連れ込まれて。
(…………なんでまたこんな目に……)
浴槽の縁に腕をかけてため息をつく。
断りきれずに頷いちゃった後、あれよあれよと言う間に脱衣場に案内されてすぽーんと全身脱がされかぽーんとお風呂場に押し込められた。
(お風呂できてるからって言われたけど…………なにもここまで…………)
ちゃぽんと肩まで一旦浸かると、もう一回浴槽の縁で腕組み。たかがスカートの1枚なのに…………それでもクリーニングかけたら高いけどさ。
(なんだかゆみりに振り回されてるなぁ……ぼく)
ま、それを楽しんでるのはほかでもないぼく自身なんだけどさ。
(でもさすがにお泊まりだけは断ろう)
寮に帰らないと心配されるしね。
ザパッとお湯を巻き上げて立ち上がると、脱衣場への扉に手をかけて―――向こうから開く。
「へ? 」
「すずちゃん、入るね」
そこに居たのはゆみりで、
「……ひっ!? 」
一糸まとわずのはだかんぼ。
慌てて扉を閉めると、浴槽へと飛び込む。
み、見られたし、見ちゃった………………ゆみりの、ハダカ…………
「もう、どうしたのすずちゃん」
扉を開けて入ってくるゆみり。
「く、来るなっ!!」
咄嗟に出たのはその言葉。
「なんで? 一緒に入っても狭くないと思うよ? 」
「と、とにかく来るなっ、いや来ないで、来ないで、くださいっ」
慌ててるせいか言葉までおかしくなってくる。
「すずちゃん? 」
「ひいっ!? 」
耳元で囁かれて、むっとゆみりの香りが脳みそをくすぐって、ヘンになりそう…………
「なんで後ろ向いて体育座りしてるの? 」
「べ、別にいいじゃん…………」
「へんなの。…………別に女の子同士なんだから見られてもいいのに」
「よくないっ!! 」
…………あーもう、これ絶対寮帰ってからも引きずるやつじゃん…………なんだか茉莉花のやつの気持ちがわかった気がする…………
「あれ、すずちゃん頭洗わないの?」
「あっ、忘れてた」
でも頭を洗うとなると浴槽からでないと行けないし、そうするとゆみりの前に出てこなきゃいけないし…………
「ならわたしの使いなよっ、いい匂いなんだよ 」
「ゆみりの、シャンプー……」
ずっと思ってたけど、ゆみりの髪っていい匂いするんだよな。どんなの使ってんだろなぁって気になったけど…………ゆみりの、シャンプー。ゆみりと、同じ匂い…………でも……
ちょっと葛藤した後、恥ずかしさを興味が上回った。
「ゆみり…………向こう向いてて? 」
「なんで? 」
「いいから」
「へんなの」
くるりと向こうむいたゆみりを見て、ぼくも立ち上がってシャワーの前に立つ。んと、これかな? ふうん、ツバキ油配合……
「すずちゃん」
「のわっ!? 」
いきなり振り向くなって!?
「うん、それそれ! すずちゃんも使ってみて! 」
背中に乗っかるようにして覗き込んでくるゆみり。ゆみりのクッションがむにっと押し付けられて、…………っ!? や、柔らかすぎない……?なにも纏ってないからっ!?
「ゆ、ゆみり、重い…………」
「もうっ、そんなに重くないよっ! 」
怒って離れるゆみり。…………なんでこう、ゆみりには羞恥心とかないんだろうなぁ…………トホホ。なんだか1人で恥ずかしがってんのがアホらしくなってきたよ…………
「ゆみり」
くるんと向き直って、恐る恐る腕を解く。視線の向こうでは、ゆみりがいつもと変わんない顔で見つめてて、
「…………あんましジロジロ見ないでよ、えっち。 …………ゆみりみたいにお肉ついてないし、こんな貧相な身体の見ても面白くないでしょ」
一応、外見だけは本物の『女』なのに、中身の方はまだゆらゆらしてて、本当はどっちなんだろうって迷ってる。そんなぼくのことを受け入れてくれたゆみりになら、全部見せたっていいかも、なんて。
「す、すずちゃん、こうやって見るとけっこうほっそいんだねぇ。ちゃんとご飯食べなきゃダメだよ? 」
なーんて言うけど、ゆみりのほっぺた、ちょっと赤くなってて、さっきまであけっぴろげだった胸もこっそり隠してる。
「…………あ、先にゆみりが身体洗ってよ。その間ぼく待ってるからさ」
それなりに広いお風呂場も、ぼくとゆみりが同時に身体を洗えるほどには広くないし。
「う、うん、わかった」
ゆみりは恐る恐る、ボディーソープに手を伸ばした。




