挨拶1
今回の話→シイ目線
ピヨの空間を出て、一旦自分の空間へと戻る。
自分の空間を含め、空間は五つある。
ピヨには挨拶をしに行ったから残り三つ。
さてどこから挨拶しに行こうか。
とりあえずピヨの隣にある空間に入ってみる。
(うわぁ…。)
とても暗い空間だ、とボクは思った。
常に夜の様な空間。ピヨと同じく人間界とは全く違う景色。地面が無く恐る恐る足を踏み入れるとふわりと足下を支えるかの様に黒い球体が出てきた。
「ピヨじゃない…?お前はダレだ?」
不意に声をかけられ辺りを見渡す。
しかし誰もいない。
(あれ?どこにいるんだろう。)
再び視線を前に向けると、そこにはさっきまで居なかった筈の人がいた。
(いつのまに!?)
黒髪に狂気じみた赤い目。全身から放たれる黒いオーラ。彼は負の感情だろうか?
彼は空中にふわふわと浮きながらながらボクを見下ろしている。
(あ、浮いてるのっていいな。かっこいい。)
「…見覚えが無い。ダレ…?」
彼は怪訝そうな顔をしてボクを見た。
ボクは慌てて自己紹介をする。
「ボクは『感情』のシイ。挨拶がてら手料理持ってきたんで良かったら食べてね!」
引っ越し感覚で自己紹介をすると彼は何故か驚いた表情を見せた。
「新しく来た…?何でニンゲンがここにいんの?」
「うーん…ボクもよく分からない。でもボクは『元人間』であって今は人間じゃないってピヨに言われたよ。」
「ふーん…?」
彼はよく分からないとでも言いたげな表情をした。
えぇ、よく分からないのはボクも同じですよ。
彼はふよふよとボクの元へ歩み寄り、持ってきた手土産を受け取る。
「オレはスコマニアデビル。宜しく。」
それだけ言って手土産を持って消えてしまった。
(お礼も言わないで失礼な奴。)
まぁ、空間の参考にはなったからいっか。
なんか怖そうな人だったなぁ。