終節
これにて第一章は終了します
果たして恭司は沙耶とこの世界に残れるのか
それとも・・・・
リリーン・リリーン
周りで鈴虫がうるさいぐらいに泣き喚く満月の夜だった
そこには沙耶、恭司、章吾、千里の姿があった
「さて、はじめるぞ」
恭司の一言で周りに緊張が走る
恭司が隔離空間の中で手を空にかざす
そして言葉を紡ぎだす
「我が死の中に眠りし闇よ!今一度我が前に姿を見せん!」
恭司の言葉が終わると方陣の中心に一人の黒いローブをまとった女性が現れる
恭司がさらに言葉を紡ぐ
「我が声、我が願い、我が死、届こうものなら答えよ!」
するとローブの女性が答える
「我を呼びし者はお前か・・・」
その声は透き通ったものであった
「そうだ!我は、闇を受け継ぎし者、今此処に「ギール」の称号をもたらす者」
恭司が言うとローブの女も答える
「ならば我それを見守ろうぞ・・・」
ローブの女が言うと空中に浮かぶ
「沙耶、隔離を解いてくれ」
恭司の言葉に沙耶が驚く
「駄目です!今解いたら恭ちゃんが消えるかもしれないんですよ!」
「大丈夫だ、だから解いてくれ」
恭司が優しく言うので沙耶はしぶしぶながら空間隔離を解く
「エン・ラーダ」
恭司の周りの透明な壁が崩れ落ちる、その瞬間恭司の体中に黒い霧が待ってたかのように広がる
あっと言う間に恭司のあごの辺りまで霧が浸食する
恭司が倒れる
足の存在が保てなかったようで恭司の上半身だけが地面から生えたような形になる
「恭ちゃんっ!!」
沙耶が慌てて恭司のそばによる」
「・・・大丈夫だ、方陣の真ん中へ・・・」
沙耶は恭司を方陣の真ん中に運ぶ
「沙耶、今度はお前の番だ」
恭司が唐突に沙耶に継げる
沙耶は一度頷くと
「何をしたらいいんです」
真顔で恭司に問う
「上にいる闇の間者に誓うんだ」
そういわれて沙耶は自分の宝典を間者にささげる
闇の間者は問う
「お前は「何」として闇の「ギール」を誓うのだ?」
沙耶はそういわれてどう言う意味かが分からない
「最初にいったろ、「相棒」「友」「恋人」の話だ」
恭司が沙耶に説明する
沙耶は一度考えると答える
「私は・・・」
沙耶は迷っていた今恭司に必要なものは契約者、それを自分は超えてもいいものかと
「私は・・私は・・」
「お前の誓うものはなんだ?」
恭司は優しい声で沙耶に問う
それを聞いたとたん沙耶に言葉を紡ぐ勇気が出てくる
いつも笑顔で接してくれた男の子・・・
自分が泣いてたときそばにいてくれた男の子・・・
自分にとって太陽のような男性・・・
沙耶は決心した!
「私は・・・」
少しでも
「この方に・・・」
近づきたい
「この男性に・・・」
私が誓うのは
「「愛」を・・・」
そして私のすべての人生を
「誓いますっ!!」
沙耶はしっかりと前を見て答える
闇の間者はじっと沙耶を見つめる
沙耶も間者をじいっと見つめる
曇りのない眼で
曇りのない心で
曇りのない言葉で
間者は「ふっ」と笑うと
「よかろう、そなた達の願いを聞き入れよう」
間者が言うと沙耶の周りから黒い光が溢れだす
不思議な光・・・
懐かしいような光・・・
間者は言った
「では、誓いの証を」
沙耶は何のことだか分からない
すると恭司が
「沙耶、こっちを向いてくれ」
沙耶は黙って恭司のほうを向く
それですべてを悟った沙耶は目を瞑る
二人とも吸い寄せれられるように口を重ねる
「んっ・・・」
沙耶が少し声を上げる
その瞬間、二人を祝福するかのように黒い光が二人の周りを回る
恭司を覆っていた霧は消え、存在を保てなかった足も元にもどる
章吾と千里は二人を優しい瞳で見届ける
恭司と沙耶が顔を離す、その瞬間、二人とも顔が赤くなる
「此処にこの者に「ギール」の称号を与えん」
恭司が沙耶に向かって優しく言う
すると沙耶の体に先ほどささげた宝典が吸い込まれるように沙耶の体に収まる
すると今まで光っていた方陣と浮かんでいたローブの女性が消えていく
「沙耶・・・」
恭司が優しく沙耶の名を呼ぶ
「なんですか?」
沙耶も優しく答える
「何処・・いこうか・・・」
恭司の問いに沙耶も答える
「あなたの行きたい所なら、私は何処でもついていきますっ!」
「クククッ・・・」
「ふふふっ・・・」
恭司と沙耶は笑い出す
それを祝うように照らし出す大きな満月の夜だった
第2章へ・・・




