27.不思議な関係、意外なコネクト
その二人を見て、私はずっと不思議に思っていたことを訊ねてみた。
「あの……鞍馬さんとマリアさんって、どういうお知り合いなんですか?」
マリアさんは大企業の社長としては若いのだろう。だけど鞍馬さんと比べればだいぶ年上だと思う。美容系大企業の社長と若い画家。一体、どんな接点があるのだろうか。
一瞬、考え込んで首を傾げる。そういえば、この不思議な感覚は少し前にも感じたような気がした。そうだ……。
「黒野さん……」
私は自分の唇が知らず知らずその名前を呼んでいたことを感じて、首を竦めた。前後の繋がらない突拍子も無いことを言ってしまった気がしたのだ。
でもそうだ、黒野さんが鞍馬さんを昔からの友人だといって紹介してくれた時も、黒野さんの友人なら私よりは年上だと思っていたから、同じようなことを考えたっけ。
「あら、彬ちゃん。戒十さんとも知り合いなの? ああ、そういえば戒十さん、今は出版社に勤めているんだったわね。その関係かしら?」
「……えっ!?」
マリアさんの言葉に、私は驚いて彼を見上げた。
「……マリアさんも黒野さんのことを知っているんですか?」
「ええ、アタシと戒十さんは同い年だし、小さい時から幼なじみみたいにして育ったのよ」
「幼なじみ……ですか!」
田舎の村で唯一の子供として育った私にとって、友達……ましてや幼なじみという言葉の響きはとても羨ましく甘美なものだった。私にも幼なじみと言える人がいれば、もう少しあの故郷を好きでいられたのかもしれないのに。
「ええ、あとは鞍馬くんと――」
私がぼんやりとそんなことを考え込んでいると、マリアさんは追加して何事かを言いかけたようだった。だけど、マリアさんの言葉尻にかぶせるように鞍馬さんが急に言葉を発してマリアさんの邪魔をする。
「万次郎の親は俺の親と黒野の親、どちらとも交流があったからな。子供の頃はよく遊んで貰ったりしてたし、こいつと黒野は二人とも俺の兄貴みたいなものさ」
その鞍馬さんの言葉には、内容とは裏腹に少しの苛立ちの感情が内包されていた気がする。その苛立ちのトゲに場はしんと静まってしまった。私が不安を隠さずにマリアさんを見上げると、彼は肩を竦める。
マリアさんには鞍馬さんの不機嫌の理由が解るのだろうか。
「……それより、早く本題に入らせてくれないか?」
鞍馬さんはそう言ってティーテーブルに軽く手を突いて立ち上がった。
「そういえば、どうして鞍馬さんは私をここへ連れて来たんですか?」
確かにマリアさんは気さくで話し上手で、話していて楽しい。けれどだからといってその楽しさにこの視線を撃退する糸口があるようにも思えない。
私は不思議に思いながら鞍馬さんがテーブルを回って私の後ろへやってくるのを肩越しに見ていた。彼は私の後ろに立つと、私の座っている椅子の背もたれに両手を掛けて、でも視線はマリアさんに向ける。
そして、こう言ったのだ。
「こいつを、俺の絵のモデルに相応しい女にしてやってくれ」




