探したら。
「ごっはんー、ごっはん〜♪」
ゆみりが調子っぱずれなスキップでショッピングモールの中をあるい………じゃなかった、跳ねていく。
「もう、ゆみりったら、はしゃぎすぎ」
たかがご飯なのに、なんでそこまではしゃげるんだろう? まぁ、それがゆみりのかわいいとこなんだけど。
「だってごはんだよ? おいしいごはんだよ? …………すずちゃんは、おいしいもの嫌いなの?」
「あー、まぁね………………ぼくは結構、偏食だからなぁ………………」
「だめだよー私みたいになんでも食べないとっ」
えっへんと胸をはるゆみりの頭を、すごいすごーいとなでなでしつつ、フードコートを目で探す。………………うーん、この辺じゃないのかなぁ?
「すずちゃん、ご飯の場所見つかりそう?」
「あー、もうちょっとかかるかも………………にしても、このショッピングモール入り組んでるな………………」
てかここどこだよ。案内板も見当たらないし………………もっと案内表示増やせよもう………………
「ごめんゆみり、ご飯はもうちょっとお預けかも」
「ええー………………」
そんなぁ、という目で訴えかけてくる。…………ごめんよゆみり、ぼくはどうも方向音痴の気があるんだ………………
「できるだけ早くご飯の場所見つけるからさ、それまでもうちょっと我慢して。ね? 」
「うぅー………………」
ゆみりが唸る。………………ダメだ、早くなんとかしないと、ゆみりが暴れはじめる………………えっと、こっち、かな?
「………………すずちゃん」
「分かってるよ、今探して」
「あのね、すずちゃん………………ご飯の方、後回しでもいいよ? 先に、すずちゃんの用事を済ましちゃお、ね?」
「ゆ、ゆみり? 」
「えっと、お洋服のコーナーは、………うん、こっちみたい。さ、行こ? 」
ゆみりが再びぼくの手を握って歩きだそうとする。けれども、さっきの「ごっはん〜」 と鼻歌を歌っていた時よりもその足取りは重そうで、
「あー、ゆみり? ………………その、気を使ってくれてるのは嬉しいんだけど………………無理しなくてもいいんだよ? お腹、空いてるんでしょ? 」
「だ、大丈夫だよっ、まだまだ余裕あるから」
そう言い終わらないうちに、ゆみりのお腹が返事をする。
「ち、違うのっ、これはっ」
「はいはい、分かってますよっ」
軽く頭を撫でたあと、携帯の地図アプリを使って館内のテナントを検索する。………………ふむ、こっちか。
「ゆみり、多分こっちっぽい」
今度はぼくの方からリードして、モールの中を歩いていく。………………これで違ったらどうしよう、なんて不安もあるけれど、その時はその時。そしたら下のスーパーでおやつでも買ってあげれば、ゆみりは少しの間満足してくれる………………だろう。
「んん? 」
ゆみりが鼻をひくつかせる。
「こっちからカレーのいい匂いがするよっ」
「え、そーお?」
つられてぼくも鼻をひくひく。………………そうかなぁ? 何も感じないけど。ま、ゆみりがそう言うんだったら行ってみようか。
………………すごい、ほんとにフードコートあった………………
「わぁっ、たくさんあるねぇ」
ゆみりがぐるぐると周りを見渡す。………………ふぅん、どこも値が張りそうだな。
「ねぇ、すずちゃんは何食べたい? 」
「そうだなぁ………………基本ぼくはこういうとこ来ないからなぁ………………」
「そっか………………あ、ならさ、すずちゃんの嫌いなものってある? 」
「沢山あるよ。牛乳、肉、ししゃも、チーズ、豆腐に納豆、あとは………………」
「もうっ、すずちゃんのワガママ。なら普段何食べてるの……………? 」
ゆみりが呆れ顔になる。………………しょうがないじゃん、だいたいの物は食べたらおっきくなっちゃうし………………
「しょうがないなぁ………………ならさ、ファミレスにしよっか」
「え、ファミレス? 」
「うん。他のとこだと、すずちゃんの嫌いなものばっかりでしょ? だったらファミレスにしようよ。そしたら好きな物だけ選べるから、いいでしょ?」
「そ、そっか………………ありがと、ゆみり」
「どういたしまして。 あ、でもちゃんとごはんは食べなきゃダメだよ?」
「うっ、わ、わかったよ………………」
………………ほんとにドリンクだけにしようとしたの、なんでバレたんだろ?