森林浴
今日は天気がいいというので幼なじみの女・理香子と森林浴に出かけることにした。
木々の間から差し込んでくる光、隙間から吹き込んでくる爽やかな風。
なんとも心地よく、気分を晴れやかな気持ちにしてくれる。
幼なじみの理香子ははっと思い出したようにボソッと呟いた。
「……来ないの」
低く小さな声だったので聞き取るのが精一杯だった。
「何が?」
僕は問い返す。
「生理が……来ないの」
理香子は困った顔をしていた。
そんな顔をされても僕だって困る。
僕には身に覚えがない。理香子を抱いたことなんて一度もなかったからだ。
しかしここで放っておくのも人情がないというものだろう。
僕は語りかける。
「父親は、誰かわかってるのかい?」
理香子は黙ってコクリと頷いた。
誰かは言おうとはしなかったのでそれ以上は聞かなかった。
「父親は、ちゃんと育ててくれそうかい?」
理香子は首を横に振る。
「あの人は……多分逃げる。というかもう逃げたようなものだから」
二人は無言になった。
気持ちいい森林浴はもう台無しである。
僕は最後に囁いた。
「僕が育ててあげてもいい」
理香子は安堵の表情を浮かべた。
森林から出たあと、僕たちは不動屋さんに二人の住む家を見に行ったのだった。