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116 大掃除

「同級生か、良かったな!それじゃあ、男三人で何かしないとなぁ。」


調理台の上に置かれた、コーヒーを飲み終わって空になった紙コップ四つを重ねながら店長が言った。


「何かって何ですか?」

優くんが聞くと

「それを考えるんだよ!仲良く、三人で出来る事をさ。」

店長が答えた。


「具体的には何を?」


俺が聞くと、立ち上がった店長は、仕入れやシフトについて書いておく、壁面のホワイトボードの前へ行き、マーカーを取った。


店長は三人の名前をスラスラ、ご丁寧に年齢、誕生月まで書いた。



竹内優里愛(たけのうちゆりあ)25才、7月生

永合遼大(ながいりょうた)25才、12月生

馬場大樹(ばばたいじゅ)24才、2月生



「漢字、合ってる?あ、リョウタの遼、違うかも。」

「合ってます。」


店長、漢字知ってるんだ。履歴書を書いてない優くんのまで、凄いなあ。


「呼び名は、今から、ユウ、リョウタ、タイジュでいいな?”さん”とか”くん”付け禁止な?」

「え?そんな・・・・・・」俺は”優くん”って呼んでるのに────


「ユウ、構わないよな?同い年なんだし、呼び捨てで。」

「それは勿論ですけど、大樹さんの事も?」


「タイジュ、異論ないな?」


店長、大樹さんに厳しくないですか?


「俺は別に・・・・・・」


あ、これは、三人で何かする事に抵抗ある感じだ。


俺も正直そうだよ。だって、大樹さんの事、優くんの事より知らない。碌に話した事もない。


突然言われても、どうしていいか分からない。まるで学生の時に、遠足で知らない者同士、よく知るために班を組めと言われたかのように。


「何がいいかなあ。旅行とか?登山、キャンプ・・・・・・冬はキツイか。じゃあ、何がいいかなあ?ほら、考えて!」


どうして急に?と、俺達は店長の提案に戸惑いつつも、考え始めた。


だけど、お互い何が好きかとか趣味とか全く分からない中で、これは?と提案出来るものは思い浮かばなかった。


そこへ、お師匠様が厨房に顔を出した。


「こんにちは。皆さんお揃いね。これから、私に付き合って下さらないかしら?」


俺達は誰も、お師匠様の誘いを断る事はしない。


お師匠様には未来が見えるらしい。


だから、俺達三人が、黙ってお師匠様について行く事が分かって居たのだろう。


「良かったな!早速三人でお出かけ出来て!後片付けは引き受けた!お師匠をお守りしなさい、三騎士達よ!ほら、お師匠の荷物持って。」


お師匠様の持つ風呂敷包みを、俺が受け取った。ずしりと重い。何が入って居るのだろう?


ははは・・・・・・心の中で苦笑いをして、俺と優くん、いや、優は、こっそり顔を見合わせた。




お師匠様は、ビルの前に呼んでおいたと、タクシーの助手席に乗り込んだ。


俺達も続いて後部座席に乗り込み、辿り着いた先は、タクシーで十分かからない一軒の家の前で止まった。


「え?俺んち?」


【馬場】と書かれた表札のある住宅街の一軒家。築何年だろう?新しくはない。


「着きましたよ。みんな、降りて。」


お師匠様に言われるままタクシーを降りて、困惑するタイジュの前で、「さあ、皆さん、協力して!これから大掃除をします!」お師匠様が張り切って言った。


「え、それは、結構です・・・・・・」


小さな声でタイジュが言ったけれど、それを無視して、お師匠様は「さ、大樹さん、鍵を開けてください。」にこやかに言った。


断れない、俺だったら。


タイジュは渋々鍵を開けて、お師匠様を家の中に入れた。


俺達も入らない訳に行かなそうだったので、「お邪魔します」と中に入った。


「さあ、あなた達、手伝って頂戴!これからみんなで大掃除を始めますよ!」


ええっ?!と俺達は多分心の中で叫び、お互い無言で顔を見合わせた。






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