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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

未来に何の影響も及ぼさない鬱病の男、未来人からTS薬を貰って120cm爆乳おっとり美少女になる

作者: 稲光結音

 私、今日から鶴井桜を名乗る事になった元男の120cm胸囲の爆乳少女です。

 なんでも私は未来では無価値に死んでいく駄目人間になる未来だったようで、その事に目を付けられ、未来からやってきた女の子の大学レポート「未来に影響を与えない人間は性転換薬を使用する事でなんらかの価値が生まれるのか」という実験に付き合わされることになりました。

 それによって今の私は超絶美少女に生まれ変わり、しかも実験協力の支度金として百万円をいただきました。下着などを買ったりもしましたが、鬱になって仕事を辞め、収入が無くて諦めていたVRセットを購入する事が出来ました。これを使って配信者でもやってやろうという魂胆です。

 ただし、先程も言った通り私は鬱なので――通院で軽度に落ち着いたとはいえ。ほどほどにしかやれない事でしょう。

 昔は十時間とか普通にゲームできたんですけどね。最近は何をやるにもやる気が無くて困ります。寝てばっかり。あ、鬱になって十年ほどなんで最近と言っても十数年の事ですね。バイトが忙しかった時もゲームやる時間は減ってましたし。というかバイトの接客業で鬱になりましたよ。まあ、その辺りは語っても面白くないのでカットで。

 とりあえず今は私と母と未来人の少女、自称ミス・クレーンちゃんの三人暮らしです。私より先に母を説得していたらしく、私がTSすることは母親公認です。クレーンちゃん、略してくれちゃんは余っていた和室で過ごしていますがスマホらしき未来アイテムを覗いてはにやにやしている不審人物です。ただ、私が未来に何らかの影響を及ぼせるように頑張ると、彼女は私に給金をくれるという事なので上司みたいなものなのです。

 上司と一緒に暮らすとか気分良くないですけど仕方ありません。私の免許証などの個人情報を今の姿と矛盾が無いように未来パワーで細かくサポートしてくれているのであまり文句も言えません。

 で、この姿で配信者としてやっていく以上、SNSのアカウントも作り直しです。なにせ私の使っているSNS、ツブヤイターではネガティブな事書いてる可能性もかなりあります。鬱ってますからね。

 そういうのとは無縁の、普通の女の子配信者として心機一転やっていきましょう。あ、なんで急にTSさせられて平気そうかというと美少女になってみたいという欲が自分の中にあったからです。美少女だったら幸せだったのかなあと布団の中でよく考えていましたから。

 とはいえ実際になれるとは思いませんでしたが、夢が叶えば鬱とはいえ少しはやる気がでるというものです。できたら薬の効果で鬱も治してくれればなーとは思いましたが、そうもいかないようで。

 とりあえずちょっとでもやる気が出ているうちに活動するのが鬱病中の活動のコツです。布団の中で明日はゲームやろうとか思っても実際次の日になってみると10分くらいしかできなかったとかざらですからね。やれる時にやれるだけの活動をします。

 という事でさっそく頭に装着したVRセットの配信モードをオンにしてゲームを起動しました。すると、吸い込まれるような独特の感覚を味わったかと思うと、私はゲームの中にいるような感覚を味わいます。これがVRMMO……。

 自分の腰のあたりにコメント欄が浮かんでいますが、今はまだ誰も書き込んでいません。当然でしょう。新米マイチューバーの初配信にいきなりコメントがあるはずもありません。そうそう、配信先はマイチューブです。大手の配信サイトを選びました。

 さて、キャラクターメイクですが大したことはやりません。名前を決めて、見た目はそのまま。配信者なので顔を売れるならそれに越したことはないからです。

 鶴井桜なので文字を入れ替えて名前をちょっといじってイサクラ・ルーツ。活動名もこれと同じくしています。

 そして、初期スキルを選択できるのですがこれは居合切りを選択。配信者なので敵を倒す見せ場が多い方がいいのです。よって切れ味鋭い一撃を繰り出せる手段を選びました。


「キャラクターメイク完了です。ようこそブルーファンタジアの世界へ」


 そう、ブルーファンタジア。それがこのゲームの名前です。ありがちな剣と魔法の西洋ファンタジーの世界。魔物を狩り、強くなり、素材を手に入れ、新しい装備を作りより強い武器を作り、より良い素材を手に入れ……と繰り返していくゲームです。そして五感全てを感じるように作られ、まるで現実のように身体を動かす事の出来る、ここ十年ほどで急激に発達したゲームの最新機種なのです。値段もハードだけで六桁しました。

 現実での身体能力も反映される部分がありますが、それを超えた行動を行う事が出来るのがスキルとなります。私の居合切りがあれば、リアルで刀を振った事が無くても居合切りだけは上手くできるようになるのです。鍛冶のスキルがあれば武器を作ったり鍛えたりする知識が無くても出来るようになるわけですね。

 逆に、スキルが無くてもリアルで習得している技術はそのまま使えるようです。先程の例で言えば、鍛冶の方法を知っていれば最初から鍛冶のスキルを持つかのように鍛冶を行えるわけです。その腕前次第で最初から鍛冶レベル2とか3とか貰えますね。

 つまり、最初のキャラメイクではリアルでは出来ない事でやりたい事のスキルレベルを貰うと良いわけです。

 それ以外でのスキルの習得方法、上昇方法は単純で反復練習。私も初期スキルの居合切りを繰り返していれば居合切りレベル1がレベル2に上がります。

 ……と、いうような事が説明書に書いてありました。私は説明書を読むタイプですから。そのゲームにハマるとwikiとかにも手を出すタイプです。

 さて、問題があるとすれば現在の装備です。防具はシャツとズボンというシンプルな初期装備。谷間とヘソが丸出しです。そして武器は木刀。

 いやいや、居合切りするのに鞘無いじゃないですか、木刀じゃ。これはすぐ装備を買い換えないと駄目そうです。初期装備でどこまでいけるか、とかやってる場合じゃあないですよ。


 という訳で初期スタートポイント、ファスの街の噴水前へ出現しました。一応コメント欄も確認しましたがコメントは無し。カメラの調子も確認しますがきちんと映っています。

 などと一人で配信の準備を整えていると、声をかけられました。


「あの、配信者の方ですよね?」


 その人は金髪の青年で、しかし顔の作りは日本人のものでした。キャラメイクをしっかりしたのでしょう。日本人プレイヤーのようです。


「……あの?」


 などと考えていたら返事が遅れてしまいました。さて、何と声をかけられたのでしょう?


「はい、なんでしょうか?」

「そこ、この街のスポーン地点なんで人通りも多いですし、もうちょっと落ち着いたところでカメラ準備した方がいいですよ」

「それはそれは。ありがとうございます」

「いえ、僕も配信者なので。最初そんな調子でしたから。結構邪魔者扱いされるんですよ」

「はあ……そうなのですねえ」


 じゃあ移動しましょう、そう思って歩き出すと、先程の男の方が付いてきます。


「あの、初心者の方なのでしたらサポートしますよ」

「んー、初プレイなので初心者といえば初心者ですね」

「思いっきり初心者じゃないですか……なんかおっとりしてますね。本当に大丈夫ですか?」


 会話が上手くできないのをおっとりと認識してくれるのですか……本当はただ鬱で脳が回ってないだけなのですが。しかし知らない人に実は鬱でーなんて話せる訳もなく。私はおっとりを享受せねばならないようです。

 しかしまあ、実は鬱は治っていて、長い事まともに人と話してないせいで脳のレベルが落ちてるだけって可能性もあるから怖いんですよね。そんな風に考えてしまうのも鬱あるある。共感されるかは不明です。症状、人によりますから。

 さて、何の話でしたっけ。


「えーっと、もう一回聞きますけど大丈夫ですか?」

「すみません、ぼんやりしていました」

「そうみたいですね……やっぱり不安ですから一緒に遊びませんか? 配信の事もサポートしますよ」


 有難い話です。私はそのお誘いを受ける事にしました。


「ありがとうございます。よろしくお願いします。じゃあ僕も配信つけていいですかね?」

「どうぞ」

「では遠慮なく。……さて、視聴者の方がくるまでに配信環境整えますか」


 彼の頭の上に赤い点、録画マークが付きます。これが録画や配信をしているという証拠になるのです。撮られたくない方はこのマークの人からは離れるべきという住み分けのためのマークになります。私にも付いていますね。

 さて、言われた通りにカメラの視点を調整し、自分の視界と共有するカメラと、私のリアクションが撮れるように私の上半身が視聴者さん視点で画面右下に映るようになりました。配信画面を確認するとそんな感じです。

 そうこうしているうちに、彼の方も視聴者がやってきたようで、一人で喋り始めました。


「はい、どうもー。ヒーロです。初心者さん見かけたのでゲリラ配信始めます。はい。今視界に入ってる方ですね。キャラメイク気合入ってる? うーん、確かに。可愛いですよね。僕もキャラメイクのこだわりに関しては人の事言えないですけど。というかブルファンのキャラメイクは多くの人が力入れてますからね。え? 彼女も配信者ならチャンネル知りたい。なるほどー、聞いてみます。すみませーん。うちの視聴者が貴女に興味持ったみたいで。URL貰えますか?」


 おや、早速よそ様の視聴者さんが私に興味を。ありがたいことです。私はゲーム内からインターネットにアクセスし、自分のマイチューブチャンネルのURLをコピーしました。


「これを個人チャット欄に送れば大丈夫でしょうか?」

「はい。それでいけます。それじゃあ皆さん。こちらの……すいません。お名前は?」


 そういえばお互い名乗っていませんでしたね。それなのにお世話になりっぱなしとは厚かましく映った事でしょう。


「すみません。イサクラ・ルーツです。皆さんよろしくお願いします」

「僕はヒーロです。ブルーファンタジア初心者プレイヤーのお手伝いを配信するプレイヤーとしてやってます……それじゃあ、サポーターの皆さんもよければイサクラさんのチャンネル登録お願いします」


 親切な人だなあと思います。こちらにファンの方を送り込んでくれるとは。とはいえその人達が私の配信を見続けてくれるかは私次第です。緊張しますね。


『のりこめー』

『視聴者いなくて草』

『初配信っぽいね』

『まあ初期装備だしなあ』

『初期装備だとおっぱいでかいのめっちゃわかるな』

『というか胸盛りすぎじゃね』


 私のチャンネルの方にもコメントが流れてくるようになりました。さて、何か言うべきなのでしょうがさて。


「よ、よろしくお願いします視聴者の方々」


『かたい』

『表情も硬い』

『無表情な感じも悪くはないが』

『初々しい』

『キャラメイクどれくらいかけたの? だいぶやったでしょ』


 話題にしやすそうな話が流れてきました。これに乗っかりましょう。


「キャラメイクはやってないです。リアルそのままスキャンで済ませました」


『は?』

『話盛ってるでしょ』

『嘘乙』


 おや、信じてもらえない。私が信じられないレベルの美少女って事ですかね。これはむしろ喜んでいいと思います。


「じゃあ配信終わった後、料理作ってそれ食べる動画あげます」


 料理って言っても本当に簡単なやつですけどね。蛇キャラの真似する料理系マイチューバーが出した本ほとんどそのまんまのやつ。


『顔出しOKなのか』

『期待してる』

『本当にブルファンのキャラそのまんまなら推すわ』


「さてイサクラさん。僕が武器と防具を一通り作れますので要望がありましたら言ってみてください」

「居合切りの出来る鞘付きの武器と、それに合う防具を作っていただけると嬉しいです」

「じゃあ普通に刀で……防具は着物でいいかな。了解です。ちょっと待っててくださいね」


 そう言うと彼は金床を取り出し、街中であるにも関わらず、平然と鉱石をハンマーで叩き始めました。するとゲーム補正でしょう。みるみるうちに形状が変わっていき、一振りの刀へと姿を変え、続けて何かの皮を取り出すと、太い針でその皮の周囲を縫い始める。これまたあっさりと着物の完成。デザインも秀逸で、桜の花のアクセントを添えた黒い着物へと形を変えた。


「では、これを装備して貰えますか?」


 差し出された装備品を受け取ると、私は装備画面を開き、武器と防具を装備しました。

 すると一瞬でみすぼらしい見た目から一転、きちんとした装備をした和風剣士の出来上がりです。


「ありがとうございます。なんとお礼をしていいか」

「いえいえ、お礼ならこれからしてもらいます。この装備を作るのに作った素材は鉄鉱石と小噛竜の皮。これらを今から僕と一緒に採りに行って貰います。難易度は低いので安心してください。」

「そのくらいなら喜んで」


 使った分の素材を渡せばいいというのであれば装備を先払いで作ってくれたようなものでしょう。


「必要素材を集め終わるまで配信させてもらうのがうちの配信内容となります。道中の戦闘は手伝いますから安心してください」


 そういうと彼は盾を取り出した。私が攻撃して彼がタンク役をやってくれるという。ちなみに彼はどんな初心者にも協力できるように、タンク役だけでなくサポートやアタッカーにもなれる万能選手らしい。

 炭鉱に向かう道中で小噛竜が三匹ほどの小さい群れで現れた。それはヒーロさんの狙い通りだった。


「ヘイトアクション!」


 彼が盾を構えてそう宣言すると、小噛竜は私を無視して彼に向っていく。隙だらけの竜を相手に作ってもらった刀を構え、三度居合を行い、首を狩った。

 その姿は美しかった……らしい。コメントでそういう風に褒められたのでした。

 賞賛の言葉は嬉しいものです。私は小噛竜の皮をヒーロさんに譲ると、鉄鉱石を手に入れる為にヒーロさんや視聴者の皆さんと一緒に炭鉱へ向かうのでした。

 ヒーロさんとの配信を終えた私はキャラメイクで自分の容姿をいじっていない事を証明するための料理動画作成に移りました。内容はこうです。

 キャベツを食べる分だけ切ります。キュウリを棘とかも気にせずただ切ります。塩昆布をさっと入れます。ごま油を大匙一杯入れてかき混ぜて完成。

 出来たものを食べる様子を映して動画終了。

 三分もかからない短い動画となりましたが、私がリアル美少女であるという証明は出来ました。ただ、服装が色気も何もない、男だった頃のスウェットだった事に関しては不評でした。

 まだ可愛い服とか着る勇気も予算も無い私を許して欲しいです……。

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