プロローグ
―毎日毎日液晶画面を睨んでは、怒声と感嘆を吐いたあの荒みきった中学時代。
友達は画面の向から優しい笑顔と可愛い声で話しかけてくれていた。最新のアニメやコミックス、ラノベのチェックは勿論にお気に入りサークルの新刊チェックが毎日の生きがいのようなものだった。
クラスでは、教室の一番窓側の一番後ろを一年間陣取って浮いているのが当たり前だった。多分だが、クラスメイトは私が話すことを衝撃に思っているらしい。以前クラスの男子が落とした消しゴムを拾って渡したときは、
「お、おい皆 !悪澤が生きてるぞ !?」
―私は死人扱いだったのか?
こればかりはグサリときた。なんだって死人扱いされなくてはならないのか。
まぁ、そんな事は高が知れているのだが。
気づいたら桜の木の下、黒くて細長い円柱型の筒を手に涙を流しながらまた会おうね!や離れてても友達だよ?なんて言葉が飛び交い、カメラのシャッター音が涙声と混ざりあって耳鳴りのよう。
私は、後ろを振り返り紅白花に飾られた『市立高松中学校 第72期生卒業式』の立て看板をぼんやりと眺める。
頬を伝う熱いものを噛み締めるように下唇を噛んだ。
(…このままじゃダメだ !!)
「お、おい皆 !悪澤が泣いてるぞ !?」
♢♢♢
同中の人が誰もいない偏差値70越えの難関高校、公立宮之浦高等学校に合格し同中生との遭遇を最大限に回避した。なにせこの宮之浦高校、通称宮校の周辺には高校が一切無く、あったとしても三駅先にちらほらとある程度。また、難関高校なだけに宮校を志願したのは私だけだった。私が合格したときの皆の顔は今も忘れない。
毎日ゲーム、アニメばかりしていたが、それなりの偏差値はキープしていた。
学力的には申し分無い優等生。
受験休みに入るや否やボサボサの貞子ヘアを入念に手入れし、なんとか毛先の整ったサラツヤストレートヘアを手に入れた。ピンクのリボンをつけ、左右高めに結ったツインテール。似合わないメイク雑誌を読み漁り最高に可愛いメイクを見出す。
全ては最高に可愛いと思わせる形にする。
多分だが、私は今世間一般で言う偏差値の無駄使いをしている気がする。
後は、か弱い少女の演技をすれば『ゆるふわJK・New悪澤』の完成。
「…ふっ、完璧ね。」