無色
無色
彼女は無責任だった。僕のことを馬鹿にしといて彼女は消えた、名前も知らない彼女。
なぜあんな僕とは真逆の存在の彼女と僕は知り合ったのだろうか…その話をするには少しだけ過去の話をしようかな…
僕は色を知らない。
僕は生まれた時から”色”というものが認識できないのだ。その名は『色覚』人間は色というものを知るためには赤、緑、青の三色でその色を認識しなければならないのだ。
だが僕の場合それができない。理由は人間は網膜の錐体細胞で色を認識するのだが、僕の場合その網膜の錐体細胞を持たないのだ。発症率は数万人に一人という少ない色覚者なのだ。
僕の目には俗にいう”黒”と”白”でできているらしい。僕にはよく分かんないけど…
そんなことを思いながら僕は窓を見た。わかるわけもないが…
「極彩さ~ん、触診の時間ですよ~」
いつもの看護婦さんが僕を呼ぶ。僕はそれに会釈をして準備をする。もう何度目だろうこの作業にも慣れてきた。
「う~ん、いつも通りだね~特に痛んだりとかは?」
僕は首を横にふる。ただ僕には最近になって気になることがあった。
「あの…同じ病室だった、あの人は?」
と僕が聞くと険しい顔をして先生は言った。
「彼は…今、集中治療室にいるよ…」
僕はただ無言で話を聞いた。しばらくして先生は出てった。やはり僕の病気を治す方法はないらしい、まあ期待など淡い希望はもう捨てた。
「しっつれ~いま~すっ!って、あれ?あいつは?」
でかい声で甲高い声で病室に入って来た、非常識なやつは誰だと僕は少しだけ身を乗り出した。すると、目があった…まずい…これは…
「あ!ねぇ!君、すっごく綺麗ね」
僕に近寄り笑顔で言ってきた。僕は素っ気なく「なにが?」と応える。すると彼女はまた笑顔でこう言った。
「あなたの目とっても綺麗な色してる!」
ただ純粋に僕の目を見てくるあの女の目が僕にはただうざったくて吐き気を覚えた。
知りたくもない『色』というものを僕に知らせようと押し付けようとしてるみたいで…
やっぱり僕は嫌いだ『色』というものも
彼女の存在も