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招いてみた。

「………………ただいま。」

誰もいないはずの自分達の部屋に、一声かけてから足を踏み入れる。………………良かった、ほんとに誰もいない。

こんなことするのもおかしいけれど、前に一度鍵を開けて足を踏み入れたら、月夜――同室のやつだけど――が全裸で着替えてたことがあって、それから一週間は口聞いてもらえなかった、なんてことがあってだな………………てか、元から見せる程無いんだからそこまで騒がなくてもいいと思うんだけど。………………ぼくも好き好んで見せたくはないけどさ。

「まぁ、居ないんなら好都合か。」

これからここにゆみりを招くわけだし。………………っと、あとで慌てないようにメジャーとか用意しとかないと。あとは………………そうだな、おやつでも用意しておくか。確か買い置きが………………お、あった。

………………それにしても、ゆみり、遅いなぁ………………まさか逃げ出してないよね? 「モデルになって」って切り出した時は「あわわわわ………………」なんてやってたけど………………

と、そんなことを考えていると、部屋のドアが遠慮がちにノックされる。

「どぞ?」

「し、失礼しますぅ………………」

いそいそとゆみりが入ってくる。さっき会った時の制服のまんまだけど、髪だけは慌てて整えたのか整って………………あ、ぴょこんとハネてる。

「とりあえずそこに座って待ってて、準備するから。 あ、そこにおやつも用意してあるよ」

と、おやつを指し示すけれど、ゆみりはそれに手を伸ばそうとしない。

「………………どうしたの?」

おかしいな、ゆみりだったらすぐにぱくぱく行くと思ったんだけど………………

「あ、あの、すずちゃん………………やっぱり、モデルさんやらなきゃ、ダメ?」

「………………え? ゆみり………………ダメ、なの?」

「だ、だって………………恥ずかしいよぉ………………こ、こんなの、初めてだもん………………」

ゆみりがそわそわし始める。

「だよねぇ、普通はそんな経験、あんまりないもんね。………………でも、ゆみりにやって欲しいんだ。ダメ………………かな?」

「う、ううんっ、………………すずちゃんが言うなら………………」

「そっか………………なら、そこにぴしっと立ってくれるかな?」

話を聞き流しつつ、素案のメモと鉛筆を用意する。そして採寸しようとメジャーを手に取って振り返ると、

「なっ、なぁぁぁぁ!? ゆ、ゆみりっ、なんで!?」

ゆみりが、制服を脱いで下着姿になっていた。まだそれなら分かるんだけど、なんで下着まで脱ごうとすんの!?

「ゆ、ゆみりっ、服着て!?」

「………………え? だって、はだかんぼにならないと測れないんじゃ………………」

「上着だけ脱いでくれれば大丈夫だからっ!? 」

「そ、そうだったんだ………………」

ゆみりが見る見るうちに真っ赤になって、慌てて床にとっ散らかした制服を身につけていく。

………………はぁ、大丈夫かなぁ………………頭を抱えてため息をつく。

………………ゆみりのパンツは、うさぎさんだった。



「はい、それじゃ次は肩巻くよ」

メジャーをめいっぱい引きずり出して、ゆみりの身体に巻き付けていく。

「んっと、手の長さが〇cmでっと………………そうなると袖はこの辺にとるのか………………」

手元のメモにすらすらと書き付けていく。ゆみりが復活するまでに時間がかかったけど、今は大人しくメジャーを巻かれるままになっている。

「次は肩幅ね、それじゃあ後ろ回るから」

するりと後ろに回って、ゆみりの肩から肩にメジャーをあてる。…………ふむ、思ったよりかは広いな。

「あ、あの、すずちゃん………………」

「ん? なぁに?」

「その………………なんで私のことを、お洋服のモデルにしようと思ったの?」

「んー………………一つは、ゆみりが輝いて見えたから、かな? ………………自分の好きなことを我慢しないで、しかも楽しむなんてこと、ぼくには出来っこなかったから、ゆみりのことが羨ましくなっちゃって……………… あとは、単にぼくに知り合いが少なすぎて、締切が迫ってたから、かな。」

「………………す、すずちゃんって友達いないんだ………………そっか………………」

「………………ゆみり、改めて言われるとなんか傷つくんだけど………………」

「ご、ごめん………………」

肩幅を書き留めてから、メジャーをしゅるりとゆみりの胸に回す。

「す、すずちゃんっ、なんか、くすぐったい………………」

「ちょ、動いちゃダメだよ、測れないじゃないか」

ぐいっとメジャーを引っ張る度にゆみりがじたばたする。………………ああもうしょうがないなぁ。

「ゆみり、大人しくして」

背中を通して前に回って、ゆみりの胸の前で交差させる。それからぐっと押し当てようとすると、ゆみりがまた暴れる。

「す、すずちゃんっ、脇の下はくすぐったいってぇ………………」

「ど、どんだけ弱いんだよっ!?」

しかも動かないでよっ、さっきからむにむにとか、ぽよよんとか、不思議な感じがするんだからっ!?

結局、諦めてウェストを測りにかかった後もゆみりのくすぐったがりは直らず、諸々を測り終わったころには2人ともくったくたになっていた。

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