浮き輪少年
浮き輪のなかにすっぽりはまった
少年は日差しのなかでも家のなかでも
悠々とおよぐ
内も外もない
どこまでも開かれた空間を
浮き輪のなかにすっぽりはまった少年は
悠々とおよぐ
自由とはなんぞや?と頭抱える私の横で
水中メガネをつけて、海パンはいた少年が
悠々とおよぐ
「浮き輪じゃ泳ぎずらいだろう」
「おぼれないから、いいんだよ」
少年は両腕を合わせてまっすぐに伸ばすと
息を深く吸い込んだ
シュノーケルを渡してやると
浮き輪の中にすっぽり入り
ぶくぶくと潜っていった
自由とはなんぞや
私は浮き輪少年を指差した
ぶくぶくぶくぶく
「おっ、マグロ発見」
私は捕獲された