさが宿る。
童子式神は再び塚にやってきていた。空に月はなく塚がある周辺は澱んでいた。
「あのケモノはいねーみたいですね。…よかった。」
──それにしても、マイナスの気が充満しすぎてる。神域だったなんて思えねぇ。
キョロキョロとして何も襲ってこないのを確認するや、ホッとして、塚に近づこうとした。
「ヤツに気づかれるぞ。」
背後から寡黙が現れ、ソッとか肩に触れた。
「わっ?!驚いたッス!!いたのなら言ってくだせえ!」
「そちがポケッとしているからじゃぞ。悪い魔に背後を取られたらペロリと一口じゃ。」
寡黙は無表情で言い放つ。
「わ、わかりましたよっ!これからは気を研ぎ澄まします。」
「……この塚は、元は人間の墓だったようじゃがのう。こじれてしまったものじゃ。」
寡黙は塚を眺めて言った。
「じゃあ、あの奇妙なバケモノ?は……」
「いや、時が経つにつれ墓を忘れた人らが神を勧請した。大口真神、そのような神じゃ。」
「おおくちまがみ。初めて聞くっス」
「修験道の者が祠を立てたがの、人らは後にそのような神を祀った。懐かしいのう」
「へえ。おめえ、越久夜町の歴史にやけに詳しいンスね。あっしは全然皆目見当もつかねーッス。」
ポリポリと頭を搔くと、童子式神は
「式神らしくねえッスね、寡黙って。ねえ────」
「それ以上気にかけるな。そちは何も考えなくてよい」
「え?」
寡黙の目を見つめていると、視界がぐにゃりと歪んだ。
「え?ええ?」
まぶたを閉じた瞬間、僅かに暗転する。
「────でさあ、またあの塚に行こうと思うんだけどぉ。って聞いてるか?」
気がつくと目の前に巫女式神がおり、いつものように庭で話していた。
「あ?!え、えっと何の話ですか?」
目をぱちくりした童子式神に彼女も驚いた。
「はっ?!寝ぼけてんのか?!!!さっきまで普通に話してただろ?」
「え?え、あれ?……あ、あー寝ぼけてるみてえですね。それかボケちまったか…式神らしくねえっス。」
困った顔で頬をかく。「すいません、なんの話しをしていたのでしょう。」
「あ、ああ。この前、廃屋の玄関にケガレにまみれた奇妙な犬がいたんだよ。真っ黒でやせ細った野犬みたいなヤツで、ソイツに似たような札が貼られてた。その気配が塚で感じたのにそっくりだったんだ。」
「はあ」
「あれは魔神か、使い魔なんじゃねえかな?」
「犬の使い魔?犬神ですか?」※犬神の描写。
「犬神って犬っていうより、ネズミみてえなヤツなんだろ?だったら違うと思う。それにもっと邪悪な者だったよ。」
「御札…新たに生まれた宗教の神でしょうか?」
ううむ、と考え込む。
「あれは神から零落した者じゃないかな?」と巫女式神は恐ろしそうに言った。
「やめてくだせえ。縁起でもないことを」
──神という属性から転落した者は二度と元には戻れない。消えるか、よくてあっしのように────ように?
「童子さん?」
ハッと声に思考から呼び戻される。「大丈夫かよ~。心配になってきた。」
「へ、平気です。──わ!」ぐい、と手を引かれびっくりした。
「寝ぼけた童子さんには探検が必要だなっ!もう一度塚に行こうっ!面白いことがあるかもよ!」
「ちょ、ちょっと!」走り出す二人。バタバタと足音が遠のいていき、寡黙がそれを見ていた。
場面が変わり、二人は塚の近くにたどり着いた。巫女式神がわずかにたじろぎアスファルトがザリ、と音を立てる。陰鬱に澱んでいるゆらぎが漂っていた。
「うわっ、ゆらぎがひどい。」
「日に日に酷くなっていきますね。」
「──あ」
「何かありましたか?」声を上げた巫女式神に、童子式神は怪訝な顔をした。
「月がなくなっちゃった。」空には月がなく、雲だけが浮かんでいる。
「月なんて、いつも変わっていくものでしょう。」
「昨日までは満月だったのに。ううむ?…気の所為?」
「う〜ん。気にしていませんでしたから…」
──今まで何も気にしていなかったような…?ま、いっか。
「寡黙がここは昔、人の墓だったと言っていました。」
「かもく?…ふうん、それがこうなってるワケか。あ、犯人見つかった?」
「い、いえ。まったく」苦笑いする。
「あたしはこの際、犯人なんて関係なくこの時を楽しみたい。」
巫女式神はニカッと笑う、それに童子式神は理解出来ずに首を傾げた。
「お前、たまによく分かんねえッス。」
「まあまあ。ほら、塚に近づいてみようぜ。またアレが来たら逃げてまいてみせよーよ。」
「食われてもしりませんよ。」二人は塚にそろりそろりと近づいてみる。草が生い茂る塚の前まできたが何も起こらず、はーっと胸をなでおろした。
ゆらぎのモヤに吸い寄せられるように、魔の虫が飛び交う。カサカサと足の生えた蛇が這っていった。
「神域があった跡ってこうなるのかな。あたしたち魔でよかった。」
「まあ、魔には格好の餌場になりますよね。弱った神使を食べれる機会がありますし」
「まさか、童子さんは食べてないよな?」
詰め寄り焦った巫女式神に、呆れ顔になる。
「式神は主となった魂しか食べません。…もし、あっしが食べたとしたらルール違反で式神でもない者になってしまいます。」
はあ、とため息を着くと地面に座り込む。
「神使ってうまいのかなあ?」
「さあ、ゲテモノなんで。」
巫女式神は塚に上り、草やぶをかきわけた。「何してるんですか?」
「変なニオいしない?なんか、腐ったような?」
くんくん、と嗅いでみるも「何もしませんよ?」
「あ、ここらからする。」草やぶにしゃがみこみ、何かの毛皮が巫女式神によって、引きずり出される。ケガレがぶわりと濃くなって、二人は息を飲む。
「コイツがケガレの原因スか?」
「みたいだねえ。」
「やばくねぇスか?これ」
「うん。」
ワオーン、と遠吠えがビリビリと大音量で響き渡る。二人は身をかがめ当たりを見回した。
「やべえ!!」
「逃げるッス!」足をうさぎ形態にして、ぴょんと跳ね上がった。犬のような生き物が前の通路から走ってくるのをみて、二人は後ろにある森に逃げ込んだ。
「あいつだっ!あたしが見たヤツだ!」
振り返ると間近にいる。童子式神は違和感に気づき、驚いた。
──野犬?いや、まさかニホンオオカミ?!
「────木に登るッス!早く」跳ね上がり木に登ると下を見下ろした。
「あいつ、きっと木に登ってはこねえ。一匹ならの話だけども」
「なんで?」隣で身を潜めながらも、聞いてくる。
「山犬はそういう者なんス。」
「あいつ、山犬なの?山犬って絶滅したんじゃ?」わずかに動揺する巫女式神に
「生者の山犬は絶滅したでしょうが、人ならざる者の山犬は生きていても不思議じゃねえ。」
山犬はグルグルと木の周りを旋回しながら唸り声をあげている。「──って!なんで持ってるんですか?」
「え?」
「毛皮っ!」巫女式神の腕の中には毛皮が収まっていた。
「持ってきちゃった。ハハ」引きつった笑みを浮かべる彼女に
「これをあれに返してあげてください。じゃないとずっと木の上にいることになりますよ。」
「嫌だよ。ニホンオオカミの毛皮なんて貴重だろ?」
ギュッと抱き寄せる巫女式神に呆れを通り越して怒りがわきあがった。
「このっ──」
ガリ、と下から不穏な音がして二人は固まる。山犬が木を登り始めたのだ。山犬のような、そうでないような塊がジリジリと登ってくる。童子式神は決心して、木の幹から飛び降りた。
ウサギ形態に変化しながら着地するも、枝を踏み、山犬に気づかれる。
「ガルル…」
「童子式神っ!」
「チッ!」脱兎のごとく、ロケットスタートで走り出すも山犬がついてくる。
──やはり人ならざる者。普通の山犬じゃねえっ!
もう少しで追いつかれ、喰らいつかれそうになった時──────視界が真っ黒で覆われた。
「?!」ギュッと首根っこを捕まれ、童子式神は目を丸くする。
「だから近づくなと言ったのじゃ。」
「寡黙っ!」椅子だらけの空間で、寡黙が椅子の上に立ちはだかっていた。
「貴様はっ!なぜだ!こいつに加担しているのか?」
(喋った…)と小さなフキダシ。
「自我を取り戻したか、眷属神。」
「神?!」さらに目を丸くする童子式神。
「ソレを我に渡せっ!ソイツは我々の神域を狼藉した。」唸りを上げ、山犬は怒りを露にした。
「嫌じゃ。吾輩はこの小童を失う訳にはいかぬのじゃ。加えて吾輩からしたらそなたが敵だ。」
寡黙は冷静に、無感情に言い放った。
「何を言う!我らが町に勧請され、いかにこの町を守ってきたか────この式は町を蝕む厄災そのもの」
「!おめー!何言って」
「黙れ」寡黙に釘を刺された。
「見損なったぞ、貴様が神域を穢そうと企むとはな!」ケタケタと笑う。
「勝手に言っておればよい。」
「そこの式、お前はどこから私を殺そうとした?蛮族が……ああ、片割れよ!やっと見つけた!仇が取れるぞっ!」
「なっ?!あっしは片割れなんて殺していませんよ?」焦る童子式神に寡黙が言う。
「気が触れてしまっておるのう。もう彼奴はダメじゃ。ケガレによって魂が破壊されている。」
──魂が破壊。 脂汗をたらす童子式神に山犬は口を大きくむき出して笑った。
「我の魂は永久に片割れと共にある!」
巫女式神は消えてしまった童子式神と山犬の場所を、しゃがんで眺めていた。
「バック・トゥ・ザ・フ〇ーチャーみてえに消えちゃったな。」
「おい、その毛皮を貸せ。」
背後から声がして巫女式神はため息を着く。
「捨てるの?主導権は渡さないぞ。」
「バカ言うな。近くの湧き水で清めるんだ。」背後の謎の人は巫女式神に似ていた。
「ここら辺に清水が湧き出ている。真っ直ぐ進めばあるぜ。」
「わかった。」巫女式神は森の奥に進もうとする。
「なあ、こんなに深い森だったっけ?」奥は闇に包まれ、底なしになっていた。
「真神さまのお導きだ。」声の主がニタニタ笑うのを感じで、彼女はムッとする。
暗闇の森を進む描写。すると僅かながらに水の音がした。ハッと駆け寄ると、月を写した小さな泉があった。
「月が写ってる?あれ?新月だろ?」
「改変するカオスに負けない聖なる泉さ。その毛皮を水で洗ってやってくれ。」
「う、うん。」ザブザブと泉に毛皮いれ、丁寧に洗っていく。水にどんよりとしたケガレが充満するが徐々にそれが澄んでいった。
「わ、綺麗になってきたよっ」
毛皮が純真な白さを取り戻していくにつれ、輝きを放っていく。キラキラと暗闇を押しのけ、森は不思議に光をともしていった。
「なっ、何が起こってんのさ!」
「改変前の原始の、清らかな状態に戻っていっているんだ。」声の主は顎に手を添え、目を細める。
毛皮が一層輝きを増すと、光のモヤが山犬の姿をとる。白く輝く山犬は巫女式神を見やると、
「わたくしを助けて下さりありがとう。」
「え、あ、ああ。」
「町のゆらぎに耐えられずに信仰心も薄れ、わたくしたちは潰えてしまいましたの。」
「だから毛皮になってしまったんだね?」まばゆさに顔をしかめながらも、彼女は言った。
「いいえ。わたくしの毛皮を片割れの彼にあげたのです。そうすれば僅かでもケガレから身を守れる。けれども、それも限界がありました。」
「ああ……」
「彼は魂を融解させ、壊れてしまいました。わたくしは何も出来ず…辛い思いをさせてしまいましたわ。」
美麗な山犬は頭を垂れると、「もう一度礼を言います。ありがとう、未知数なる金烏。あなたはこの町を太陽の威光で照らすでしょう。」
「う、うん。よかったよっ!」
ニカッと笑顔をうかべた巫女式神に、白狼は静かに微笑んだ。
「彼を迎えにいきます。」
「気をつけて。幸あらんことを」冷静が口を借りていった。
場面は変わり、山犬は耳をぴんと立て
「ああっ片割れがよんでいる!!」
と、体をしゃんと正した。その瞬間、眼球が蝋のように溶けだしていく。
「えっ」
ズクズクと体が溶けて、灰になっていく山犬。
「生きていたのだな」
骨までも塵になり、最後は砂の山になってしまった。
「何が起きたんすか?」
「……さあ、分からぬ。」寡黙が表情をひとつも動かさずに、小さく言った。
「またいつもみてえに、消えたんすか……。」
「そうかもしれぬな。」ウサギ形態のまま、陰鬱とした顔で俯く童子式神を椅子に下ろした。
「神性を失った神が自壊するのは定めなのじゃ、…そちは、自らが式神であることに感謝する他ない。」
「……笑かさないでください。」
寡黙は椅子から降りると、フッ吐息を吹いた。すると灰が舞い、淡く消えていく。
「寡黙。」人間形態になるや去ろうとする寡黙に声をかけた。
「話しかけるな。吾輩とて、平生ではいられぬ。」
振り返りざまにそういうと彼女は歩いていった。
「あいつも…神だったんでしょうか?」
月のない空が窓から覗いている。風が吹いており、窓ガラスがガタガタと鳴っていた。
「やっと神域を掌握したか?」
主は読書をしながら、ベッドに座っている。ほのかに照らしているランプに彼の姿が浮かび上がっていた。
「アレはもう神域として機能していません。穢れてしまい、もはや魔のたまり場になってしまっていました。」
「またか。神域を再利用するのはなかなか難しいな。」
本を閉じると、彼はランプを消す。
「越久夜町の気の淀みは想像以上にひどい。忘れられた神域が崩壊すればあっという間に、ケガレに汚染される。……腐った町だ。」
「ええ、もっともでございます。」
軽く頭を下げ、童子式神は賛同する。
「腐っているのは人間どももだ。信仰してきた神々を忘れたのは、人間どもに他ならないのだから。」
「はい」
「それに…この地はニホンオオカミがたくさんいた。狂犬病が流行らなければまだここらを歩いていたかもしれんな。」
「主さまは見てみたかったですか?」
すると主は乾いた笑いを浮かべる。「居たとしても、オレはこの部屋から出られねえのに。ふざけた質問だ。」
「ええ…失礼しました。」
ベッドに寝そべると、主は目を瞑った。「寝るのですか。」
「ああ」
童子式神はいそいそと掛け布団を主にかけた。