赤
「ねぇねぇ!このビー玉、とっても綺麗でしょう?私のお気に入りなの」
はしゃいでいるのは、最近ここに居座るようになった女。
僕はこいつの名前さえ知らない。まあ知りたいとも思わないが
「おいっ!聞いてるかい?少年!いや?青年かな?」
僕に指を向けながら言ってくる。
「興味ないね。さっきから言ってるだろう、僕は『色』が分からないんだ」
そういって僕は窓を見る。そうすると彼女はふっと笑って言い放った。
「嘘をつけ、『色』が分からなくて知りたくないなら。窓なんて……空なんて見ないだろうが」
僕はただ驚愕して彼女に目を向ける。彼女はにやけついた顔で「嘘つきだね、青年は」と僕に言ってくる。
あ~あ…こいつ、イラつく。ふざけるな。気持ち悪い、くそっ!!
目が痛い…
「ぷっにゃははっははっははははっはは~!やっぱり青年をいじるのは最高だよ。飽きないよほんと…」
目に涙を溜めながら笑う。僕は声をあげる
「何がおかしんだよっ~…痛ぇ…」
彼女は笑うのやめ荷物をまとめはじめた。
「さて~いじりすぎたかな?目が痛いんでしょ?なら休みなよ、私はあいつの様子見てから帰るよ」
あいつ…僕と前まで同室だった男だ。
今は集中治療室にいるらしい
彼女は席から立ち上がり僕にビー玉を渡して言った。
「今の空の『色』はこのビー玉と同じで、とっても綺麗な『赤』だよ」
そう言い残すと彼女は手をこちらにふり部屋を出て行った。
彼女は僕に余計なものを教える。
『色』というものを存在を…
「赤って何色なんですか?」
僕は先生に聞いた。初めてだった『色』について僕から聞いたのは
先生は驚いた表情をしてからいつもの顔に戻った。
「難しいことを聞くね、でも君から『色』について触れてくるのははじめてだね…彼女に毒されたのかな?」
こいつもかよ…
僕が露骨に嫌そうな顔したら先生は笑いはじめた
「いやあ~君がね~以外だよ、あんなに無愛想な君がね」
「 にやにやするなよ!そんなに僕を馬鹿にしたいのか!」
僕は立ち上がり声を荒げる。先生は僕なだめる。
「まあまあ~で赤って言うのは情熱とか愛、愛情、活気なんかを想像させるんだよ」
いつもの触診を終えて病室に戻ると彼女がいた。
「やあ、元気かい?」
「なんだよ、あいつのところには行かないのかよ」
と僕はそう言ってベットに座る。彼女は僕のほっぺを触る。
「拗ねんなよ~青年」
「拗ねてないし、興味ない」
僕は素っ気ない態度をとる。なのに彼女はいつもの笑顔で言う。
「ねえ青年『赤色』って分かった?」
あぁ、これだからこいつは
「うん、分かったよ。」